ホワイト・クロウ 伝説のダンサー

劇場公開日:

ホワイト・クロウ 伝説のダンサー

解説

「ハリー・ポッター」シリーズや「シンドラーのリスト」「グランド・ブタペスト・ホテル」で知られる名優レイフ・ファインズの監督作で、ソ連から亡命し、世界3大バレエ団で活躍した伝説的なダンサー、ルドルフ・ヌレエフの半生を描いた。1961年、若きダンサーのルドルフ・ヌレエフは、海外公演のため生まれて初めて祖国ソ連を出る。フランスにやってきたヌレエフは、パリでの生活や文化・芸術に魅せられていくが、その行動はKGBに監視されていた。やがてフランス人女性クララ・サンとも親しくなったヌレエフだったが、それによってますます疑惑を深めるソ連政府から信じがたい要求を突きつけられる。やがて他の団員たちはロンドンへと旅立つが、ひとりパリに残ったヌレエフは、ある決断を下す。主演はオーディションで抜てきされた現役ダンサーのオレグ・イベンコ。共演に「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルホプロスと、バレエ界の異端児と呼ばれるダンサーのセルゲイ・ポルーニン。脚本は「めぐりあう時間たち」「愛を読むひと」のデビッド・ヘア。2018年・第31回東京国際映画祭で最優秀芸術貢献賞受賞。

2018年製作/127分/G/イギリス・ロシア・フランス合作
原題または英題:The White Crow
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2019年5月10日

スタッフ・キャスト

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(C)2019 BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND MAGNOLIA MAE FILMS

映画レビュー

3.5国家によって個人の自由は束縛されるべきではない

2019年5月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

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清藤秀人

3.5自らの信じた道を貫くダンサーの姿に、監督レイフ・ファインズの信念が重なる

2019年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

俳優としておなじみのレイフ・ファインズが、その一方で監督業へ進出して久しい。これまでシェイクスピア物の現代版や文豪ディケンズの知られざる逸話などを映画化した彼が新たに挑むのは、60年代にソ連から亡命した若きバレエダンサーの物語だ。『愛を読むひと』やTV映画、舞台作などでも組んだことのある脚本家デヴィッド・ヘアに脚色を託した末、そこには「表現することへの欲求」や「個人の自由」を追求した主人公の飛翔ともいうべき瞬間が刻まれることとなった。
有名俳優を使わず、バレエの本質をごまかすことなく、さらにセリフには英語とロシア語、フランス語が混ざり合う。通常の商業映画ならば誰もが避けたがるこれらの道をあえて辿り、この物語や世界観を真摯に描きつくそうとする姿勢にファインズの心意気が伝わって来る。自らの信じた価値を貫こうとする主人公の姿には、少なからずファインズ自身の生き様が投影されているのかもしれない。

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牛津厚信

5.0国家のために特攻隊の肉弾にされる芸術家たち

2024年10月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

冒頭、
パリに到着したヌレエフ。
見つめる先は
ルーブル美術館のジェリコーの大油彩画
「メデューズ号の筏」だ。
これから始まる「命を賭したヌレエフの行く手」を暗示する絵だ。

台詞の少ないこの作品を、破綻させずに「バレエ映画」として、実話ベースのドラマとして、ここまで格調高く仕上げた脚本家、演出家たち。そして有能なアドバイザーも大勢いたはずだ。もちろん出演する有名無名のダンサーたちの輝きは言わずもがな。
統括する映画監督はレイフ・ファインズ。
プロフィールを調べれば納得だ。彼らの実力は大したものではないか。

ルドルフ・ヌレエフの半生。
はみ出し者=ホワイトクローな彼、ヌレエフの、「誰とも上手くやっていけない非常にまずい性格」が、
―彼の幼少期にも、
―ロシアでのバレエ生活でも、
―彼を支えようとしてくれる人々への対応でも、そして
―彼を監視し、政治思想犯として連れ戻そうとする官憲に対しても、
ヌレエフは「困ったことに」丁寧な対応が出来ない。

けれど、
いくらかの問題があるから孤高の存在になれるのであり、
たしかに問題があるからアーティストはアーティストたる所以なのだろう。
ゆえに、
国境も、決まり事も、恋人の想いも踏みにじって、ただ彼は自分のためだけに舞う男だったのだ。
・ヌレエフの伝記として、また、
・そんなに彼に惚れ込み、攪乱させられた多国籍の人たちの物語として、とても興味深く観させてもらった。

・・・・・・・・・・・・・

僕は、
「EUがノーベル平和賞を受賞した時」に、
この世界がついに、満身創痍の泥沼から、
政治と文化と民族と歴史を超越して、とうとう我々人類が難波した船から「救難の筏」で脱出し始めたのだ!と思い、感動で胸が一杯になったものだ。

本作も、フルシチョフ時代のソ連が、一旦崩壊し、その後の、つかの間の冷戦の緩和を受けて、ロシア・フランス・イギリスの三国が協力して作り上げた作品。
サウンドトラックの管弦楽も、ロンドンとベオグラードが分担している。
自国の過去を省み、かつての自国のイデオロギーを否定し得る、「協調」。これが新しいロシアのキーワードだ。

それにしても
体制の波にもまれながら、じつにたくさんの芸術家たちがヨーロッパへ、そしてアメリカへと渡ったものだ。
追手の追跡を振り切って逃げたアーティストたちは、歴史に名を残すだろう。しかし亡命に成功した彼らは氷山のほんの一角なのだ。
その美談と名声の陰に埋もれて、ついに逃げ切れなかった者たち、そして
やはり亡命を選ばなかった者たち ( 選べなかった者たち) が、どれほどまでに多く、壁の向こう側にいたかと思うと、胸が痛まないではおれない。

・ ・

チリ人の裕福なパトロン =クララ (アデル・エグザルホプロス)や、先生の妻もとても良い味を出していて、ドラマを熱く息づかせている。
そして劇中でヌレエフを支え続けたパリ在住のダンサー役はウクライナ出身のセルゲイ・ポルーニンだった。

その後のロシアは、あろうことか、ウクライナ戦争を引き起こし、ペレストロイカの喜びはいずこ・・。ロシアは過去の恐怖政治に逆戻りだ。
プーチン支持を表明した僕の大好きな指揮者ワレリー・ゲルギエフが、西側からボイコットされて演奏旅行に出られなくなってしまった事も、本当に悲しい結末。

ヌレエフがふるさとに残してきたお母さんの面影が、幾度も白黒映像で去来します。
ここ信州には、徴兵によって家族と引き裂かれた画学生たちの「無言館」もあるのです。
アーティストも、アスリートも、そして誰ひとりも、国の威信のための肉弾になってはいけない。

抵抗しなければいけない。
逃げなければいけない。

·

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共感した! 5件)
きりん

3.5天才の孤独

2023年7月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

持て囃されるのに、どこかクールで辛そう。
ダンスに物語を吹き込む事のできる人は、技術に専念注意のダンサーとは思いもパッションもレベチなのですね。
満たされているはずなのに、僻むのは切ないけれど、だからこそ、ダンスに打ち込める。
素晴らしいバレエでした。
お見事です。

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共感した! 2件)
jiemom

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