この世界の(さらにいくつもの)片隅に

劇場公開日:

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

解説

片渕須直監督がこうの史代の同名漫画をアニメーション映画化して異例のロングランヒットを記録し、国内外で高い評価を得た「この世界の片隅に」に、新たなシーンを追加した長尺版。日本が戦争のただ中にあった昭和19年、広島県・呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれ、新たな生活を始める。戦況の悪化に伴い生活も困窮していくが、すずは工夫を重ねて日々の暮らしを紡いでいく。そんなある日、迷い込んだ遊郭でリンという女性と出会ったすずは、境遇は異なるものの、呉ではじめて出会った同世代の女性であるリンと心を通わせていくが……。片渕監督のもと、主人公すず役ののん、今作でシーンの追加されたリン役の岩井七世らキャスト陣は変わらず続投。

2019年製作/168分/G/日本
配給:東京テアトル
劇場公開日:2019年12月20日

スタッフ・キャスト

監督
原作
こうの史代
脚本
片渕須直
プロデューサー
真木太郎
企画
丸山正雄
製作代表
宮崎伸夫
大木努
渡邊耕一
菊地健志
山本和男
太田和宏
二宮清隆
河野聡
戸塚源久
桝山寛
大塚学
神部宗之
監督補
浦谷千恵
画面構成
浦谷千恵
キャラクターデザイン
松原秀典
作画監督
松原秀典
美術監督
林孝輔
特殊作画
野村健太
演出補
野村健太
劇中画
四宮義俊
浦谷千恵
こうの史代
林孝輔
色彩設計
坂本いづみ
撮影監督
熊澤祐哉
野村健太
撮影監修
淡輪雄介
編集
木村佳史子
音響監督
片渕須直
音響効果
柴崎憲治
音楽
コトリンゴ
音楽プロデューサー
佐々木史朗
飯田幸子
アソシエイトプロデューサー
飯田雅裕
井原敦哉
アシスタントプロデューサー
近藤千昭
田近昌也
制作プロデューサー
大塚学
松尾亮一郎
アニメーション制作
MAPPA
広島弁監修
栩野幸知
新谷真弓
飯塚弁監修
北村直美
お経読経
上園陽
お経録音
青原さとし
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(C)2019 こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

映画レビュー

4.0幸せはすぐそばに

2020年1月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

幸せ

1年を幸せに過ごせたらと、前作の作品を2017年元旦に観てすごくよいスタートが切れたので、今回も元旦に行きました。

なんですかね。冒頭から涙が(早い)。

なにに対しても、かけがえのない物であるという価値観をおしえてくれる。それは、
私たちが享受している日々が「当たり前」に存在しているわけではなくて、たくさんの人や色々な出来事の失敗や工夫の積み重ねの上に構築されたもので、どれだけ幸せなのかをやさしくおしえてくれます。

まんがは未読なので、前作の映画ではリンさんの存在がよくわからなかったのですが、本作でのリンさんの掘り下げで、あの時代の厳しさがよりわかりやすかったです。
厳しい中でも人々は明るく、みんなが一生懸命に生きていて勇気づけられるのですが、リンさんの言葉がさらに、背中を押してくれます。

「最高に贅沢じゃない?」
ドキッとして、ふわっと温かい気持ちになりました。
物は考え方次第だとは思いますが、まさに痛感しました。

元気が出ない時とか観たら、尻を引っ叩かれたような一喝されて、よい涙が流せそうです(^^)

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共感した! 4件)
くまの

4.0勇気を出して言うと、個人的には最初のバージョンの方が好きです。

2020年1月30日
Androidアプリから投稿

原作にあって劇場アニメでは割愛されていたリンさんのエピソードを復活させ、ほかにもシーンを足したり再構成したりすることによって、確かに印象の違う別の作品ができあがったと言える。前の劇場版は何度も観ているし、原作も複数回読んでいるので、内容的には既知のものばかりなはずなのだが、ここまで受け取る側の気持ちが変わるのかと驚いた。

なにが違うって、同じシーンはたくさんあるのに、どれもが同じようには感じられなくなったのだ。今回の映画の方が、より複雑な心理や裏事情が渦巻いていて、深みを増したということはできる。ただ、そのせいもあって(自分の受け取り方としては)、悲喜こもごもの喜の部分を素直に笑えなくなってしまったのである。こっちのバージョンは、笑いと悲しみが裏表にあるのではなく、裏も表も渾然と混ざり合っているのである。

こっちが「完全版」というわけではない、と監督が発言しているので、こちらの作品も評価しているし意義深いと感じていますと断った上で言うのだが、一本の映画としては前作の方が好きだった。なぜなら、すべてがグレーに見える本作の辛さや世知辛さより、コントラストがくっきりしていた前作の方がより新鮮に感じられたからだったのだと思う。

あと今回のバージョンでは、周作も哲もずいぶん株を落とした印象がある。それはより「女たちの物語」であることを志向したのが理由である気がしている。そして男たちの意地や面子はなんともくだらない。これもどっちがいいとか上とか下とかの話ではなく。

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共感した! 29件)
村山章

5.0より複雑に、より大人に、よりリアルに寄せてきた長尺版

2019年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

楽しい

幸せ

原作に登場する白木リンのエピソードが通常版で割愛されたのは、まだヒットどころか製作が実現するかどうかもわからない脚本作りの段階で、遊郭の女性という子供向きではない要素が客層をせばめるリスクと考えられたからだろう。しかしロングランヒットで世間に支持されたおかげで、長尺版をより大人向けの内容に描き直すことが可能になった。

リンのエピソードが加わることで、すずの内面、周作との夫婦生活も複雑さを増した。ただその一方で、通常版ではファンタジックにぼかしていた要素に、長尺版ではリアリズムに寄った説明が加わった部分もあり、このあたりは評価が分かれそうな気もする。

ともあれ、今回の「片隅」が、単に引き延ばしただけでない、新たな魅力を獲得した愛すべき「世界」であることは間違いない。のんの声、コトリンゴの歌は今作でも活きている。

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共感した! 40件)
高森 郁哉

4.5個としてのすずが、よりダイナミックに立ち上がってくる

2019年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

3年前、私は主人公すずさんのことをすっかり理解し尽くしたつもりになっていた。あの頃の自分に言ってあげたい。人の内面はもっと広くて深く、そう易々と把握できるものではないのだと。これは「もう一歩」だけ心の内側に踏み込んだ物語だ。

オリジナル版では、すずさんというキャラクターがあえて柔らかいタッチで描かれていたように思う。それゆえ観客は、当時を生きた名もなき人々の人生や青春や愛すら彼女の輪郭に重ね、過ぎ去りし日々に想いを馳せることができた。一方、本作では、もっと描写やエピソードを尽くしてじっくり心の言葉に寄り添うことで、「個としてのすず」がよりダイナミックに立ち上がってくるようになった。すずさんだけではない。リンとケイコも同じ。ある意味これは「3人の女性たちの物語」なのだ。作り手と観客が深い絆で結ばれたからこそ成し得たこの異例の試み。私はいつしか心底圧倒され、すずさんのことが益々好きになった。

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共感した! 36件)
牛津厚信

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