劇場公開日 2019年7月26日

アルキメデスの大戦 : 映画評論・批評

2019年7月16日更新

2019年7月26日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

戦艦大和沈没のフェティッシュな描写が、作品の全体像をも脅かす

商業映画はときとして、その全体像よりもディテール描写に鑑賞価値のある作品が出てくる。本作もまさにそうしたものの一本であり、この映画に描かれる戦艦大和の沈没描写は、今年の映画界においてトップレベルの視覚的インパクトを放つ。

もちろん、デジタル環境下で坊ノ岬沖海戦を再現するのは、本作が初めてではない。かつて「男たちの大和 YAMATO」(05)や「聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実」(11)でも取り組まれてきたものだ。だが本作の偉業は、それらが成し得なかった大和が横転し海面に叩きつけられる描写や、46センチ砲が自重でしなだれていく力学シミュレートの徹底、加えて海没した米軍機に水上機が駆け寄り、パイロットを救出していく貴重な目撃証言など、こうした部分の再現だけでもシネコンに駆けつける価値がある。

だが作品のバランス比重を大和に置いたため、三田紀房の原作にあった「大型戦艦建造計画が戦艦大和を生み出す起因となる」というサプライズを犠牲にし、大和描写を正当化するための、やや言い訳の苦しい脚色が自分の中には残ってしまった。いや、本来ならばこの沈没も、航空機時代に背を向けた「負の遺産」として象徴的に本編に作用するものだっただろう。が、その悲劇性がむしろ本編でドラマチックに機能しすぎてしまった感がある。

大型戦艦建造の提案を見積もりの不正から反証していくという、恐ろしく斬新な視点で反戦行為を描いた戦争映画になっているし、物語も主人公の櫂(菅田将暉)が機密保持によって一切の情報を与えられず、戦艦の実測からデータを割り出していく展開や、発注業者に聞き込みし、人件費や材料費を逆算していくスリリングな推移に迫るなど、戦争を産業という視座から捉えて新鮮かつ刺激的だ。

だが、それらの印象をかすめてしまうほど、大和の沈没シーンはあまりにもフェティッシュで倒錯的だ。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ(05~12)で建造中の東京タワーや0系新幹線といった高度成長期のランドマークやアイコンを、そして「永遠の0」(13)でゼロ式戦闘機を物語のシンボルとしてVFXで再現してきた、山崎貴なら仕方のないことだ。

尾崎一男

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