【ネタバレあり】「ゴジラ-1.0」神木隆之介×浜辺美波×山崎貴監督、ゴジラ愛あふれる本音トーク

2023年11月11日 11:00


取材に応じた(左から)浜辺美波、神木隆之介、山崎貴監督
取材に応じた(左から)浜辺美波、神木隆之介、山崎貴監督

ゴジラとは何ものなのか――? おそらく、プロモーション期間中に幾度となく尋ねられてきた質問だろうが、その答えが、主演俳優、ヒロイン、そして監督とで、あまりに三者三様で実に興味深い。その多様な答え、すなわち、それだけ解釈の幅を持っていることが、この怪獣の魅力を物語っている。

ついに公開を迎え、そのベールを脱いだ「ゴジラ-1.0」。日本映画界におけるVFXの第一人者である山崎貴監督が「ちゃんとお芝居ができないと怪獣って存在できない」という信念のもと、物語の中心を担う心に深い傷を負った帰還兵・敷島役と戦後を気丈に生きるヒロイン・典子役を任せたのが神木隆之介浜辺美波だ。3人が改めて撮影の日々、そしてゴジラへの思いを語った。(取材・文・写真/黒豆直樹)

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※本記事には、公開中の「ゴジラ-1.0」に関するネタバレが含まれています。未見の方は、十分ご注意ください。

――過去29作のシリーズにおいて、ゴジラの描かれ方、人類から見たゴジラの立場は作品ごとに様々ですが、今回の「ゴジ-1.0」ではどのようなゴジラを見せようと思ったんでしょうか?

山崎:まず1954年公開の1作目の「ゴジラ」――「戦争」や「核」を象徴するというイメージを大事にしようという思いがあり、それを具現化したメタファーとして作っていた部分がありました。

ただ、製作中にコロナ禍が起きたり、ウクライナで戦争が始まったり、いろんなことが起きてしまい、それによって、ゴジラをなんとなく“現代の不安の集合体”と捉えてもおかしくない時代になっていったことは怖かったですね。

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■「シン・ゴジラ」を意識した部分

――監督自身、たびたび前作の「シン・ゴジラ」(脚本・総監督:庵野秀明、監督:樋口真嗣)のすごさ、その“次”を監督することの大変さについて言及されていますが、本作の構想を練るに当たって「シン・ゴジラ」を意識した部分はありましたか?

山崎:「シン・ゴジラ」に関しては、僕は非常に好きで、よくできた作品だという思いもあったので「引っ張られてはいけないな」と思っていました。時代設定も違う作品ですし、ゴジラの造形に関しても「シン・ゴジラ」はキノコ雲がやってきたような形で、1作目のゴジラをさらにブラッシュアップさせたような造形だと思いましたけど、今回の「ゴジラ-1.0」はカッコいい形にしようというのもありましたし、あっちが政府主導の話だったので、こっちは民間主導の話にしたり。

時代背景から生まれてきた設定ではあるんですけど、あとになって考えてみると「シン・ゴジラ」とは違う方向に行こうとしていたのかなと思いますね。製作中はそこまで深く意図していたつもりはなかったけど、作ってみたら「シン・ゴジラ」から離れようとしていたと感じる部分はありました。

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――「シン・ゴジラ」が国家、組織としてゴジラという危機にどう対処するかを描いているのに対し、本作は戦争という究極の“国家への奉仕”を終えた直後ということもあり、個人の幸せや戦う理由を描いているように感じました。

山崎:そこに関しても、初代「ゴジラ」がプライベートの話とゴジラの話が非常に上手くリンクしていた映画だったので、あれをやらなくちゃいけないなと思っていました。神木くんと浜辺さんに演じてもらった敷島と典子の関係、敷島が背負っているいろんな思いみたいなものが、「対ゴジラ」に向かっていく時にどういうふうにエンジンになっていくかということは、脚本を書きながら非常に意識していましたね。


神木隆之介浜辺美波のキャスティング秘話

――神木さんと浜辺さんをキャスティングした理由についても教えてください。

山崎:昭和っぽい人たちにやってもらいたいなと(笑)。昭和感のある2人――もちろん現代でも全然いけるんですけど、昭和の舞台の中に置いた時に非常になじむ、自然と風情に溶け込む力を持っているなと思いました。

お芝居がちゃんとできないと怪獣って存在できないんですよ。こちら(人間)側の恐怖が伝わってこないと、怪獣は絵空事になってしまうので。お芝居ができることは前提として昭和の世界になじむ、そして、ゴジラとちゃんと対抗できるキャラクターを持っている人ということでお願いしました。

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――お2人は“昭和っぽさ”を自覚されている部分は…?

神木:全くないです(笑)。初めて言われましたよ! 思いきり平成生まれですからね。何がそうさせたのかわからないですけど……。ただ、そう言っていただけるというのは、それだけ年代の幅も広がるので、ありがたいですけど。

山崎:(朝ドラで)大正にもいたでしょ(笑)?

神木:明治からいましたよ(笑)。ここ最近、明治、大正、昭和にずっといて、令和どころか平成にも届いていないので(笑)。そろそろ現代に戻りたいですけど…。

浜辺:自分の体形はすごく昭和っぽいのかなと思います。イマドキの手足が長くて身長が高い若い子の特徴はあんまりなくて(笑)、着物が似合うタイプなので、それは助かりました。

――戦争から“生きて還ってきてしまった”敷島、戦後の混乱の中を強く生き抜こうとする典子を演じるにあたって、どんなことを意識されましたか?

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神木:敷島が典子をどう思っているか? という部分は、実はすごく大事なポイントだったのかなと思います。戦争からああいう形で戻ってきた敷島が「生き延びてしまった」という罪悪感にさいなまれる中で、典子が無理やり家に押しかけてきて、最初は拒否していたけど、徐々に典子の存在が敷島にとって大切な存在になっていく――典子の存在が希望や支えになっていくのは、敷島にとってすごく大きな変化であり、その関係性は丁寧に表現できたらと思っていましたね。

「失いたくない」と思うというのは、その存在が日常になっているということですよね。特別な思いというよりも、彼女がここにいることが当たり前、敷島の日常であり、心地よいものになってきた…というところまで行かなきゃいけないんだなと思っていて、“夫婦”らしさみたいなものを意識していました。

浜辺:まずは戦後という時代、皆が一度は絶望を味わった、傷がまだ癒えていない時代に強く生きる女性という役どころだったので、自分の中で「生きてこそだ」という明確な思い、逃げそうになってしまう時に「生きる」ということにしがみつくようなブレない芯を育てていきたいなと思っていました。

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そこはいまの時代、コロナ禍で心が折れそうになったり、みんなの心が弱くなった時に、どうにか自分を保とうとする心の持ち方みたいなものとも共通するなと感じながら演じていました。

――2人が共に生きていこうとする中で、明子という血のつながらない赤ちゃんが大きな存在となります。典子が明子を「自分が育てる」と考えるに至った心情については?

浜辺:明子との出会いや典子が育てるに至った経緯について、映画の中では描かれていないのですが、だからこそ自分の中で「こんな思いがあったんじゃないか?」という想像はしていました。自分が絶望の淵にいる時に、赤ちゃんという絶望を知らない存在――生きようとする“希望”の輝きに引っ張られる部分もあったでしょうし、自らを明子に託すような、どこか使命感のようなものを典子は感じてたのかなと思います。


■「セリフで口にしていることと違うことを思っている」(山崎監督)

――共に戦後の新しい時代を生きようとしつつも、敷島は“終わらない戦争”を心に抱えています。

浜辺:長い時間、一緒にいることで2人の距離が縮まる部分もありつつ、いつかこの関係性の答えを出さないといけない、いつか怖い答えを聞かないといけないんじゃないか? という、怯えるような気持ちを典子は敷島のそばでずっと抱いていたのかなと思います。情もわいてくるし、助けてあげたい気持ち、できることをしてあげたいという支え合うような気持ちもありつつ…。

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山崎:この2人の距離感のプロセス――セリフで口にしていることと違うことを思っているというのが、すごく伝わってきました。行間の部分を表現してもらわなくちゃいけないところは非常に頼もしかったです。

2人とも惹かれ合ってるけど敷島は「幸せになれない」と思って壁を作っていて、でもそれを乗り越えられるくらい、惹かれ合っているんだというのが、すごく表現されていて、現場で芝居を見ていて楽しかったですね。浜辺さんは「アルキメデスの大戦」の時よりもずっと堂々とお芝居していて…。

浜辺:「アルキメデス」の時のことはあまり記憶にないんです(苦笑)。本当にすごく緊張していたので……。

山崎:正直、キャリアの長い神木くんはともかく、浜辺さんのお芝居でこんなに安心できるとは思っていなかったので(笑)。もっといろいろ言いたかったのに、すごく頼もしくて。


■すごくお金がかかってるからね」
プレッシャーがかかったのは、どのシーン?

――典子が電車の車両から落ちそうになるシーンは「これぞ怪獣映画!」というシーンでした。

浜辺:あのシーン、ちゃんと電車の車両を持ってきて、クレーンで持ち上げて揺らしたり、斜めにしたりしてくださって、すごくお金がかかってるんです。しかも、監督がそれを言ってくるんですよ! 「すごくお金かかってるからね」って(笑)。そう言われると「このシーンが使えなくなってはいけない」って意識になりますよね。もし、あんまりにも私の演技がダサすぎて映像として使えずにボツになったりしたら、どれだけのお金と時間の損失になるだろう…? って。

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山崎:あははは(笑)。

浜辺:その緊張感もありましたが、実際に揺らしていただけたぶん、やりやすさはありました。リハーサルも丸1日、取ってくださったので。たしかに怪獣映画!って感じでした。

――神木さんが演じる敷島が瓦礫の中であげる叫びも、ゴジラの咆哮と同じくらいの強烈なインパクトがありました。

神木:あれは7割が“怒り”でしたね。2割が哀しみで、残りの1割がどうしようもなくなって壊れたようなイメージで演じてました。「絶対に殺してやる」って本気で思ってましたけど、でも一方で「これどうしたらいいんだ?」という感情も混ざっていましたね。

絶望や哀しみ、どうしようもないという気持ちで全てが占められていたわけでなく、敷島として、確実に“殺意”を抱いていました。その殺意が、その後の敷島を動かす原動力になっていく部分でもあり、ターニングポイントになると思っていました。

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撮影自体も、黒い雨を降らしての本番一発勝負だったので、メチャクチャ緊張しましたけど、その直後に現場のみなさんに誕生日を祝っていただきまして、ドロドロの真っ黒のままケーキが運ばれてきました(笑)。

――これまでの映画やドラマでは見たことのない神木さんの表情がスクリーンに映し出されます。

山崎:これまで繊細なタイプの役が多かったと思うんですけど、もっと荒々しい状況に放り込まれて、翻弄され、戦う神木くんが見たいなと。神木ファンは新たな神木隆之介の魅力を見つけられるんじゃないかと思います。


■“東宝女優”感が強く出ていた“あのセリフ”

――印象的なセリフと言えば、典子の「あれが、ゴジラ…」も外せません。

浜辺:あのシーンも何回かやらせていただいて、監督からは「ゴジラに対する恐怖感をもっと出してほしい」ということは言われました。典子にとってもゴジラと顔を合わせるのは初めてだったので…。

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神木:「はじめまして」と(笑)。

山崎:「お話は聞いてます」って(笑)?

浜辺:ゴジラという存在に対する事前情報が何もない中で、抽象的な「何なのかわからない恐怖」という認識で表現しました。終わった後に監督からは「東宝ぽかったよ!」って褒めていただきました(笑)。「ここは(予告編やCMで)使われるよ」と。

山崎:タイトルコールですからね。「あれがゴジラ」というセリフを含めて、あのカットは往年の“東宝女優”感が一番出ているなと思います(笑)。

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神木:歴代の東宝女優さんたちが印象的なセリフを口にされてきたじゃないですか? じゃあ、浜辺の中で今回のあのセリフは何点ですか(笑)?

浜辺:何点…(笑)? もちろん、昭和のシリーズとはまたお芝居が違うと思いますので…そうですね、令和では一番なんじゃないかな(笑)。

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山崎:1本しかないわ(笑)!

神木:M-1の1組目みたいな(笑)。

山崎:「暫定1位」的なね(笑)。


吉岡秀隆が泣いたシーンとは?

――撮影中は目の前にいないゴジラを想像しながら演技されていたわけですが、実際に完成した作品の中でゴジラを目の当たりにしていかがでしたか?

神木:純粋に怖かったです。試写会で作品を観て、もちろん撮影の時の記憶はあるんですけど、自分が出演した映画じゃないような感覚に陥りました。当たり前なんですけど、ゴジラがいるのといないのでは全然違って、ものすごい迫力でした。

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浜辺:私はゴジラ映画を楽しみにして初号試写に行かせていただいたのですが、もちろん迫力や臨場感に「すごいな、こんな感じなんだ」と驚きました。

吉岡(秀隆)さんが、ゴジラが攻撃されるシーンを見て、泣かれたという話を事前に聞いていて、たしかにゴジラって存在を客観的な視点で見た時「たまたま陸に上がってきてしまった生物」という感覚があって、そう考えると、もちろん迫力もあって怖いのですが、ただの悪役とは思えなかったですね。

ゴジラ=祟り神!?

――いまのお話とも重なるかもしれませんが、改めてゴジラとは何ものなのか? みなさんの考えをお聞かせください。

神木:僕は、人間が払うことになった“ツケ”みたいなものなのかなというのは感じますね。人類のエゴのかたまりというか…。それぞれの映画でゴジラが誕生したきっかけというのは異なりますし、いろんな解釈がありますけど、僕は文明が発達したがゆえに、そのプロセスで失ったもの、捨ててきたものの象徴としてゴジラがいるんじゃないかなと感じています。

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浜辺:私にとっては、ロマンの詰まった存在なんです。こんなにもたくさんの映画に出てきたのに、いまだにわからない部分ばかりで謎が多いんです。“怪獣”という存在って、バケモノとか幽霊ともまた違って、もちろん恐怖の対象ではあるんですが、その中にロマンが詰まっているからこそ、山崎監督のような方たちがいて、映画を作り続けるんだなと。日本をずっと魅了し続けている存在だなと思いますし、自分が出演したことでその気持ちがよくわかりました。

山崎:映画を作り終わって、こうやって取材の機会でいろんなことを考え、語る中で、徐々に明確になってきたものがあって、そこで出た答えが“祟り神”なんじゃないかということ。

アメリカの核実験で生まれた存在が、日本に上陸して日本の街を壊すって、そもそもおかしな話なんですよね(笑)。なんで日本に当たり散らかしてるんだ? って。でも、日本人にはそれを受け止めてしまう宗教観みたいなものがある。それは何かと考えると「祟り神だからしょうがない」という感覚なんじゃないかと。

時代ごとに存在する不安や不穏なものが祟り神となって人々の前に現れて、みんなでそれを鎮めようとするのがゴジラ映画なのかもしれないなと思います。ある意味で“神事”なんじゃないかと最近、気づいて自分の中ですごく納得したんですよね。ゴジラ映画っていうのは御神楽(神に祀るための舞や歌)なんだと。不穏な時代にゴジラを召喚し、みんなで御神楽を奉じて鎮まってもらうんですね。

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だからこそ、ゴジラ映画は時々作られないといけないものなのかな。「シン・ゴジラ」はまさに“3.11”を背負って日本に上陸してきたし、だからこそ原発と同じように冷温停止させて鎮めたんだと思うし、今回は、いまの時代の不安やあの時代の終戦直後の不安を形にしたものだから、海に帰ってもらおうとしたんだなと。


■次のゴジラ映画は「また俺が作る」
山崎貴監督からの挑戦状

神木:ひとつ質問していいですか? 庵野さんが「シン・ゴジラ」を作って、山崎さんが「ゴジラ-1.0」を作って、それこそ、いま監督がおっしゃったように、時代が求めることでゴジラ映画が作られるのだとしたら、山崎監督が次のゴジラ映画を作ってほしいと思う同世代や後輩世代の監督は誰ですか?

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山崎:また俺が作ります(笑)!

神木:めちゃくちゃ我がものにしていますね(笑)! 「続・ゴジラ ALWAYS 四丁目の朝日」になるじゃないですか(笑)!

山崎:「力づくで取りに来い!」という感じですね。いま、ボールはここにあるので、そう簡単には渡さねぇぞって(笑)。

神木:いいですね、山崎貴からの挑戦状!

山崎:だってゴジラ映画って楽しいんだもん、本当に。

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