デス・ウィッシュ : 映画評論・批評
2018年10月9日更新
2018年10月19日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
チャールズ・ブロンソンの当たり役がB・ウィリス主演&E・ロス監督で過激に復活
タフなガンアクションヒーローのブルース・ウィリスが久しぶりに帰ってきた。本作「デス・ウィッシュ」は、1974年のチャールズ・ブロンソン主演作「狼よさらば」のリメイク。オリジナルと同様、強盗団から妻を殺され娘に重傷を負わされた主人公ポール・カージーが、頼りにならない警察に業を煮やし、銃を手にして自警活動にのめり込んでいく展開だ。
ブライアン・ガーフィールドの原作小説「Death Wish」(1972)で主人公の職業は公認会計士だが、ブロンソン版のカージーは建築士。イーライ・ロス監督とジョー・カーナハンの脚本(企画段階ではカーナハン監督、リーアム・ニーソン主演という構想も。ロスを含む大勢がシナリオに手を加えて最終稿となった)による改変の妙味は、カージーを外科医にしたことだろう。患者を救う医者と悪者を処刑する“一人自警団”という表と裏の顔の対照性に加え、闘いで負った傷を自分で処置したり、拷問に医学知識を活用したりと、外科医の設定が有機的に筋書きにからんでいくのだ。
原作出版と同じ1972年に生まれ、2003年に「キャビン・フィーバー」でデビューしたロス監督。「ホステル」シリーズ2作や「グリーン・インフェルノ」といった過激な人体破壊描写を含む比較的低予算のホラーでカルト的支持を集めた最初の10年を第1期とするなら、キアヌ・リーヴス主演のサスペンス「ノック・ノック」、ジャック・ブラック&ケイト・ブランシェット共演のファンタジー「ルイスと不思議の時計」、そして「デス・ウィッシュ」といった近年の監督作はさしずめ第2期だろう。スター俳優を起用してより大衆受けする娯楽作をそつなく仕上げる器用さが成熟を感じさせる(とはいえ、本作の拷問や処刑の場面ではイーライ印の激痛描写も健在だが)。
ブルースが過去に演じたキャラクターへのオマージュも嬉しい。フード付きのパーカーで悪者退治する姿は「アンブレイカブル」のポンチョを着た不死身の主人公に重なるし、家族の思い出が刻まれた腕時計への執着は「パルプ・フィクション」の落ち目のボクサーを想起させる。
舞台を現代に置き換え、スマートフォン、カーナビ、SNSやネット動画といったハイテク要素を効果的に盛り込んだのも目立つ改変点だ。そしてもうひとつ、復讐の要素が希薄だったオリジナル版に比べ、家族を襲撃した犯人たちを一人また一人と処刑する本作のほうが、わかりやすいカタルシスをもたらす一方で、米国の銃社会と自警主義が対立と分断と復讐の連鎖を生む根深い問題を一層シニカルに映す苦味にもなっている。
(高森郁哉)