寝ても覚めてものレビュー・感想・評価
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この原作を見事に映像化した濱口監督の新たな一面と素晴らしい才能
カンヌ映画祭の常連となり、今や日本を代表する監督・濱口竜介監督がメジャー・デビューを果たした作品。かつての恋人・麦に生き写しの男性・亮平を愛してしまった朝子。幸せに暮らし始めた彼女の前に、失踪したはずの麦が突然現れる。運命の恋をスリリングに描く恋愛ドラマ。
柴崎友香の原作は「麦」と「亮平」に似ているという要素はあるものの、年齢や身長などに相違点があり、瓜二つと思っているのは朝子だけかも知れない、という思いが読者に付きまとう。その分「麦」に一途にのめり込む朝子に、男女逆転はしているものの、まるで牡丹灯籠のような死出の旅路を感じさせるような不安を感じる。
一方、映画版は東出昌大が二役を演じることで、瓜二つという部分に重きが置かれてはいるものの、大きな交通事故を起こしても怪我一つ負わない、縁がなくなった友人が難病に罹ってしまうなど、麦が持つ超常的な能力の一端を原作以上に感じられる演出となっている。
監督は「麦は宇宙人で地球に感情を学びに来て、学んでいる途中という裏設定」を原作者から聞き作品を理解したと言っており、異種・異形の者と恋に落ちた女性の運命を、無理なくリアルに映像化している。
以前からの濱口ファンであれば、「親密さ」の舞台劇や「ハッピーアワー」の朗読シーンのような映画内の物語、そして落語「黄金餅」の道中付のような、街を魅力的に捉えた長尺のシーンといった、監督ならではの要素が薄いことに肩透かし感を抱くかも知れないが、この不思議なテイストの原作から、1本の映像作品を見事に生み出した監督の、新たな才能の一面が見られたことの方に大きな喜びを感じるだろう。
どんなジャンルにも属さない、まさに濱口作品と表現するしか術のない逸品
運命はメビウスの輪のようだ。この、どんなジャンルにも属さないリズムとテンポを持った作品を享受していると、心底そう思い知らされた。全ては水辺で起こる。出会いも別れも抱擁も、後の様々な出来事も。自分が愛しているはずの人を目の前にしても、それが本当に愛している人なのか、愛の言葉を語り合いながらもまた別の人のことを思っているのではないか、との疑念が湧き出して止まらなくなる。それもドミノ倒しのように綺麗に、ゆっくりと倒れていくのだ。
しかし、この映画は愛の脆さを描くのと同時に、この世の全ての関係性が、互いに与え与えられながら、美しい弧を描くことに気づかせてくれる。それは男女の愛のみならず、親子であったり、友人であったり、このおよそ10年の間に日本人の誰もが何度も自問し続けてきた想いであったりもするのだろう。気づきがある。道のりがある。関係性がある。ようやくたどり着いたその境地がふっと腑に落ちた。
虚構を通じて現実を描くこと。
すごく卑近でどうしようもなくあけすけに恋愛を描いていると思うのだが、全体を通じてなにか別次元の世界を覗いているような虚構感があり、映画とは徹頭徹尾作り物で、作り物を通じて「感情」や「人間」を映し出すものなのだなと、あまりにも当たり前なことに改めて向き合った気がする。
小うるさい関西人である自分にとって、キャストが全然関西出身じゃないという事実に驚くほど関西弁でのやり取りが自然に響いていていた。結局、自分たちが方言に感じる違和感はイントネーションや発音ではなく(それも本作は素晴らしいと思うが)コミュニケーションが成立しているどうかなのだという確信も得られた。
つまり言葉のやり取りはとても自然なのに、映画の持っているリズムや表現がいちいち非現実的で、とても不安な気持ちにさせられる。しかし気がつけばその表現に魅入られている。ヘンな映画だと思うが、ヘンじゃない映画なんて面白いだろうかとそんな極論まで言い出しそうになる。
綺麗事でない恋愛劇
恋愛映画というと、「甘くせつない」みたいなイメージも邦画の場合つきまとうが、この恋愛映画は刺激物だらけだ。
主人公、朝子の行動に驚く人もいるだろう。亮平を置いてかつての恋人の麦の方に行ってしまうシーン、一瞥も亮平に目もくれず、まるで機械動作のように当たり前に麦を取る朝子。余計な感情的芝居を大胆に排しているからこそ、異様さが際立つ。あの瞬間、朝子は条件反射のように麦に吸い寄せられる。
本作の原作は朝子の一人称で語られるが、映画は亮平の視点にも入り込む。その分原作よりも朝子の行動の残酷さが増しているようにも感じられるが、亮平が感じる不安感も映画では重要な要素になる。3.11の日に結ばれた二人は、傍目には中の良いカップルなのに、不安定さが拭えない。震災後の日常に妙な不安を感じた経験はないだろうか。震災前と同じ日常を送っていても何かが違うと感じる妙な感覚。
濱口監督は見事な商業映画デビューを飾った。これからの活躍も楽しみ。
オリジナリティーのある恋愛物
原作は未読だが、柴崎友香の小説の映画化だそうで、これはなかなかオリジナリティーのあるストーリーだと感じた。瓜二つのイケメン2人をヒロインが時間差で好きになる設定は今年1月公開の「風の色」に似ているが(余談だが「風の色」の藤井武美と本作の唐田えりかは顔も似ている)、こちらは女性の作家らしく、女性側の心の動きを極めて繊細に描写しつつ、先を読ませない。濱口竜介監督も見事に演出したものだ。決して難しい話ではないのだが、キャラクターたちの感情の変化がリアルに鮮明に伝わってきて、情報過多にさえ感じられる。2時間という実際の時間以上にずっしりと見ごたえがあり、ほどよい疲労感を覚えた。
脇も達者な俳優たちが固めているが、おおむねシリアスな展開の中で、伊藤沙莉のコメディエンヌぶりがほどよい息抜きをもたらしてくれる。
ずっと無表情に見えた
ドライブ・マイ・カーが良かったので、同じ監督の作品を見たくなって。主人公2人の不倫問題を気にしないよう見たつもりだったけど…
タイトルとは違って、2人の感情が読み取れない無表情っぷり。せめて目の演技からでも何かあれば…なかった。本当にこの2人思い合ってたのか不思議。終盤に出てきた、病で動けなくなった渡辺大知が1番印象に残って良かった。殆ど瞬きしない中ほんの少し視線を変え、うっすら口元を変えただけなのに感情が伝わってきて力強さを感じた。
なんだこりゃ、という展開。 麦もさることながら、朝子の後半のぶっ飛...
なんだこりゃ、という展開。
麦もさることながら、朝子の後半のぶっ飛んだ行動には理解が追いつかなかった。
お互いにぶっ飛んだ者同士で魅かれ合ったということだろうか。
唐田えりかはよくこの役を引き受けたものだ。
恋に落ちた2人
健気な唐田えりか、最高でした。
麦のクズっぷりは胴に行ってました。
とても良かったです。
前半部分で諦めかけた…
最後まで鑑賞できないんじゃないかなって思ったりしながらの序盤。
前半はなんか色々よくわからないことだらけだった。
後半に差し掛かり、急激にストーリーが動き出してからは良かった。
フランスとの合作と言われると、確かに空気感はそうだなぁ。
全編通して主人公が好かんと思った。最後の最後まで自己中なやつだ。
けど、しょうがないよね、本気で好きになっちゃったんだから。
止まらない恋ってあるから。
ポテンシャルと商業化の折衷…次第に生まれる愛のリアリティが快い
待望の初鑑賞は、古き良き映画館「高崎電気館」にて。濱口竜介監督が作る錯覚と果てなき世界。突拍子もないけど、アッとさせられるな…。
『ドライブ・マイ・カー』『偶然と想像』に続き、濱口竜介監督作品を見るのは3作目。商業作品としてピシッと倣って作られている印象。120分のプラットフォームに落とし込みつつ、愛の彷徨う様を繊細に描いている。序盤から中盤にかけては突拍子もないように感じていたが、次第に引き込まれていき、流石だなと思った。
愛の不確かさと均衡を失うような感情。正しさよりも自分に正直にいたい姿に共感は出来ないものの、そのふしだらな彷徨いは凄く繊細で柔らかい。細かなギミックが色味を持ち、8年の変化を様々な形で映していく。その過程の中で、失踪や転勤、出会いと別れ、そして震災…。これらが挟まり、自身の価値観の変化が外的に起きたことも示唆している。少し物足りないが、やはり終盤はハッとさせられるので、二人の果てが達した答えを受け入れられたのだろう。
主演は東出昌大さんと唐田えりかさん。東出昌大さんを『BLUE/ブルー』で起用した吉田恵輔監督が「あんな高身長でナヨナヨした俳優は他にいない」と評していたのだが、それを思い出した。油断を感じさせるような演技が凄い上手いので、この2役も本当にハマっている。そんな状況の中、唐田えりかさんは本当に大変だったのだと思う。リアリティの高さ、自問自答が続く中で演技を探し出すことは容易でない。その不安定さが刺さった。
言葉や仕草、カメラに収める画角、いくつもの視野と多くの反応を掻い摘む上手さを改めて感じた。非常に有意義で興味深い時間だった。
わりと時間の無駄だった
ホラーやコメディとして、家のTVで文句垂れながら見るにはいいけど、自由に喋れない映画館で見るにはストレスが溜まりそうな作品。
洒落乙なカットを撮りたい監督の思惑はあるんだろうが、それが強すぎて、いや、表現が下手くそすぎて不自然というか違和感をかなり感じて草生える。監督のオナヌーです。
色んな意味でキモい映画。美的センスが刺激されることは皆無。刺さる人には刺さるのかな?俺には嘲笑しかできない。
鑑賞動機:監督8割、伊藤沙莉1割、ゲスい好奇心1割
原作未読。
私から見たら衝撃的だったけど、当事者以外から見たら、なんでそんな馬鹿なことしたの、としか思えないようなことを、自分でもそうだとわかっているのにしてしまうことって…あるんだろうな、と思う。実証しちゃってるだけに余計に。
麥はこわい。人間じゃない方が納得するくらいこわい。
伊藤沙莉が出てくると、つい彼女を見てしまう。大阪のおばちゃん的役回りがはまっていて、よい。
女性の感想を聞きたい❗
僕は男だから、東出氏が演じていた二人の男性の気持ちは解る。麦みたいに自由奔放に生きたいけど…。朝子が一時の迷いだった気がするが、戻ったら受け入れると思う。
朝子の対応は賛否両論あると思うけど、結局安定(収入面だけではなく)を求めたのかもしれない。
よく出てきたネコが印象的❗ネコ🐱好き女性にはあまり期待をしないでおこうとも思えた。
非日常的なセンスの恋愛映画?
非日常的なセンスの恋愛映画? 黒沢清監督的なホラーっぽさも感じた。でもネコがいい演技してました。
東出さんがよかった
リバイバル上映で観た『ドライブ・マイ・カー』で初めて濱口竜介監督を知って、非常に興味深い作品を創り出す監督さんだと今更ながら過去作品に臨んでみました。うん、やっぱり凄い監督、脚本家さんだと改めて思いました。
初監督作品なんですね。封切り当時、結構話題になってたみたいですが何故かスルーしていました。「実はこの頃から注目していた、これから目が離せない監督なんだよ!」なんてかっこつけて語りたいところですが、全くノーマークでした。
串橋(瀬戸康史さん)とマヤ(山下リオさん)の最初の演劇論での衝突から仲が深まる流れは想定できましたが、ヒロイン朝子(唐田えりさん)の行動にはどうしても納得がいかないし、感情移入できませんでした。主役に感情移入できない作品はあまり良い評価できないんですがこの作品は少し違ってました。
東出昌大さん演じる亮平と麦の二役がそれぞれ葛藤する(のは亮平だけかも)姿を見事に演じ分けられてました。(ただの『ボクちゃん』じゃなかったんだ!?)同じ川の流れを見ながら全く反対の感じ方をする2人の言葉がとても象徴的ですね。またしても渡辺大知さんと伊藤沙莉という素晴らしい役者さんたちに脇をガッチリ固めとてもいい味出されてました。
『ドライブ・マイ・カー』を観てからの遡っての鑑賞なので先入観なしとは言えませんが(再びいいますが)凄い監督さんが出てきたものです。
まだまだ若い濱口監督作品のこれからの活躍が楽しみでなりません。
アカデミー賞おめでとうございます!(願望での妄想発言です。お許しください。)
麦麦麦麦大和田バク〜♪
可愛い顔してあの娘割とやるもんだね〜映画
これ東出昌大と唐田えりかの現在を重ねると(というか、重ねざるを得ない)色々味わい深い
二人の棒演技が濱口作品と相性よく、お互いの無表情から観客の想像を掻き立てる作りに
瀬戸康史や伊藤沙莉、山下リオなど芸達者が脇を固め(仲本工事だけ判らなかった)黒沢清作品のような不穏さもあり2時間退屈しなかった
唐田えりかは男好きする顔といい役柄といい東出との不倫騒動で完全に女性の敵になっているが、個人的には好きな顔なので応援しています(東出はどうでもいい)
蛇足だが杏ちゃんはもっと好きです(YouTubeもサイコウ~)
同じものをこれからずっと視ていく大人の愛をイメージさせる斬新なカッコいいラスト
原作は読んでおらず、あくまで映画だけを見た上でのレビュー。
今まで見たことが無い新鮮で、苦味も伴う、恋心を通じて二人が大人となる素敵な恋愛映画で、珠玉のとても愛しい映画という思いが残った。
そして、夢の様な恋に憧れ溺れた朝子(唐田えりか)が、現実的な愛に目覚め能動的に行動出来る女性に成長する物語。イプセン「野鴨」の辛い現実を知る悲劇をベースに、社会性も織り込み、愛する人間の過ちを何とかそんまま包容し克服し、前に進もうとする亮平(東出昌大)の物語でもある。
ドライブ・マイ・カーの滝口竜介監督による2018年公開の日仏制作映画。原作は芥川賞受賞作家の柴崎友香、脚本は2007年城戸賞の田中幸子と滝口監督、撮影は佐々木靖之、編集は山崎梓、音楽はtofubeats。配給がビターズエンドとエレファントハウス。
出演は、東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子ら。
まず、俳優が真っ直ぐにこちらを見るカメラワークが印象的であった。映画の中で2回登場の視線が刺さる様な牛腸茂雄の人物写真の構図と同じだ。ごくごく普通のヒトに見える最初の方の朝子と、亮平への愛を自覚してから津波のあった東北の海に向かう朝子、唐田えりかの凛とした美しさの対比が絶妙であった。据えられたカメラは、朝子のみならず、映画での演技を通して唐田自身の成長をも映し出している様にも思え、その二重性に惹きつけられてしまった。
麦と朝子の友人の岡崎(渡辺大知)がALSになってしまう設定は、視ることによるコミュニケーションの力、即ち映画を通しての作り手と観客の間の以心伝心の力への信頼を強調する意味あいからということか。実際に、岡崎は視線の動きだけで急な雨を朝子に伝え、朝子はそれを分かり行動した。
それから、瀬戸康史と山下リオの揉めごとを上手に捌く等、平凡ながらも頼りにはなるビジネスマンの亮平、乙女の夢を喰って生きてる様な実在感が乏しい俳優でモデルの麦、その二役を演じ分けた東出の演技と、二人の違いを上手く描出した脚本が、素晴らしい。
そして、長時間運転で疲れた亮平の足裏や背中を揉みながら「亮平のことめちゃ好き。どうしたらいいかわからんくらい」と吐露し、更に元カレの存在を好意的に考えると言う康平に真っ直ぐにハグする唐田。その姿は、少なくとも演技しているとは思えない迫真さを見せ、とてもとても可愛いかった。
劇場での地震の後、倒れてしまった「野鴨」の看板を横向きに立てかける亮平。これから野鴨をモチーフにした新しいドラマを見せていくという監督の意志宣言か。知的にさりげなく主張する監督に感心させられる。
震災後5年も同居していたのに朝子は、亮平の制止も聞かず、突然現れた元カレの麦(東出昌大の二役)と共に、夢見る様に北海道へ向かう。しかし、震災後に亮平と二人で通った思い出の仙台の手前、津波対策の防波堤が見える海のそばで目が覚める。
「ねえこの向こう本当に海なの?」「知らなかった?」「うん」。彼女は悟る、かけがえの無い場所と時間を共にした本当に大切なヒトの存在を。ここからリズムが変わって、亮平のもとにしっかりと自分自身の力で帰る朝子の映像の流れが、とても素敵で好きだ。大阪へ向かう夜行バスで見せる愛を再発見した彼女が見せる息を飲むような美しさが、とても素晴らしかった。
最後、「俺はきっと一生お前のこと信じへんのや」と言い、朝子と一生これから付き合っていく決意を告げる亮平。冷たい言葉の裏に、深い大きな愛があるセリフで痺れてしまった。
二人で一緒に水量を増した川を見て、「きったない川やで」言う亮平、「でも綺麗」と言う朝子、感じ方はそれぞれだが同じものをこれからずっと視ていく大人の愛をイメージさせる斬新なカッコいい終わり方であった。続くtofubeatsによる色々あるが二人の愛の途切れない強い流れを歌い上げた歌詞と相まって、大きな感動を覚えた。
演技下手
ずっと観たかったけど、なんとなく観る価値あるのか不安だったけど
観てしまった…
音楽もいまいちだし、なんといっても演技が下手
不倫とか関係なく、二人とも演技の問題では…
個人的に主人公嫌い
最後の方、ものすごくもやっとする。主人公が不思議ちゃんで、何考えてるのか分かりにくいし、共感できないからしんどいのか。
りょーへいは、誠実で優しいし、共感もできるキャラクターだから、ラストずっとりょーへいに共感してイライラモヤモヤ。
ふざけんな!ってなるよそりゃ。
はーしんどい。
って思いながら観終わったけど、皆さんのレビュー見てたら絶賛されている方もいたり、かたや私のように思う方もいたり、賛否が割れるその理由を考えたりコメント読み比べるのは面白いです。笑
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