女は二度決断する

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劇場公開日:

女は二度決断する

解説

「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」「ソウル・キッチン」でカンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭それぞれで受賞歴を誇るドイツの名匠ファティ・アキン監督が、ダイアン・クルーガーを主演に迎え、突然の悲劇で家族を奪われた主人公の女性が絶望の中で下す決断を描いたドラマ。ハリウッドはもちろん、フランスなどヨーロッパ映画でも活躍し、英語、フランス語、ドイツ語を操るクルーガーが、ドイツ語を使った演技に初挑戦し、2017年・第70回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した。ドイツ、ハンブルグ。トルコ移民のヌーリと結婚したカティヤは幸せな家庭を築いていたが、ある日、白昼に起こった爆発事件に巻き込まれ、ヌーリと息子のロッコが犠牲になってしまう。警察は当初、トルコ人同士の抗争を疑っていたが、やがて人種差別主義者のドイツ人によるテロであることが判明。愛する家族を奪われたカティヤは、憎しみと絶望を抱えてさまようが……。

2017年製作/106分/PG12/ドイツ
原題または英題:Aus dem Nichts
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2018年4月14日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第75回 ゴールデングローブ賞(2018年)

受賞

最優秀外国語映画賞  

第70回 カンヌ国際映画祭(2017年)

受賞

コンペティション部門
女優賞 ダイアン・クルーガー

出品

コンペティション部門
出品作品 ファティ・アキン
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(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

映画レビュー

5.0秀逸な邦題

2018年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

ネオナチに家族を殺された白人女性の物語。司法でさばけない変わりに彼女がくだす決断が賛否を呼ぶ作品だろうし、監督もそれを狙っているのだろう。しかし、ただの復讐ものかというとそうではない。

シンプルな復讐劇なら、「二度」の決断は必要ない。推定無罪の原則の限界を感じる主人公がただネオナチを殺せばよかった。反対に葛藤の末、赦す展開だったらどうだろうか。行儀の良い話にはなるだろう。しかし現実は赦しに満ちていない。この映画は、二度の決断があるから非凡なものになった。一度目と二度目の決断の間の「逡巡」には、単純な怒りだけでも、寛容な赦しとも言えない大変に複雑な感情が宿っている。

一度目の決断を翻す瞬間のカットは、脚本段階にはなく、撮影中の偶然を利用したそうだ。その後台詞のない主人公の逡巡が続く。この逡巡の後の二度目の決断は一度目とは変化している。

その変化になにを見るか。新聞記事や論説のように割り切れない感情がこの映画には溢れている。その感情を無視しては、世界の問題の何も解決できないだろう。

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杉本穂高

4.0ドイツの名匠とダイアン・クルーガーが生み出した究極のヒロイン像に圧倒される

2018年4月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

興奮

今やドイツを代表する映画監督にまで昇りつめた存在、ファティ・アキン。トルコ系の彼の作品は、いつも単一の国家や人種にとどまらず、その境界線を果敢に突き崩すパンクな精神を覗かせる。かつてと同様、「愛する者の死」といったテーマに真っ向から挑み、それをこれまでのようなミニマリズムではなく、大きな川の流れのように骨太に描き出したのが本作だ。題材は数十年も前にドイツ国内で多発したという爆破テロ事件。異なるものを暴力的な手段で排斥しようとする風潮は現代世界と似ている。まさかこれほどつながってくるとはアキン監督自身が驚いたのではないか。そこに生まれた残骸と亡骸の間を、涙も枯れたヒロインがいく。彼女には絶望から這い上がり、法廷に挑み、悪を見極め、さらにその先にある決着へと自らを向かわせる孤独な戦いがある。その魂はパンキッシュで、ハードボイルド。この役を逞しく生き抜いたダイアン・クルーガーに心底圧倒された。

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牛津厚信

5.0怒り、悲しみ、憤り、やり場のない思いは復讐へ向かう

2024年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、VOD

爆破テロで夫と幼い息子を失ったカティヤ(ダイアン・クルーガー)は、
裁判を通して犯人たちに行き場のない怒りを覚える。

映画は3章に分かれています。
①家族(爆破テロの起こり)
②正義(ほぼ裁判シーンです)
③海(犯人カップルが海辺に停めているキャンピングカー)

特に②の裁判シーンは腑が煮え返りました。
犯人たちは、カティヤの欠点を執拗に追求します。
事件後の悲しみのあまり、ドラッグに手を出したこと。
(犯人の女を目撃した証言に信憑性がないと責め立てるのです)
そして夫のヌーリが大麻の取引で刑務所に4年間服役した事実を
突いて来て、ヌーリに責任があるかのように貶めます。
何より酷いのは偽証と証拠のでっち上げ。
犯人たちは犯行当日、ギリシャのホテルに宿泊していた。
だからアリバイがある・・・ギリシャのネオナチの党首が偽証
するのです。

裁判とは酷いものです。
被害者の傷口に手を入れて引っ掻き回すようなもの。
そして無罪判決がおります。

カティヤは一人でギリシャのホテルを訪ねます。
ネオナチの男が車で追いかけて来ます。
物陰に隠れて、車を追うと、犯人カップルは海辺のキャンピングカーで
のんびりと寛いでいました。

控訴を奨める弁護士のダニーロ。
しかしカティヤの下した二度の決断とは?

犯人を爆破して殺すこと。
そして自分もその爆破で死ぬこと。
でしょうか?

この映画は実話に基づき、移民たちがネオナチの爆破テロで
9人亡くなった事件。
ドイツ警察の戦後最大の失態と言われる
ネオナチによる連続テロ事件。
初動操作の遅れから10年以上も逮捕が遅れ、その間に、
犯人は殺人やテロ、強盗を繰り返した。
監督のファティ・アキン自身もトルコにルーツを持つ人。
監督の強い思いが込められている。

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琥珀糖

5.0タトゥーの結婚指輪

2024年4月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

怖い

難しい

この映画をやっと見ることができた。映画館で見るチャンスが今後あったら逃さないようにしたい。

クルーガーがドイツ映画、それもファティ・アキン監督の映画でカンヌ主演女優賞を受賞したのはとても嬉しかったろう!私も嬉しい。それに値する映画だと思った。

監督らしい世界で雰囲気で音楽で笑えるところもあったし。でも辛かった。推定無罪はカティヤ(クルーガー)に酷だ。でも証拠不十分で不自然で捏造しまくりによる冤罪よりずっといい。それを受け入れるカティヤはドイツ人だと思った。

彼女のお気に入りのタトゥー、サムライは三船敏郎だろう。それに赤の色を入れた。事件後、生理が止まっていた分の血を入れたみたいだ。ソーシャル・メディアを阿呆のように使う元・被告人カップル。おめでたい。家族と過ごした海辺のバカンス風景の動画をスマホで何度も見るカティヤ。「ママも来て!」と夫と息子に呼ばれている。撮影している彼女は紫外線防止クリームを塗ったばかりだから行けないよー、と答えている。その愛する二人のところに行くよ!生理も来て体も戻ったしね!

AfDがどんどん支持されているドイツ、特に旧東ドイツの状況を思う。ドイツばかりでなくフランスもイタリアもどこでも同様だ。だからこの映画は「政治的でなさすぎる」とも批評されたようだ。ドイツらしい。けれども学校(ギムナジウム以上だろう)の倫理なり宗教なりの科目でこの映画は教材として使われてもいるらしい。若い時から考え続けること、問題意識を持つこと、そのための材料を整えることは教育や研究や芸術の分野の仕事で16各州に委ねられている。その文化主権(高権)は州にあり国家は首を突っ込むことができないようになっている。

海をバックにした最後のシーン、配信で見てたから声をあげて泣くことができた。これが家で映画を見るメリットのひとつかな。

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talisman