ライフ(2017) : 映画評論・批評
2017年6月27日更新
2017年7月8日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
「エイリアン」の衣鉢を継ぐ宇宙サスペンスは、予想をくつがえすラストがトラウマ級!
「異種生命体コンタクト映画」の新文法を示した「メッセージ」(17)によって、同ジャンルにはさらなる表現の幅がもたらされた。しかし「地球外生命体との平和な遭遇などありえん!」というゼノフォビア(外来者恐怖症)を抱く人や「未知の存在は人類に危害を加えてナンボ」という家訓に忠実な人もいることだろう(どんな家訓だよ)。そんな一途な者にとってこの「ライフ」は、まるで優しい恋人のように寄り添う、凶暴性むき出しの異種生命体コンタクト映画だ。
火星から採取したサンプルに、未知の生命体の存在を確認した国際宇宙ステーションのクルーたち。「カルビン」と名付けられたその生命体の育成に彼らは取り組み、細胞の状態だったそれは、クリオネのような愛くるしい小型生物へと成長していく。
だがある日、生命維持装置の作動ミスによって生存をおびやかされたカルビンが、全身をヒトデのように進化させ、巨大かつ攻撃的な姿へと変貌を遂げる。そして接触していた科学者の腕をボキボキに砕くや、防御実験室を越えて居住エリア内へと侵入してきたのだ。人間を敵とみなし、容赦なく襲う恐るべきモンスターとなって!!
デブリ(衛星物体)との衝突がもたらす非常事態を描いた「ゼロ・グラビティ」(13)や、マット・デイモンが知恵を絞って火星サバイバルに挑む「オデッセイ」(15)と同様、「ライフ」は「最新宇宙科学に基づくリアルSF」の外殻をまとっている。そこに加え、地球外生命体との遭遇を描いた古典「エイリアン」(79)を2017年仕様にアップデートした作品、と言えば本作の性格が分かるだろう。生命体とクルーが死闘を繰り広げる、ステーション内での密室サスペンス。そして思わぬ人物から先に犠牲となるアンサンブルキャストの妙など、劇中の諸要素が9月公開の本家「エイリアン・コヴェナント」(17)よりも見事に「エイリアン」の衣鉢を継いでいる。すべての細胞に脳や筋肉や眼などの機能を備え、あらゆる環境への順応に優れているカルビンこと火星生命体も、機能性を極めすぎて色気が全くないところが、かえって不気味かつ超個性的だ。
なにより本作の真骨頂は、その自然ドキュメンタリーみたいなタイトルが鋭利な切っ先と化す、トラウマ級のエンディングだ。侵略SFを観慣れた者でさえ、思わず悲鳴を上げてしまう衝撃の展開には、優しい恋人の浮気級に落ち込みを覚えるだろう。……いや違う、冒頭のように「異種生命体とのコンタクトに相互理解など不要!」を唱える者ならば、きっとこの映画が提示するラストにニヤニヤが止まらないはずだ!!
(尾﨑一男)