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HPを見ても、フワフワしたような感じで、一体誰向けに上映しているのか、よく分からない作品群なのだが、そもそもニコ生でのコンテンツなのを、スクリーンの大きさで愉しみたいってことなんだろうと思った。ほんとのマニア向けなのだろうね。とはいえ、実際の場内はそこそこ観客が入っているから一部の注目度は高いのかもしれない。なんせ宣伝なんてサッパリしていないし、バルト9内でもポスターみつけられなかったし、チラシも皆無。
で、作品の殆どが、庵野監督のスタジオカラーが関わっているのだが、プロダクションIGやコロリド、コミックスウェーブ等、今の日本アニメの中心が参加していることに胸の高鳴りを覚える。
その中で、幾つかその表現方法の強さを感じさせられた作品をピックアップする。
一発目は『Kanón』。初っぱなのインパクトを与える作品とすればこれ以上は無い位、怒濤の場面展開と演出、そしてセンスの洪水が溢れかえる。これが緩急をつけて間欠泉の如く吹き上がる映像のスピード感は中毒にもなり得るくらいの画力だ。ストーリーもキリスト教的西洋思想を俯瞰でみれる内容で、興味深い。観ている観客を置いてけぼりにしていく疾走感は、この後の『SEX and VIOLENCE with MACHSPEED』という作品の凄まじいドライブ感も同様に、一つの日本アニメの表現方法として楽しめる。もうストーリーや細かい演出は抜きにして、人間のキャパを超える程の情報量を洪水の如く流し込む効果は、只々脳内物質が沸騰する程、ハイになれる。話の展開も、ダッチワイフなんてものをギャグに使えるセンスは大変高い。
次の『おばけちゃん』は、ユルいストーリーの一話完結型で、そのギャグセンスは充分過ぎる程面白い。話の内容上、地上波では難しいが、ネットやBS・CS、ペイチャンネルでの可能性を感じさせる作品だ。
『I can Friday by day!』も又、演出方法、音楽とのマリアージュ感、親和性がとてもよく、大変質の高いミュージックビデオを観ている感覚でストーリー自体にもカタルシスを得られる面白い作品だ。
『鼻下長紳士回顧録』は奥さんの安野モヨコの原作。この時代の売春宿の話は、とても興味深い。フェティシズムを垣間見ることができる作品だ。画力も流石漫画家だけある。
『ENDLESS NIGHT』は、フィギュアスケートのアニメ。TVアニメでもスケートが題材を放映しているが、これは明らかにプロモーションアニメ。実際のフィギュアでの演技と音楽とのタイミングのズレは、流石アニメには無く、完全にシンクロした内容に、もしこれが現実ならばと、夢を見ることが出来る内容になっている。作画は大変困難だったのだろうと想像に難くない。
その他、『旅のロボから』、『カセットガール』も、日本のアニメの正統性みたいなものを感じて、安心して観ることが出来る。
制作現場的には、相当の作業時間、相当の精神的疲労、そしてそれに見合えない報酬や劣悪な勤務環境等々、業界的にも問題がエベレスト級の連山という話が流れている。映画業界もそうだが、『好きだから』の一言でこの問題に蓋をし続けていると、近いうちに崩壊するのは誰の目にも明らかである。きちんと現場にも還元できるような健全な業界に是非成って欲しい。一フアンとして、これだけの将来性を力強く感じられる可能性を拝見できたのだから・・・