2002年にヴィン・ディーゼル主演でスタートした『xXx〈トリプルX〉』シリーズ第3作。2作目で降板したヴィン・ディーゼルを15年ぶりに再び主演に迎え、副題通りまさしく再起動させた。基本はスパイアクション映画だが、作中にエクストリームスポーツが登場するという特徴がある。
人工衛星をハッキングし、システムを掌握して特定の場所に落下させる事が出来るシステム、通称“パンドラの箱”が使用され、NSA工作員にしてトリプルXプロジェクトの創設者ギボンズが命を落とす。この機密システムを行使した人物がいるはずだと、CIA本部にて各責任者を招集して開催された会議の場で、謎のグループが突如会議室を襲撃しパンドラの箱を奪い去る。
ゴーストのような謎のグループを追跡出来るのは、死んだ事になっている伝説のトリプルXエージェント、ザンダー・ケイジ。CIAのマルケは、ザンダーを復帰させ、ザンダーはかつての仲間達を呼びチームを結成する。
ロンドンにて古い友人である天才ハッカーを訪ねたザンダーは、ゴースト達がフィリピンのある島に潜伏している事を突き止める。
私は、シリーズ初鑑賞。てっきりヴィン・ディーゼル主演の2002年作品の続編(第2作)だと思っていたが、正確には2005年にアイス・キューブを主演にした『トリプルX ネクスト・レベル』に続くシリーズ3作目だという。この05年版が興行的に失敗した事で、シリーズ続行が白紙となっており、10年以上の時を経ての再始動だったそう。
厳密に言えば、過去作品を鑑賞していた方が盛り上がれるのだろうが、本作からでも問題なく楽しめた。
今時、『007』シリーズですらやらないような、「カッコつけてアクションして、夜はイイ女を抱く」という昭和アクション映画の価値観を全力で描くバカバカしさは、個人的には嫌いじゃない。
しかし、やたらとカッコ付けたアクションをする割に、夜や暗闇でのアクションも多い事や、墜落仕掛かった輸送機内での無重量バトルと、とにかくアクションシーンの組み立て方がイマイチで、何をしているのか分かりづらかった。その為、作中1番楽しめたのが、ザンダーがCS放送をハッキリする装置を仕掛けて逃亡する際のXゲームシーン。次いで、ゴースト達によるCIA本部襲撃シーンの序盤の展開という序盤に集中してしまっており、豪華なキャスト陣から期待したアクションとはかけ離れたものだった。
特に、ゴーストチームのリーダーにドニー・イェン、メンバーにはトニー・ジャーと、中国とタイのアクションスター参戦という激アツな布陣にも拘らず、肝心の彼らのアクションがクライマックスに向かうに連れ銃撃戦メイン(ドニー・イェンは一応近接戦もありはするが)となっていき、序盤のCIA本部襲撃シーンが1番盛り上がるというのはあまりにも勿体なく感じた。特に、トニー・ジャーはエクストリームスポーツを取り入れたアクション映画である本作には打ってつけのキャストであるはずなのに、イマイチ活躍の場が与えられていなかったのは残念極まりない。
ただし、女性キャストの活躍は素晴らしく、スナイパーのアデル役ルビー・ローズの不良姐さんぶり、ゴーストのセレーナ役ディーピカー・パードゥコーンの正統派美女、武器のスペシャリストでサポーターのベッキー役ニーナ・ドブレフのオタク気質な美女と、三者三様の魅力がそれぞれ表現されており、その点に関してはこれだけキャストが多い中で見事に描いていたなと思う。
特に、ベッキー役のニーナ・ドブレフの眼鏡姿が可愛らしく、伝説のエージェントであるザンダーを前に早口オタクぶりを発揮したり、クライマックスで銃を手に戦って調子に乗ってはしゃぐ姿がコミカルで印象的だった。
ストーリーについては、変に捻った展開などせず、もっとシンプルで良かったと思う。何せ登場キャラも多いので、彼らの個性も描きつつ、中盤で黒幕が別に居るという展開や、パンドラの箱を巡って急にロシア軍が介入してきたりされると混乱するのだ。ゴースト達がトリプルXだという展開は構わないが、それならば元トリプルXとして自分達の大義の為に謀反を起こす等の展開で良かったはずだ。素直にザンダー達とゴースト達の対決を描いた方が盛り上がったのではと思ってしまう。
また、エクストリームスポーツに関する描写についても、序盤のザンダーのみではノルマ的印象は拭えないので、もっとそこにフォーカスしたアクションも見せてほしかった。
ネイマールがゲスト出演している点、トリプルX加入をアベンジャーズ加入と勘違いしている点は笑えはしたが、別に必要なかったのは間違いない。