ルームのレビュー・感想・評価
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救出されたその後が伝えたい事なのかも
今見返している所。トラックに詰められた時、偶然練習通り回る方向に何も荷物がなかった、回る方向が荷台の壁でもなかった。車がセダンではなくトラックタイプだった。やはりこの辺が映画という事かな?お母さんはすごい賭けに出た。私なら7年も我慢ならない。きっと数ヶ月で犯人を殺すか自殺するかしているだろう。暗証番号をどこを押すか探る為に表面に細工をしてみたり、窓迄ベッドや色んな家具を集めていって割るか。しかしよく耐えたね。救出後の好奇の目も苦しかっただろうし、何より身内に我が子が偏見の眼で見られるのが堪らなかっただろう。息子はお母さんを2度も救った。敵ではなく同志、仲間だ。この映画観て、北朝鮮に拉致された家族を思い出した。本人のみならず家族みんなの悲劇である。望みを捨てず生きていればいつか奇跡が起こるのかもしれない。自ら早まって死んではいけないね・・
お母さんも息子も凄く演技が良かった。映画であり演技していることを忘れさせてくれるくらい。
究極の親子愛
母の日も近いので、こちらのA24作品を鑑賞。
7年間、1つの“へや”に監禁された母親と、生まれてからその“へや”しか知らない男の子の親子の物語。
傑作!
前半のハラハラ脱出劇。
その“へや”しか知らないジャックへついた、優しさの嘘が仇になってしまったり、辛いながらも2人で頑張って楽しみを見つけたり、普通以上に難しい子育て。
そして、脱出して終わりじゃないのが、この作品の良いところ。
後半は脱出して幸せなはずなのに…という、逆説的なお話。
家に押しかけるマスコミ(マスゴミ?)、ジャックを認められないジィジ、ママは精神的に病んで離れていき、遂にジャックは、いつでもママと一緒にいれたあの“へや”に戻りたいと言い出してしまう。彼にとってはあの“へや”が全てだったもんね。
それでも、ジャックも少しずつ成長して、ママもジャックにまた助けられて、感動に次ぐ感動のラストシーン。
助かってからの安堵感と微笑ましいシーン。
涙なしには観れませんでした。
ジャック役のジェイコブくん。
君のおかげだよ、ストーリー的にも映画的にも。
こんな上手い子役見たことない。もはや演技なのかどうなのか。
初めて外の世界を見た、本物の青空を見た彼の顔を忘れることはできません。
カメラワークもあってか、観ている側も何年も監禁されていたような、2人の気持ちを少しだけ味わうことができました。
7年ぶり、もしくは初めて見る外の世界はどんなだろうと。
前半も後半も、微笑ましさと辛さに感情がジェットコースター状態で、何度も涙が溢れる。
そして何よりも驚きなのが、実話がベースということ。
2度と観たくないようで、また観たい。
親子について考えさせられる傑作でした。
産まれたときからずっとこの部屋にいたとしたら
木も葉も海も人も何もかもが偽物か本物かもわからない。部屋の中しかしらないジャックの世界がどんどん広がって成長していく様子が、繊細な演技で表現されている。
演技上手いしとっても美少年!!
幸せなはずなのに…と解放された世界に馴染めず苦しむお母さんを見てるのは辛かった。何が幸せなのか。被害者は一生苦しまないといけないのか…。
海外は監禁事件が多くて怖いな!!
子供にGPSつけないと不安でしょうがないね!!絶対子供を一人にさせたくない…。
自分がもし監禁されたら…と考えたら怖くて想像もしたくないけど、例え犯罪者との子供でも、息子がいたからこそいつか出られると希望を持って生きれたんだと思う。
○○映画の極北
話題作だが未見だった。ストリーミングサービスに降りていたので見た。
この映画が刺さるのは、状況を弁解していないから──だと思う。おそらく日本映画であれば「わたしたちは、しいたげられた、かわいそうな母子なのです」の情感を強調表現するだろう。この母子が、しいたげられた、 かわいそうな母子なのは、間違いのないところだが、演出でそれをやると、ザ日本映画になってしまう──わけである。
むろん日本映画と比べる必要はないし、とばっちり、牽強付会だが、この映画の肌感は日本映画の対極にある──と思ったので、無理に対比している。日本のたいていのクリエイターは演出に情感が必要だと考えている。個人的にはそうは思わない。まして情感を描けるか描けないかが未知数ならば情感を出そう──とはしない。狙い通りに伝わるかどうかが解らないならば、狙うべきではない──と思う。
ルームは異常な状況を克明に描きながら、情感は出さない。情感とは、悲しみに暮れる母子の様子であったり、暴力で制圧している男の憎々しげな描写であったり、悲愴な音楽であったり、その他さまざまな同情を誘う表現方法──のこと。それが、まったく無いので、母子が置かれている恐ろしい状況がダイレクトに伝わってくる。
情感が無い=いい映画、と言いたいのではなく、この映画に関してはそれが効果的だった──という話。その叙事(感情をあらわさず事実をありのまま)的な描写に加えて、要所でジャック目線に切り替わる。まだ幼いゆえ、ルームに郷愁(ホームシック)のようなものを感じている。籠を取り払っても出ようとしない籠飼いの鳥──のような感じ。その悲痛も伝わってきた。
また、本作では、むしろ被害者側の混沌を描いている。ジャックのわがままや、マの家族の確執を描いている。ザ日本映画であれば、被害者に負の描写をかぶせない。反意語を置かない。被害者は「(あくまで真面目に生きている)被害者でございます」の体で置くのがザ日本映画の常套手段なので、そこにも対極を感じた。
中盤、マはジャックだけでも脱出させる策を講じてサスペンスフルになる。見ているのは社会派の映画なのだが、一か八かの窮策が、昂奮をともなってくる。トラック荷台の、敷きマットの中で転げるジャック。初めて見あげた空。走れジャック。たのむ。逃げ切れ。いつしか手に汗を握っていた。
監督は、ジェンダー間バイオレンスに訴求する映画をつくった。ただし、その訴えを多数の共感を得られるものに仕立てたのは、サスペンスフルな要素でもあった。と思う。映画は「思い」や「個性」によって伝わるものじゃない。いかに尊い告発も技術がなければ伝わらない。
これは透明人間(2020)にもいえる。あの映画も透明人間を狂言回しにしたジェンダー間バイオレンスの映画──だった。伝えたいことがあるなら信念も個性もいらないからハリウッドや韓国へ行って映画を学んできてくれ──という話。である。牽強付会と知りつつ、強引にザ日本映画と比較した。
ところで、欧米が根本的に異なるのは被害者が顔出しで取材に応えてしまうところ。日本では虐待や監禁などの被害者が顔出しすることは、まずない。
ただし、叙事を貫いた本作も、映画内インタビューは、やや煽りすぎ──な気がした。犯罪被害者のインタビューを見たこともあるが、あんな突っ込んだ、意地悪な質問はしない。そこは、ちょっと盛りを感じた。
幼いジャックが「ルーム」回帰をしきりに言うのは、ホームシックというより、母胎のようなもの──だからかもしれない。その幻影にさよならをするラストシークエンスは、かれが事件から解き放たれるオブセッションとして、とても説得力があった。
なお余談だが、ブリーラーソンの出演履歴を眺めて、ホントに作品に恵まれている人だな──と思う。本作もショートタームもガラスの城も、マーベルも。
余談ついでに言うが、日本にも演技派の女優さんが大勢いる。その履歴を眺めたとき、見事なほど、いい映画が一つもない。
5歳、広い世界へ
実話をもとにした、監禁事件のサスペンス。しかし、内容は監禁から脱出して、本来の世界に戻ってからの親子のヒューマン・ドラマと言える。
前半は、監禁されていた天窓のある狭い小屋からの脱出劇。7年にも渡る監禁生活の中で、ジャックが生まれ、そこだけが、ジャックと母の世界。母はジャックを守ることだけに、命をかけてきた。そして、ジャックの脱出劇。
後半は、親子ともに脱出、犯人も逮捕。そして元の暮らしに戻っていくが…。そこにあるあまりにも長かった空白の時と犯人の子供であるジャックへの蟠り。また、周りからの痛い視線に翻弄されていき、母の心が壊れていく。
しかし、子供はその点で柔軟に対応していく。最初こそ馴染めずに居たジャックも、次第に現実の暮らしに慣れ、母よりも早く溶け込み、それまでの自分から逞しく進み出ていく。
本作のテーマは、親子愛であると思う。母の台詞の中にあった「子供を愛せない親は、父親ではない」が、正に本作品の根幹を貫く台詞であると感じた。
主演のブリー・ラーソンは、アカデミー賞主演女優賞を獲得しただけあり、子供を懸命に守る迫真の演技は、鬼気迫るものもあった。それ以上に、ジェイコブ・トレンブレイの演技は、子供の演技を超えた素晴らしい役者ですね。母を思う意地らしい演技は、涙を誘う。
世界は広い
子育てはおろか結婚すらしたことがないが、
あんな狭い空間に閉じ込められ5年も子どもと2人だけで生活するなんて、想像するだけで精神が病みそう。
とりあえずハッピーエンドでよかった。
ふつうの生活を送ることができて幸せなはずなのに、[へや]に安心感を覚えてしまい戻りたがるジャックがもどかしかった。
生まれてからずっと生活してたところから
急に世界が広がりすぎて戸惑うのも無理はない。
最初は心を閉ざしていたジャックが徐々に周りと打ち解けていく様子が微笑ましかった。
最後のシーン、[へや]を訪れたジャックの「狭くなった?」という台詞が、ちゃんと外の世界の広さを知れたことを物語っていて安堵した。
きちんと[へや]の中のもの1つひとつにさよならを告げ、前に進もうとしているジャックの姿にグッと来た。
切ないのと感動と色んな気持ち
テーマがとても面白かったので見ましたが、大体テーマが面白い作品って最後残念な終わり方が多いので期待してませんでしたが、最後が完璧です。
息子が小さな身体で大きな出来事を必死で受け入れる姿がとてつもなく愛おしい。
子役良い!
七年間も狭い納屋で監禁された母親、犯人との5歳の子、たまに犯人が納屋にやってくる、外の世界を知らずに育つ息子との生活描写は想像を絶する。犯人を欺き脱出するまではドキドキ感があった。しかし、脱出した後の外の世界になれない姿はリアリティがあり、精神疾患がうまく描かれている。長髪で髪を切らなかった息子が自ら切ってと言うようになった瞬間が、祖母や周囲の環境に慣れ始めた瞬間で母親も自分がしっかりしなければならないと立ち直るきっかけとして描かれており感動した。子役がいい。
ルームから出た二人を待つのは…
7年間も部屋に閉じ込められるなんて…苦しい状況が続く中でも息子に辛い思いをさせないように、だけど現実を伝えなくては行けないという母の辛さ、早く脱出してくれとひたすら願う前半だった。
オールドニック、なんだあのmotherfucker😡
やっと脱出できたけど、苦しい状況は変わらない。失った7年間は大きすぎるからだ。他の人は普通に過ごせたのに、なんで私だけ…とてつもない傷を負った母を癒してくれる、力を与えてくれる息子に感動🥺ジェイコブ・トンブレイ君おそるべし!
過去と決別した、救いのあるラストで本当によかった😭
恐怖心
レンタルして視聴。特に理由はなくレンタルした。
前半に誘拐犯からの脱出は成し遂げ、その後の二人の様子まで描かれているため、前半と後半では映画の内容がガラッと変わった印象。ジャックにとっては、目に入る世界全てが全く新しく、母にとっての世界もまた、7年間で大きく変化しており、それぞれが世界に適応していこうと努める。
その適応していく様子を見る限りは、医者が言っていったように、「子供はプラスチックのように柔軟」であり、一方で母はなかなか世界に適応することができない。
その違いは、単に「子供はプラスチックの様に柔軟だから」なのか。そこについて少し考える。
ジャックは脱出後もむしろ「部屋」に戻りたがる。おそらくそこには「安心感」があったためだと思う。5歳になるまで外の世界のこともほとんど知らず、「部屋」での生活に、疑問感はあれど、特に恐怖は感じていなかったのかもしれない。
一方で、母にとっての「部屋」での7年間の暮らしは、恐怖・不安で溢れていただろう。子供を守るために精一杯だった。その暮らしを乗り越えることができたのも、ジャックという彼女にとっての「安心感」を与えるような存在があったからだと思う。
母の恐怖・不安は脱出後も続く。父・母は別居、父は自分の子供を見てくれず、マスコミに追われて辛辣な質問を浴びせられる。子供にしてきたことが間違いだったのかと更に不安にもなる。この恐怖や不安に勝てず、最後に母は自殺未遂をする。
この2人が世界に適応できるかどうか、それはその人が抱える不安や恐怖、安心感で大きく違ってくるのかもしれない。そういった意味では、母はジャックに嘘をつくことで、「部屋」や外の世界や誘拐犯への恐怖を与えないよう努めていた。この母の行動があったからこそ、ジャックは母より世界に適応できたのかもしれない。
人としてのあり方
何の前情報も入れずに観出したこともあって、冒頭から困惑する。これはどういう状況? この2人はなぜここにいるの? 不自然な生活にあって、あまりに自然に楽しそうに暮らす2人の様子に疑問が増す。しかし、徐々にその異常な環境が明らかになる。
環境が人を変えていく。そして、良くも悪くも、人はその環境に順応してしまう。部屋から解放された2人に待っていたのはシンプルな安寧ではなく、新たな世界に順応するための痛みだった。
ブリー・ラーソンと、何よりも子役のジェイコブ・トレンブレイの演技に引きつけられる。
暴力を跳ね返したパワフルな母と息子の物語
ストーリーは
オハイオ州アクロン
ジョイは高校生、17歳のときに、男に誘拐され、厳重にロックされた物置小屋に監禁されている。逃げようとするたびにドアや鍵が厳重になり、どうしても逃げることができなかった。すでに7年経ってジョイも24歳になった。誘拐監禁されレイプされて妊娠し、息子ジャックを産んで5年になる。今も週に1度、食料を持って通ってくる誘拐犯オールドニックの粗暴な扱いに耐え、大切な息子と二人で小さな部屋に閉じ込められながらも、息子の成長を励みにして生きてきた。息子は、生まれてから3.4メートル四方の、ここ小屋から一歩も外に出たことがない。オールドニックが通ってくるときは、母親から離れて戸棚になかで小さくなって眠る。隠れていないと子供嫌いのオールドニックから暴力を振るわれる。母親のジョイが体を張って守ってくれるが、暴力的な男をジャックは何よりも怖がっている。
母親のジョイはいつも限りなく優しい。ジャックは目が覚めれば、おはよう椅子さん、おはよう机さん、おはよう戸棚さんと挨拶して、ジョイと一緒にトーストか、シリアルを食べ、部屋の中を走り回り、ちょっとした運動をしてからテレビを見る。夜は母親と一緒にお風呂に入り眠る。それだけの生活を5年間してきた。ジャックは母親に甘えたくなると、5歳になってもまだ母親にしがみついて、おっぱいをしゃぶる。ジョイはいろいろなことを教えてくれる。テレビの中の世界は、うその世界なのだという。木の葉も、お日様もお話に出てくるおじいさんもおばあさんも、みな嘘の世界。本当の世界は、ジョイとジャックだけの世界だという。
5歳の誕生日がきた。母子は一緒にバースデイケーキを作った。オーブンはないから、小さなお鍋で。でもテレビに出てくるようなキャンドルがケーキの上に立っていない。ジャックがすねると、ジョイはとても怒った。もう5歳なのだから、本当の世界を知らなければならない、と母親は言う。この部屋での生活は本当は偽りの世界で、テレビの世界は本物だ、とジョイは今までと反対のことを言う。ジャックは今までの母親との生活が楽しいのに、急に本当の生活に戻らなければいけない、と言われても混乱するばかり。本当の生活って何? 今になって母親は、急に怖い顔で、自分はオールドジャックに騙されて、この部屋に閉じ込められている、という。本当の世界に戻るためにこの部屋から脱出しなければならない、と説明する。ジャックは怖くて仕方がない。
母親はジャックが高熱を出したので病院に連れていって欲しい、とオールドニックに嘘を言う。1週間後オールドニックが来たときは、ジャックを絨毯で巻いて、ジャックは死んだので処分するように、と言って絨毯を引き渡す。あわてたオールドニックは、絨毯ごとジャックをピックアップトラックの荷台に乗せて家を出る。
ジャックにとって生まれて初めての冷たい風、緑の木々、陽に照らされる木の葉、車の荷台で絨毯から這い出たジャックは、外の景色に見惚れる。そして母親に言われたとおりに車がスピードを落とした時に、荷台から飛び降りる。しかし狭い部屋しか知らないジャックには、平衡感覚が育っていないので走ることができない。とたんに転んで動けなくなる。運よく大型犬を連れた男の人が目の前にいる。ジャックはオールドニックにつかまって、連れ去られそうになって、必死で助けを呼ぶ。犬を連れた男に呼び止められて、オールドニックは車で逃げる。そして警官が駆けつけて、ジャックは保護される。感の良い婦人警官がジャックからわずかな言葉を、上手に引き出したために、オールドニックは逮捕され、母親のジョイは小屋から助け出される。
病院で数日過ごした母子は、両親の迎えを待って帰宅する。7年間もの長い間誘拐監禁され誘拐犯と暮らし、その子供まで生んでいたもと高校生。好奇の目を輝かせながら押し掛けるメデイア。ジョイは親たちに守られながら自宅に戻る。ジョイの母親ナンシーは、ジョイの部屋をそのままにしておいて待っていてくれた。
しかし父親は、孫にあたるジャックの顔を見ようとしない。憎い誘拐犯の血が流れている子供を見たくない、という父親の言葉にジョイは深く傷つく。その父親は母のナンシーと離婚していて、母親にはレイという新しいパートナーがいた。やがて、家の前で待ち構えていたメデイアも引き上げた。母親ナンシーとレイと、ジョイとジャックとの生活が始まる。
ジョイは落ち着いたところで弁護士の勧めもあって、1社だけメデイアのインタビューに応じることになった。しかし、インタビュアーに「どういう気持ちで誘拐犯の子供を産んだの?」と聞かれ「子供のためを思えば、どうして子供だけ病院にでも置いてくるように、犯人に頼まなかったの?」「あなたは子供のことで正しい判断をしたの?」と問い詰められて、ジョイは深く傷つく。監禁され日々の暴力に怯え、子供を産んだ高校生に対して、「良識ある」質問者らは、どんな倫理的な判断を求めているのだろうか。ジョイは薬を飲む。ジャックが発見しなかったら、生きてはいなかった。
ジョイは病院に送られる。7年間の過去からフラッシュバックされてくる記憶に耐えられない。精神が壊れてしまった。
ジャックは生まれてから一度も切らないでいた長い髪を切るように、祖母のナンシーに頼む。髪はパワーだと母親に言われて育った。いまパワーを失った母親ジョイに、自分のパワーの源の髪をあげて、母親を元気付けたい。祖母ナンシーはジャックの髪を切り、入院中のジョイに届けた。母親がいないジャックのために義祖父のレイが犬を連れてきてくれた。ジャックは母親以外の人に初めて心を開いていく。「グランドママ、アイ ラブ ユー。」そういわれ、祖母ナンシーは涙にくれる。ジョイは退院して家に帰ってきた。
ジャックはジョイに、二人だけの思い出の部屋、自分が生まれて育った小屋に帰りたい、という。二人は警官に付き添われて、7年間監禁されていた小屋を訪れる。ジャックは部屋の小ささに驚く。縮んじゃったの? もうここは自分の部屋ではない。そして、毎朝おはよう、毎晩おやすみと声をかけていた、家具のひとつひとつに、さよなら椅子さん、さよなら机さん、さよなら戸棚さん、と別れを告げて小屋を出る。
というストーリー
実際にオーストリアで起きた「フリッソル事件」を書いたエマ ドナヒューの「ROOM」が原作。母親のジョイを演じたブリー ラーソンがアカデミー賞主演女優賞を受賞した。彼女の諦め、悔い、怒り、憤怒、嘆き、悲しみが、じかに伝わってくる熱演だ。それと、カナダ人、5歳のジャックの名演には恐れ入るばかりだ。まだセリフを覚える年齢ではないため。ワンシーンワンシーン監督が説明して、演じたものを撮影しつなぎ合せたという。実の親子のような二人の演技は演技と思えない。天才子役そのものだ。この映画、母子二人の結びつきがテーマになっている。
子供にとっては、与えられた世界が唯一の世界だ。どんな場所にいても親はそれがどんなところであっても生活し、日々の暮らしのために努力を惜しまない。ジャックにとって、3.4メートル四方の部屋が子供にとって唯一で、世界のすべてだった。そこで7年間正気を保ち、子供のために二人で濃厚な時間を作ってきたジョイは、素晴らしく立派な母親だ。普通だったら7年間、正気でいることができなかっただろう。彼女の精神力の強さを、理解しようともせず「教養あるエリートインタビュアー」が、「子供の将来」を語り質問する愚かしさ。それはアボリジニー先住民族の子供たちを親から無理に引き離し、白人社会で教育、調教をして得意になっていた先進国の愚か者と同じだ。本当に子供たちに必要なのは、アルファベットが人より早く読めるようになることでは断じてない。そのように子供の時から「調教「」された子供は人として育たない。生まれた時から母親に可能な限り抱きしめられ、愛された子供でないと他人を愛し人としての情感をもった人に育たない。アルファベットはそのあとだ。ジョイは正しい子育てをしたのだ。
ジャックは、たった5歳にして唯一無二の母親を理解し、オールドニックという悪者を憎み、正しい人に助けを求めることができた。そして母親を励ますために、髪を切り、自分のパワーをすべて母親のために差し出した。そうした過程を経て、母親だけでなく祖母や祖父を愛することができるようになった。ジャックの心は、3.4メートル四方の世界から、ずっと大きな世界に開かれている。ジャックの心の成長が手に取るようにわかる。ROOMを出てからのジャックの成長が感動的だ。
狭い部屋で生まれ、5歳まで育ったので本当の太陽の光がまぶしくてよく見えない。車から飛び降りて逃げたいが、平衡感覚が育っていないので走れない。男たちの怒号、犬の吠え声、周囲の騒音が激しすぎて転がったまま動けない、初めて連れていかれた家で、生まれて初めての階段が怖くて足を乗せられない。そんなジャックの姿が痛ましい。
無力な女子供が、男の暴力支配によって、酷い目にあうということがこの世で一番許せない。女子供はもっと怒らなければならない。男はもともと体格が良く、堅固な骨格を持ち、筋肉が発達して生まれてきた。それは構造的、物理的な差異であって、女子供との違いは、オツムの違いでもなければ、頭脳の重さでも、感性の違いでも、才能の違いでもない。オーストラリアでは週に一人の女性がパートナーの暴力によって殺されている。日本はもっと酷いそうだ。男が、物理的に自分よりも弱い他人の人生をないがしろにし命を奪うのは簡単だが、それをしないでいるためには、女子供にも自分と同じだけの「人権」があることを、しっかりわからなければいけない。
昔に比べて少しは良くなっていると信じたい。誘拐されそうになっても、子供たちには護身用ベルや携帯電話があり、情報も広がり人々の目も行き渡るようになってきた。虐げられた者が訴える法も少しは整備されてきている。このような暴力によって力のないものが被害にあうような事件が減ってきていると思いたい。ジャックのような子供が、もう出ないと思いたい。
この映画、誘拐されてひどい目にあった、可哀そうな高校生の話ではない。暴力を自分の叡知ではねのけた、立派な女性のお話だ。パワフルな母親と息子との愛情物語だ。しっかり結び合った母と子供との愛の物語だ。だからとても感動的だ。
【捕らわれた部屋でママ/ジョイを支えた、ジャックの無垢な姿に涙溢れる】
オーストリアでの監禁事件を描いたエマ・ドナヒューの「部屋」が原作だそうだ。
このような事件は数々明らかになっているが、憂鬱な気分になる。が、希望ある映画である筈と思い、鑑賞。
今作の第1章「インサイド」の前半は、捕らわれた母子の得意な限られた空間での日常が描かれる。
ママ/ジョイ(ブリー・ラーソン)は幼子ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)のたった二人の限られた空間(3.3メートル四方の分厚いガラスが天井に嵌められた部屋)で生活する姿が”少し楽し気に”描かれる。
が、時折現れる、”オールド・ニック”の存在にジャックが違和感を覚える様子をジェイコブ・トレンブレイ君(髪が長い)が絶妙に演じる。
物語は第1章の後半、手に汗握る二人の”部屋”からの脱出劇の後の姿を描く第2章「アウトサイド」に引き継がれる。
今作が秀逸なのは、閉塞した空間から脱出した親子を描いて”ハッピーエンド”で終わらない所であることは間違いない。
世間の興味が二人に注がれる中、ママ/ジョイの(監禁中離婚していた)両親のジャックへの接し方が両極端なのも、観ていて切ない。
ママ/ジョイの父:じいじ/ロバートのジャックは可愛いのだが、誘拐犯である父親を思い出し、素直に愛情を示せない場面や、ママ/ジョイの母:ばあば/ナンシーと彼女の新たな連れ合いレオが親身になってジャックと接する姿には涙を禁じ得ない。
あのような衝撃的な事件を受け入れるのに血縁があるほうが阻害になるのかどうかは観客の判断に委ねられるが、何とも切ない。
<ラスト場面でのジャックの”この部屋、縮んじゃったの?こんなに狭かった?”という言葉に涙が溢れた作品>
<2016年4月9日 劇場にて鑑賞>
ええやん!
親と子が「広い世界」と「狭い世界」の現実に葛藤していくというストーリー。
慣れ親しみつつも、疑問や不満が多い「狭い世界」で育ってきた親子が、理想と欺瞞に満ちた「広い世界」の中を少しずつ順応しながら、強く生きていく。そんな映画でした。
子は当然環境や親を選べないが、親は親で環境や子を選べない。(この作品において親の環境を選べない感は若干強すぎかな?って感じだが笑)
あるシーンの子による「ママはママ」という発言は、いくら自分を裏切った「広い世界」のママであっても…感は素晴らしかったです。ママもそれに対して「はっ!」としていた感じが素晴らしい。
さらに最後のシーンの「狭い世界」は大切だし、切っても切れない。だけど、それに縛られず前を向いて行こうみたいな感じとかも最高に素敵でした。
総括すると、様々なモノや人や価値が存在する「広い世界」にないものが親子の「狭い世界」にはあって、それは掛け替えのない素敵なものであるということに気づかされる映画だった。ということ。
絶対的価値観の複雑性を学べる映画でした。
・誕生日にろうそくがなくて拗ねたり、5歳だから本当のことを教える母...
・誕生日にろうそくがなくて拗ねたり、5歳だから本当のことを教える母の話を拒絶するジャックの演技、台詞が素晴らしい
・トラックの荷台で起き上がるジャックをミラーで確認しないまま走り続けるところに少し違和感
・本当は女の子でそれが分かると子供まで犯されるから男の子のフリをさせてるんだと思った
・警察に保護された後、警察官からの質問で、母の名前や誘拐、監禁、などの単語が一切出てこない5歳児らしさ、周到すぎなさが良かった
・7年間監禁されレイプされ続けた娘に「人生が狂ったのはあなただけだと思ってるの?」って台詞はあまりに酷すぎて信じがたかった。
・存在しない犬の心配をした結果監禁されるに至った娘を前に、笑顔で犬を飼っていることを話し、少なくとも映画では相談のシーンなど一切なく、普通に飼い続けることに配慮のなさを感じざるを得なかった。
・父親の態度が世間と同じでかなりショッキングだったけど、実際多分にあり得る設定で、綺麗事ばかりを並べるのではないところが良かった
・「産まれたての子供を病院前に置いてきてもらうように頼めば良かったのでは?少なくともそうすればジャックは普通に過ごせた。あなたの選択はベストだった?」の質問は、あまりに無慈悲で、ばあばや医師がそれを支えるシーンもなく、えぐみが深かった。
・母親の自殺未遂現場に遭遇したときのジャックの演技が素晴らしかった
起承転結ザムービー
脱走するまでの前半部分がこの映画の全てという思い込みがあったので、後半の脱走後解放後のストーリーがグッときた。しかも、多分後半がこの映画の伝えたいポイントなんだと思った。
紆余曲折あり、犯人との間の子供という確信的な名言はしないものの、それによっておかしくなってしまった本人たちとその家族。
祖父祖母もいてもたってもいられないマインドや、周辺の描き方が秀逸だった。
おそらく母が監禁されている最中に世の中はスマホ世代になって、自分の幼少期と全く違う生活を過ごす人たちとのギャップに戸惑うこと。
人間ドラマだなと思った。面白かった。
いい映画
アマゾン・プライムでみました
いい映画です
最初めちゃくちゃハートウォーミングな映画かなと思って見たんですが、内容は結構やばくて、色んな意味で裏切られました。
決してリラックスして見れるような内容ではありませんが、いい映画だとは思いました。
結構ハラハラすると思います。
2回見たいかというと心臓がもたないのでないかな。
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