劇場公開日 2016年10月28日

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ザ・ギフト : 映画評論・批評

2016年10月18日更新

2016年10月28日よりTOHOシネマズ新宿ほかにてロードショー

真綿で首を絞め、真綿に針を包む恐怖を紡いだ曲者俳優の監督デビュー作

アニマル・キングダム」「ウォーリアー」などで頭角を現し、その後は神出鬼没の怪人のごとくハリウッド内外の多彩な映画で確かな存在感を放ってきたジョエル・エドガートンジェフ・ニコルズ監督と立て続けに組んだ近作「Midnight Special」「Loving」の公開も待たれるこのオーストラリア人の曲者俳優は、強面でどことなく無骨な雰囲気の持ち主だが、彼の監督デビュー作は極めて洗練された繊細なスリラー映画だった。

オープニングで映し出されるのは、若い夫婦サイモンとロビンが引っ越してきたカリフォルニア州郊外の丘の上の一軒家。ゆったりとした間取りで庭には池があり、緑豊かな風景を一望できるその家は、すでに経済的に成功している夫婦の自尊心を満たし、幸福な未来を約束するかのよう。しかし、どこもかしこもガラス張りの作りゆえに外からリビングやキッチンが丸見えで、プライバシーの面ではいささか心許ない。そう、まさしく本作は一見何もかも順風満帆の夫婦の日常が崩壊していく過程を、いつの間にか過剰な負荷によってヒビが入り、もろくもガシャンと砕け散るガラスのように描いた恐怖映画なのだ。

物語の発端は、サイモンがある過去の因縁で結ばれたゴードという高校時代の同級生と偶然再会したこと。それを喜んだゴードは何度も引越祝い&再会祝いの“贈り物”を届けにサイモンの新居にやってくるのだが、ゴード役のエドガートンの怪しげな姿をガラス越しに目撃するたびに不穏な予兆に襲われる。その予感は的中し、おそらく観客は3つめの“贈り物”あたりでゾクリと背筋が寒くなるだろう。「真綿で首を絞める」と同時に「真綿に針を包む」サスペンス演出が実に巧妙で嫌らしい。

いかにもお人好しそうでコミカルな演技も得意なジェイソン・ベイトマンをサイモン役に配し、加害者と被害者の立場を逆転させていくエドガートンのオリジナル脚本もうまい。汚い手を使ってでも会社での出世競争を勝ち抜こうとするサイモンは、いわば過去を振り返らない男。対するゴードは、そのどす黒い過去からの訪問者だ。そんな男たちの隠された真意や本性が露わになっていくドラマには、そんじょそこらのスリラーにはない厚みがある。

さらなるエドガートン監督のお手柄は、2人の男の因縁に疑心を募らせるヒロイン役レベッカ・ホールの存在を重視し、観客の目線も担う彼女をさりげなく危うげに、色っぽく撮ってみせたこと。無防備なガラス張りのシャワーブースを活用したショック演出には本気でビビリました。

高橋諭治

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