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卒業写真、第四部。シリーズ通しての最終話となる本作。キャッチコピーは「いつか想い出になっていく、だけど消えたりしないよ、ずっとずっとね。」シリーズ一作目のOVAのキャッチコピーに「ずっと」を重ねただけのコピー。これがこの物語のすべて。
前作のラストシーン、憧憬の路で親友の胸にすがって気持ちを吐露したシーンから、静かに物語は始まります。隠し騙してきた気持ちに気付いた楓は歩き出します。もう躊躇することなく自分の気持ちに前向きに・・・周りの家族友人知人も応援してくれ、友人達と共にそれぞれの進む道を歩き出します。
今回、意図的に弟をほとんど映さないようにしているのは母親とのつながり、気持ちの共有を描きたかった故だろう。丁寧に楓の心と母親珠恵の心を描いていきます。シリーズ通してほとんど描かれなかった母親の父親を亡くした娘への気持ちが描かれています。CVの緒方恵美さんの落ち着いた優しい声が、母親の揺れる気持ちを丁寧に紡ぎます。このシーンはちょっと油断してたトコロにカットインされるので思わず涙腺が刺激されてしまいました。それをフォローする祖母(CV松尾佳子)の優しい声にまた涙します。
そしてゆっくりと丁寧に高校最後の冬から春へが淡々と描かれていきます。おそらく意識的に泣くシーンを排除して作られているように感じました。事実、鑑賞一回目はほとんど涙が出ませんでした。二回目はシーンがわかっているので泣いたシーンがかなりありましたが・・・
朝日山から竹原を見下ろすシーンでのともちゃんの台詞に、みんなが抱いている漠然とした不安にいきなり向き合わされ狼狽しますが、さよみお姉ちゃんの優しい一言で救われます。
ラスト、卒業式のシーンから上京、新生活へは怒濤のように、でもあくまで丁寧に描かれます。
観終わったあと、ものすごくやさしくてあったかい気持ちに包み込まれます。これで尺、一時間無いとはとても信じられない。ものすごく丁寧に作られた作品です。
たまゆらーとしての願いはスピンオフや続編は一切作らないで欲しい。この作品はこれでおしまいにして欲しい。と、思った。