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■韓国が金融経済危機に陥った翌年、1998年の不況に苦しむ韓国の漁村。
小さくて、オンボロ漁船チョンジン号のカン船長(キム・ユンソク)は金に困り、中国から朝鮮族を密航させる仕事を引き受ける。
夜の海上で、闇に紛れて中国船から多数の密航者を乗り移らせるが、監視船に遭遇して慌て船員たちは密航者たちを、魚を入れる船底に入れるがボロ船のためにフロンガスが漏れて皆、死亡する。
只一人、新人乗組員 ドンシク(パク・ユチョン)が、惹かれて機関室に匿っていたホンメ(
ハン・イェリ)を除いて・・。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・何とも、シニカルな作品である。カン船長を始め5人の乗組員は、お金が欲しくて軽い気持ちで中国から朝鮮族を密航させる仕事を引き受ける様子が、序盤にややコミカルタッチで描かれる。
・だが、その様相が一変するのが、密航者がガス中毒で死亡するシーンからである。カン船長は証拠隠滅のために、死体を切り刻んで海に投げ込むように指示するし、良心の呵責に耐えかねたワノ機関長 は、燃やされていた密航者たちの所持品を取り出して、詫びるのである。
・カン船長は、そんなワノ機関長を背後から殴り殺し、船員たちは一人生き残ったホンメを求めて争いを始める。
一人冷静だったホヨン甲板長 (キム・サンホ)は、新人乗組員 ドンシクと争った時に、船内の突起が首に刺さり、絶命する。
■この辺りの、船員たちの狂気性が序盤の比較的コミカルな展開から、ガラリと変わる展開が、人間の業を見せつけられるようである。
そして、新人乗組員 ドンシクは、ホンメと共に海に飛び込むのである。
一方、オンボロ漁船は浸水し、カン船長は自らの船と共に、海に沈んで行くのである。
<そして、ある海岸に打ち上げられたドンシクとホンメ。ホンメはドンシクが生きて居る事を確かめ、一人海岸を何処かに歩いて行くのである。
このシーンの見せ方が巧い。ホンメの残した砂浜の足跡。
そして、6年が経ち、ドンシクは街中の食堂で、幼子二人を連れたホンメを見つけるが、声は掛けない。そして、暗転。
今作は、不況に苦しむ韓国の漁村で穏やかに暮らしていた、5人の船員たちの数奇な運命をシニカルな要素を絡めて描いたホラータッチの作品である。>