ネタバレ! クリックして本文を読む
まあ、作家性なのだろうが、これほど観客に不親切で思わせぶりな映画は稀ですね、セリフは紋切り調だし、撮影も暗がりばかりだったり、顔のアップの多用や手持ちカメラでの不安定な構図などいらいらさせられる。
おそらく、この監督は観客を戸惑わせることがサスペンス映画だと曲解しているのでしょう。
何とも解りにくいストーリーなので老婆心からネタバレ説明。
舞台はイタリアとスロバキアの国境沿いの小さな村、冒頭、1994年の難民の様子が描かれる、これは劇中で出てきたボスニアの古都モスタルの橋に象徴されるボスニア・ヘルツェゴビナ紛争によるボスニアの難民だと示される。この村は辺鄙な地理的条件もあって現代でも難民の東欧への格好の抜け道らしい、難民を人身売買の商売にしているマフィアも巣食っている。
冒頭の難民迫害から20年後、村の山頂にあるダムの発電機の修理にやってきた青年ピエトロとそれを援助する村の老人ロレンツォと腹違いの兄セコンドに国境付近の殺人事件を追う捜査官ラナが絡んで先が読めない混沌とした展開がしばらく続きます。
訳が分からないのはラナの役割、人物像の説明係?、捜査官としては役立たずで熊に餌やりって何だろう?、ピエトロとのエッチシーンは唐突で面食らった、あまりに陰気で華の無い映画なのでノーチェ監督、イタリア人の血が騒いだのかとも思えます。
ネタバレしてしまえばピエトロは20年前の少年で家族を殺された復讐にやってきたということで、やきもきさせられた割には単純な落としどころ。ただ、仇役はイタリア人ではなく同じボスニア人だったらしい、国を逃れても紛争の火種もまた持ち込まれてしまうというのは皮肉ですね。
一応、社会派サスペンスの趣は感じさせますが、難民を喰いものにする非道の連中こそ成敗されて当然とも思えるが問題性をほのめかすだけで強いメッセージ性は感じませんでした。