はじまりへの旅
劇場公開日 2017年4月1日
解説
ビゴ・モーテンセンが大家族の父親役を演じ、森で暮らす風変わりな一家が旅に出たことから巻き起こる騒動を描いたロードムービー。現代社会から切り離されたアメリカ北西部の森で、独自の教育方針に基づいて6人の子どもを育てる父親ベン・キャッシュ。厳格な父の指導のおかげで子どもたちは皆アスリート並みの体力を持ち、6カ国語を操ることができた。さらに18歳の長男は、受験した名門大学すべてに合格する。ところがある日、入院中の母レスリーが亡くなってしまう。一家は葬儀に出席するため、そして母のある願いをかなえるため、2400キロ離れたニューメキシコを目指して旅に出る。世間知らずな子どもたちは、生まれて初めて経験する現代社会とのギャップに戸惑いながらも、自分らしさを失わずに生きようとするが……。監督は「アメリカン・サイコ」などの俳優で、「あるふたりの情事、28の部屋」で監督としても高く評価されたマット・ロス。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の監督賞をはじめ、世界各地で数々の映画賞を受賞した。
2016年製作/119分/PG12/アメリカ
原題:Captain Fantastic
配給:松竹
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主人公一家は亡き妻のために彼女の好きだった曲を演奏して捧げる。この一家は知的レベルも身体能力も並外れているが、アコギとカホン、そしてボーカルのハーモニーで奏でられるこの演奏シーンが本当に素晴らしい。
曲はガンズ・アンド・ローゼスの「Sweet Child O' Mine」。無垢なるものの喪失感と憧れを歌い上げる詞はこの映画のラストにぴったりではあるが、それ以上にこの選曲が大きな役割を果たす。
世代が違うとピンとこないかも知れないが、ガンズは劇中のアコースティックな演奏とは真逆の、ゴリゴリの不良を売りにしたハードロックバンドであり、その年を象徴するメガヒット曲でもあった。
知的な夫婦だったのだと思う。その一方でヒットチャートを素直に楽しむような、斜に構えたところのない人だったのだなと、この一曲が教えてくれた気がしてならず、今年の選曲賞というものがあるのならこの映画が獲って欲しいと思う。
2017年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
森の中で自給自足生活を送る父親と子供たち。趣味のキャンピングではない。ボーイスカウトの活動でも、何かの訓練でもない。宗教絡みでは勿論ない。いや、もしかして、それは父親のそんな生き方に従えるか、従えないかという二者択一を子供たちに迫る、ある意味、宗教、もしくは価値観についての物語かも知れない。訳あって森に籠もり、文明を頑なに拒絶して生きる父は、だから子供たちにとっては人生の"キャプテン・ファンタスティック"。かつてはヒッピーと呼ばれたその価値観が失われつつある父権と結びついた時、観る側の心が不思議な懐かしさで満ちるのはそのためだ。そして、ヴィゴ・モーテンセン。21世紀の心優しく挫けやすいヒッピーパパを演じるなら、彼以外には思い浮かばないではないか!?
2017年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
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これほど奇想天外なストーリーを一体どうやって着想したのだろう。世間の常識から隔絶されたこの変わり者一家の揺るぎない哲学、思想、そして常に自然の中でサバイバルする姿勢に爆笑しながらも、いつしか熱いものがこみ上げてくるほど圧倒される。そして、これほど突き抜けた生き方を実践する彼らが、言いようのない悲しみに襲われた時、その悲しみにさえ家族みんなで果敢に立ち向かっていく姿のなんと力強いことか。
走り出したバスは止まらない。その旅路はこれまで森で学び続けてきたことの実践編であり、一瞬一瞬がとても尊いものとして記憶されていく。また、これは子供たちのみならず、父親にとっても大いなる学びの旅と言えるのだろう。
ヴィゴ・モーテンセンの透徹した存在感もさることながら、子供たちはまさにそれぞれが楽器のように感受性の音色を鳴らし、魅力的に個性を響かせあう。ヨンシーらの歌声響く楽曲群との相性も素晴らしく、この至福のひと時がずっとずっと続いて欲しいと感じさせるほどだった。
とても面白かった!
子沢山で厳しくも愛情深い父親と、社会性は無いが鍛え抜かれた精神と肉体を持つ子供たち。山の中で生きる彼らが母親の葬儀のために下山し、旅を通じて実社会と関わり合っていくという話。
色彩がとてもカラフルで、情景がとても美しくて、印象に残る映像が多くあった。とくに最後の母親を火葬するシーン。歌って踊って輪になって、悲しさを微塵も感じさせない、美しいラストシーンだった。
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