きっと、星のせいじゃない。 : 映画評論・批評
2015年2月9日更新
2015年2月20日よりTOHOシネマズ日本橋ほかにてロードショー
難病モノだけどお涙頂戴じゃない、誠実な青春ラブストーリー
いわゆるお涙頂戴の難病映画を挙げると、洋画なら「ある愛の詩」、邦画なら「世界の中心で、愛をさけぶ」あたりが代表格。でも近年は、難病や重度の障害を扱いながらも、シリアスになりすぎず感傷におぼれず、個性的な登場人物たちをユーモアも交えて描く快作が増えてきた。ガンで余命宣告を受けたジョセフ・ゴードン=レビットを悪友セス・ローゲンが励ます「50/50 フィフティ・フィフティ」、パーキンソン病を患うアン・ハサウェイが新薬セールスマンのジェイク・ギレンホールと恋をする「ラブ&ドラッグ」、事故でほぼ全身まひの富豪と介護役の黒人青年が友情を築く「最強のふたり」などが記憶に新しい。その系譜に、新進女優シャイリーン・ウッドリー主演の「きっと、星のせいじゃない。」も加えることができるだろう。
ウッドリーが演じる16歳の少女ヘイゼルは、甲状腺ガンが肺に転移して酸素ボンベを手放せない。ガン患者の集会で、骨肉腫で片脚を切断した青年ガス(アンセル・エルゴート)に出会い、互いにひかれあう。ストレートに気持ちを伝えるガスに対し、自分を「いつ爆発するか分からない手榴弾」に例えて、深い関係になることを恐れるヘイゼル。ウッドリーは目や表情の繊細な演技で、出会いに高揚し、相手を想い、周りを傷つけることに苦悩するといった、誰もが経験する感情を説得力十分に表現している。
慈善団体の援助により、ヘイゼルとガスはお気に入りの小説家(ウィレム・デフォー)に会いにオランダへ旅立つ。ここから2人を待ち受ける展開が圧巻だ。希望、試練、運命、そしてもちろん、愛。ジョン・グリーンによる全米ベストセラー小説「さよならを待つふたりのために」(岩波書店刊)を原作に、「(500)日のサマー」を手がけたスコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバーが脚本を効果的に構成。「Stuck in Love」(2012年、日本未公開)で長編デビューした新鋭ジョシュ・ブーン監督が、感情に寄り添う自然な演出で見事に映像化した。
人生の時間は――若い頃は特に――無限に続くかのように錯覚してしまうもの。しかし死は必ずすべての人に訪れる。限りある生の一瞬一瞬を、いかに価値あるものにして積み重ねることができるか。難病の若いカップルのストーリーを通じて、普遍的な人生の問いかけと温かいメッセージを語りかけてくる誠実な作品だ。
(高森郁哉)