ディザスター•ムービー、パニック映画というたぐい、実はあまり好みではありません。派手で、うるさくて、大仰なのは苦手です。なぜか眠くなります。クリスマス•イブに起こった超高層ビル火災を描いた本作も、さほど食指が動いたわけではなかったものの…ちょうど今日はイブ、手頃な時間にやってるし…と観てみることにしました。…と。これが、本当におもしろかったのです! 偏見でした、ごめんなさい!と思うくらいに。 今年最後の拾い物?とほくほくしました。
では、ちまたにあふれる同類と何が違うんだろう?と考えてみたところ…まず第一に、災害の猛威を見せつけない。凄いだろー、と特撮をひけらかさないところかと。前段で火災発生から大惨事に至るさまを一気に描き、あとはもう想像するだけで十二分に恐ろしい…の迫力。中でも、密室化したエレベーターが火に包まれ、オーブン状態になるシーンは身の毛がよだちました。靴底が粘り、煙が立ち込め、ジュージューと焼け焦げる音…まさに悪夢でした。
そして、災害描写にまさる、骨太な人間ドラマ。まじめな警備チーフ、可憐なフロアマネージャー、熱血の消防隊長と個性的な仲間たち…韓国映画ではおなじみの俳優さんたちが続々と登場。役のイメージにピタリとはまり、生き生きと動きます。ヒーロー不在の状況下、非力な人間たちが必死に危機を乗り越えようとする姿に、いつしか胸が熱くなりました。さらには、緊張をやわらげるためと思われたコミカルなシーンが、後半に至って手に汗握り、涙を振り絞る起爆装置だったと気付かされ…悶絶しつつも唸らされました。
また、(日本の某人気シリーズのように)憎たらしい人物が危機を経て改心したり、閉じ込められた人々が生還したらやりたいことをしんみり語り合ったりしない点も、個人的にはポイント高かったです。人は容易に変わらないし、語っている余裕はないはず。緩みなしでドライに突き進むところにグイグイ惹かれました。
そして、文字通りの息詰まる展開。 ありがちな(ときに興ざめの)絶叫や煽る音楽はほとんどなし。じわじわと迫る炎と煙、足元に広がっていく亀裂、刻一刻と過ぎゆく限りある時間…観る側さえ息を潜めずにはいられない緊迫感! これが2時間途絶えない、というのは特筆ものだと思います。
観終えてぐったり、心地よい疲労感。…これはやっぱり大画面で、です。