王将(1948)

劇場公開日:

解説

これは47年度新國劇が上演して好評を博した北条秀司原作の戯曲によるもの「木曽の天狗」「Zの戦慄」と同じく奥田久司の企画「素浪人罷通る」の伊藤大輔が脚本を書き監督する。カメラは石本秀雄の担当。「素浪人罷通る」「木曽の天狗」の阪東妻三郎の主演で、相手役には松竹より「駒鳥夫人」「肖像」の水戸光子が出演、多摩川より三條美紀、民藝の滝沢修、ほかに三島雅夫、小杉勇、斎藤達雄らが出演する。

1948年製作/94分/日本
原題または英題:The Chess Master
配給:大映
劇場公開日:1948年10月18日

ストーリー

時は明治も終わりごろ、大阪は天王寺付近、がけ下の長屋住まいで麻裏草履をこしらえてその日暮らしのしがない稼業、これが坂田三吉という男で、将棋が三度の飯より好き、好きこそものの上手なれで、玄人はだしの腕前、手合わせする者は素人も有段者も相手構わぬナデ切り、負けたためしがないという、勝てばそのやまいがますますこうずるのは当たり前、やれ春季大会のそれ何々主催の将棋会のとあちらこちらに手を出した挙句、家業はおろそかになる収入は減る、おまけに会費などと余計な出費で倍金はかさむ一方、家財道具は持出す、狭い長屋の一室は空っぽという有様、女房の小春は青息吐息、何度亭主に意見したか知れぬが三吉はあらためるどころの沙汰ではなく、関根七段との千日手の一局で、その執念は恐ろしいばかり、小春は娘の玉江を連れて家出した事も一度や二度ではない、その度に自分のいなくなった後、子供の様に愚かな三吉がどんなになるだろうと心配してはもどって来るこころ優しい小春であった。しかし今日も今日とて朝日新聞主催の将棋大会に、会費の二円を工面するに事欠いて、玉江の一張羅の晴衣を質に置いて出掛けた始末の三吉。小春はそれを知り今はこれまでと、娘をつれて自殺を計る可く鉄道線路の方に出ていった。勝負半ば注進に驚いた三吉が駒を放り出して飛んで帰り、長屋の皆とやっとの事、小春母子の生命をとりとめ以後はすっぽり将棋をやめると誓うが、反って小春はその必死の気組みに心変わり、いっそやるなら日本一の将棋差しになれと励ました、折も折関根八段が来阪し、三吉と平合わせた。相方ゆずらぬ熱戦の後、終盤近く三吉の打込んだ窮余の一手二五銀が命取り、関根七段は敗退する。それ以来何年、十何年、大正に入り三吉と関根は追いつ追われつ、三吉が次第に勝越す。坂田三吉の名は天下にとどろいた。当時無学非識字者の三吉も既に長年の芸の修練で人間的にも完成されつつあった。関根は八段となり三吉は七段。名人位をかけた一戦も三吉の勝とはなったが、丁度病床にふしていた小春の積年の望みも空しく名人位は関根八段に冠せられた。その祝詞をのぶべく小春に内緒で上京した三吉は、関根名人との会見の席上、自分をここまで仕立ててくれた最愛の妻小春のふ報を聞かねばならなかった--。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0ジャケ借りしたら意外とおもろかった。

Nさん
2021年12月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ジャケ借りしたら意外とおもろかった。

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N

4.0将棋指し+夫婦愛の映画 → 案外泣ける

2021年4月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

あらすじ、及び、感想
1.以前から観たいと思っていた → 観たら、案外良かった
2.三吉は、素人将棋大会に出るため、仏壇を売ったり、娘の晴れ着を売ったり
3.娘:玉江は、母親に、「父は将棋道楽ではなく、将棋極道」と伝 → 笑える
4.妻:小春は、夫:三吉に、①好きな将棋を辞めと言うのは無理や
  ②その代わり、指すからには日本一になって欲しいと伝 → 泣ける
5.三吉が関根8段と対局時、苦し紛れの2五銀打 → 関根が嵌って三吉の勝利
 → 新聞等は、三吉の勝利を称えた
6.娘の玉江は、父親に、①あれは苦し紛れの手、
   ②勝負に勝って、将棋に負けたと伝
 → 名人を目指すなら、立派な手で勝って欲しい、の意
 → 三吉は、娘の言う通りや、ハッタリで関根に勝ったと嘆く
7.その後の約10年、三吉と関根の対局は、三吉の11戦7勝だったが、
  東京勢は関根を名人にさせたいの風潮あり
 → 大阪の後援会には、①三吉が名人、②2人とも名人、の案があった
8.三吉は、後援会の菊岡に「名人位は立派な人がなるべき」と、名人位を辞退
9.三吉は、妻が病床だったが、お祝いの言葉を述べたくて上京
 → 名人就位祝賀会の関根にお祝いの言葉等
10.三吉と関根が会話中、大阪の娘から三吉に電話
 → 母親:小春が危篤、電話の途中で死亡 → 泣ける

11.なお、坂田三吉(1870.7~1946.7)は実在の人物だが、映画では少し脚色
  → この映画は、三吉死去の約1年後に作られた
12.映画に何度も出て来る「妙見山」とは、大阪府豊能町のお寺のこと
  → 兵庫県との府県境にある
13.映画の評価 → 感動出来て良い映画だった

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KEO

5.0名演技と、素晴らしい脚本、的確な演出 なるほど日本映画史に残る映画だと納得です

2021年1月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

♪吹~けばー飛ぶようなー、将棋の駒に~
誰もが知るこの歌は、本作が元々のモチーフ

本作は1948年公開、歌は1961年の村田英雄の大ヒット
ですからその歌は本作では流れません

有名なその歌は、大ヒットを受けて製作された1962年の2回目の映画化に主題歌となっています
村田英雄本人も出演しています

王将は、本作いれて3回映画化されています
本作は最初の映画化の作品です
3作品とも伊藤監督です

元々は新国劇の1947年のヒット作の映画化です
実在の人物坂田三吉がモデルです
その彼のエピソードを取り混ぜて大幅に脚色されたものだそうです
その彼は1946年に亡くなっていますから、翌年には新国劇、翌々年には映画化となったわけです

将棋なんか映画にはならんやろ~?
誰もがそう思ったはずですが、将棋の事が全く分からなくても大変に面白く楽しめます
つまり脚本が大変に優れています

阪東妻三郎の名演技、水戸光子の薄幸さと健気さ、若い時の三條美紀の可憐さ
どれも見事

ストーリーも大変に面白い
前半の見所は、小春のあの有名な台詞です
「あれだけ好きで好きでたまらん将棋をやめなはれというのは無理や、わてほんまに悪い嫁はんやったやったなあと思う、堪忍しとくなはれ、そのかわり、そのかわりな、指すからには日本一の将棋指しになって欲しい」
まずこのシーンで痺れます、涙腺が緩みます

中盤からはもう身を乗り出して観てしまいます
有名な二五銀のエピソードに続く、勝負に勝って将棋に負けたとの大意の涙ながらの珠江の糾弾の台詞は本作の後半にあります
三條美紀の伝説の熱演です
そして続く鏡に写る顔のシーンの演出の素晴らしさ!

将棋には「王将は二つあるが、勝ち残るのは一つや!それが名人じや!」のシーンの感銘
クライマックスの関根名人位襲名披露宴のシーンの感動
そして病に臥せる小春への電話越しでのお題目は涙が溢れます
そして夕闇迫る天王寺の破れ長屋のラストシーンの快い余韻
どれもこれも深く心に残るものです

名演技と、素晴らしい脚本、的確な演出
なるほど日本映画史に残る映画だと納得です

山田洋次監督の「おとうと」など多くの作品で、王将が取り上げられています
一般教養としても本物の王将とは何かを知ることは意味があります

そしてなにより映画として大変に面白く優れています

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あき240

4.0小春!!!

2016年11月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

御存知、坂田三吉(坂東妻三郎)と女房の小春(水戸光子)の愛情物語。
学はないが正直者で将棋がめっぽう強い三吉は、将棋のためなら仏壇や娘の晴れ着を質屋に入れる始末。
そんな三吉に献身的な愛情を注ぐ小春と宿敵となる東京の関根名人(滝沢修)が話を引っ張っていく。
最後は泣けて泣けて・・・。

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いやよセブン