おしどりの間
劇場公開日:1956年12月19日
解説
別冊文芸春秋連載、舟橋聖一の原作から「天上大風」の長瀬喜伴が脚色、「世にも面白い男の一生 桂春団治」の木村恵吾が監督、同じく三村明が撮影を担当する。主な出演者は「流れる」の山田五十鈴、「あばれ鳶」の瑳峨三智子、「霧の音」の上原謙、「江利チエミの サザエさん(1956)」の仲代達矢、「この世の花」の淡路恵子、他に千秋実、南美江、森啓子など。
1956年製作/78分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1956年12月19日
ストーリー
夫会田と別れた後、経理事務所を営む皆川の世話を受け、その子まで宿した稲子。潔癖な娘の葦子はこうした母を嫌って家出の上、温泉旅館鶴の井へ女中に住込む。名も珠子と変えた彼女は女主人蔦子のお気に入り。しかし同輩のあや子は、あんたの美貌はアルサロ向き、という。ある日、娘を探し廻る稲子の訪れで葦子の正体がバレるが、母の許には戻らぬと泣伏すばかり。葦子は、蝶子という女の縁切り宣言で寂しげな四十男の貿易商越後と鴛鴦の間で知り合い、二人でドライヴする迄親しくなる。その夜、星のきらめく熱海の浜辺で二人は熱い接吻を交したが、そのまま、彼女に見送られ、越後は東京へ戻る。彼の世話でアルサロ“ブルーバード”の女給となっても最後の一線を越えぬ関係は続いた。葦子の前に第二の異性、彼女に惹かれ、何かと面倒を見てくれるボーイの安藤が現われた。現実の社会で彼女の眼にうつるのは、母や父よりもみだらな人間の集まり。だが、ある日、その店の上客である越後が彼女を誘って鴛鴦の間に赴く。遍歴する彼女の運命も今は逆の立場となり、二人はその夜、結ばれた。しかし、それから幾日か経ったある日。約束で待合せる葦子にも、ヨリを戻そうとゴネる蝶子に捕まった越後は姿を見せない。数日後、以前から彼女を慕うボーイ安藤から越後が蝶子とヨリを戻したと聞いた葦子、ヤケ気味で赴いた客の席には父会田がいた。折柄訪ねて来た越後に縁切りを宣言した葦子も今はたまらず泣き伏すばかり、その夜、鴛鴦の間で謝罪に来たという父に、母をあんなにしたのは誰という葦子。翌日、ブルー・バードで急病を起した葦子も、安藤の看病で全快し、久しぶり母の許を訪れるが世帯やつれした稲子の姿に驚き、ここ数月も金を送って来ない皆川の許へ単身掛け合いに行く。だが彼女は軽くイナされ、代って交渉した安藤も口論の末、相手を刺す。我家に戻った葦子がその後生れた香一をあやしている処に帰ってきた稲子は、父とヨリを戻した上、毎月五千円貰うようにしたという。お母さんの馬鹿と叫ぶ葦子は、やがて、狂気のように飛び出した稲子を追い、深夜の街へと出て行った。