帰郷(1964)
劇場公開日:1964年8月14日
解説
大佛次郎の同名小説を「泥だらけのいのち」の馬場当と「エデンの海(1976)」の西河克己が共同で脚色、西河克己が監督した文芸もの。撮影は「太陽西から昇る」の横山実。
1964年製作/97分/日本
原題または英題:Homecoming
配給:日活
劇場公開日:1964年8月14日
ストーリー
雑誌社に勤める守屋伴子は、実父恭吾をキューバの動乱で失い、母節子は大学教授の隠岐達三と伴子を連れて再婚した。隠岐は著名な学者であったが、気の弱い男で、絵を売ることを唯一の楽しみにしていた。ある日、伴子は原稿を依頼するため、女画商高野左衛子の画廊を尋ねた。左衛子は伴子の顔を瞶めると、明日自宅に来るようにと言った。その日古本屋に奇った伴子は、大学院生の岡部雄吉に逢った。雄吉の気取りのない態度に、伴子はひきつけられた。翌日、左衛子に逢った伴子は、初めて実父の話を聞かされた。左衛子は、恭吾とキューバで知りあい、強烈に魅かれながら、革命に協力した恭吾を裏切って、政府軍に密告したのだった。そのことは、左衛子の心の中に、深い傷痕となって残っていた。そして恭吾が日本に帰っている事を知らされた伴子は、母の苦労を思って母と、実父への慕情の間で悩んだ。帰りに、左衛子は、伴子に一粒のダイヤモンドを手渡した。一方節子は、恭吾の大学時代の親友、牛木から恭吾が帰国したことを聞き、動揺する達三を前に苦しんでいた。確かに死亡したというニュースを聞いた節子にとって、これは意外な知らせであった。そんな母の姿を見て伴子は、父に会わないことを決心したが、雄吉から、「我慢するのは不自然なことだ」と言われ、ついに左衛子と一緒に、恭吾のいる奈良へ飛んだ。キューバからヨーロッパに逃れた恭吾は十年ぶりで見る古都に、孤独をかみしめていた。美しく成人した伴子を見て恭吾は、平和な家庭を守っている節子の心を乱してはならないと思った。ホテルで、伴子は持っているダイヤモンドを、世の中のために使って欲しいとさし出した。恭吾は娘の伴子のやさしさに、感動し、一人日本を離れる決意をしていた。