ゼロの焦点(1961)

劇場公開日:

解説

松本清張のベスト・セラーを、「南の風と波」の橋本忍に山田洋次が加わって脚色、「最後の切札」の野村芳太郎が監督した推理映画。撮影は「日本の夜と霧」の川又昂。

1961年製作/95分/日本
原題:Zero Focus
配給:松竹
劇場公開日:1961年3月19日

ストーリー

禎子は新婚七日目に、社用で金沢へ旅立つ夫・鵜原憲一を上野駅まで送っていった。それが、禎子が夫の姿を見た最後になってしまった。憲一はある広告社の金沢出張所長だったが、結婚を機会に東京本社に栄転となり、今度は後任の本多と事務引継ぎをするための金沢行きだった。予定の十二日をすぎても憲一は帰ってこなかった。十一日の夜金沢を発ったということなのに。会社で憲一の同僚を事情調査に金沢へ派遣することになったので、禎子も同行することにした。しかし、憲一が金沢在任中に暮らしていたはずの下宿の所在さえ分らなかった。憲一が親しかったという室田耐火煉瓦の社長室田を訪ねた。室田も、夫人の佐知子も禎子を慰めてくれるだけで憲一の失踪については心当りがないという。手がかりが掴めないので、禎子は一旦帰京した。後のことは義兄の宗太郎が金沢へ来たので任せることにした。禎子は憲一が広告社に勤める前に一年半ほど立川署の巡査をしていたのを知った。憲一が風紀係としてパンパンの取締りに当っていたのも分った。禎子にはすべて初耳だった。金沢にいた宗太郎が死んだ。青酸カリ致死量による中毒だった。禎子はこの事件が憲一の失踪に関係があると思った。犯人がパンパン風の女だということは、憲一が風紀係だったことに結びつく。禎子は室田の会社を訪ねた時、受付にいた女がパンパン独特の癖のある英語を使っていたことを思い出した。室田の会社へ行ったが、その女田沼久子は三日ばかり前から休んでいるということだった。久子には曽根益三郎という内縁の夫があったが、十二月十二日に死亡しているという。憲一が失踪した日だった。曽根の生前の住所は能登の高浜町であった。禎子は高浜の町へ赴いた。曽根とは他ならない憲一であった。憲一は佐知子の秘密を握っているために殺されたのだった。佐知子は憲一が風紀係をしていた頃パンパンをやっていたのだ。今は名士となった彼女は、秘密を知る憲一を、秘密をかぎつけた宗太郎を殺したのである。禎子と佐知子は能登金剛の断崖で対決した--。

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映画レビュー

3.5戦後ならではの時代背景、今ではできない表現がありますが、今のサスペ...

2023年2月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

戦後ならではの時代背景、今ではできない表現がありますが、今のサスペンスドラマの元となっていると言われる作品だけに、面白かったです。

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カネナカ

3.0リメイクされるのには訳がある

2020年9月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

いま、観おわりました。

うーん、たまたまリメイク版を先に観ておりましたので、話の展開は分かりましたが、この旧版はあまりにもシナリオが荒削りでびっくり。粗雑な編集で混乱する時系列を、主人公の長台詞でなんとか解説。犯人も崖の上で延々と種明かしの自白をするとか。
こんなんで封切り当時の観客が満足したのか不思議です。

エスパー禎子=久我美子は活躍が過ぎて異様。まるで彼女、東京から捜査に入った警視庁の1課刑事です。(笑)
⇔ リメイク版の広末涼子のうろたえて何も出来ないくらいのほうが自然。

旧版の出来の悪さをリメイク版はそうとうに手直しして、まともにした。

ただ、有馬稲子!と高千穂ひづるの車中と、橋の上での身の上話シーン。そして能登の荒波を写すキャメラはこちらに軍配。

女優3人ばかりに焦点が当てられていて男性俳優はまったく魅力ゼロ。スタアを見るための“女優ブロマイド映画”ですね。

旧版65点、
新版90点といたします。

それにしても、
こんな大昔の映画を最近の日付で何人もレビューしているとか・・これも摩訶不思議現象です。(驚)

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共感した! 3件)
きりん

5.02時間サスペンスの原点のような映画

2020年9月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、TV地上波

 数ある2時間サスペンスのスタッフはロケや設定、編集技術をこの映画から吸収しているに違いないと思えるほどです。

 ストーリーは難しくないし、犯人当てだって簡単。松本清張作品の中でも推理の醍醐味を味わう小説ではなかったと思いますし、それよりも犯人の過去やその過去にまつわる悲しい人生の登場人物をクローズアップした社会派作品です。戦争についての映像は一切出てこないのに、日本の敗戦によって悲惨な運命に翻弄される女性たちが日本海独特の暗さと重い空気に溶け込んでゆく。「戦後は終わった」と言われた昭和30年代にあっても、その暗い陰は人々の脳裏に根付いていたのです。過去を隠さねばならなかったというテーマは森村誠一の『人間の証明』にも通じますが、今の時代とは違い、犯人側の背負った重い運命にも涙せずにはいられませんでした。

 舞台は金沢を中心とした石川県。今冬は久しぶりの豪雪となりましたが、45年前の豪雪の映像には驚きました。しかも主人公の女性(久我美子)はハイヒールで雪道を歩くという無鉄砲ぶり。「だから都会の女性は・・・」などとブツブツ言ってしまいそうになりましたが、彼女は新婚7日目。新郎は広告会社金沢支店所長という肩書きでしたが、「ブーツを忘れずに」との忠告もする暇がなかったのだと思われます。しかも夫が謎の失踪という災難に遭ったので、気が動転していたこともあったのでしょう。手掛かりを探すため、今は無き路面電車で寺町3丁目へ向かい、得意先の社長宅に到着する。社長の大邸宅は『野性の証明』と同じく成巽閣だ。そして、これも今は無き北陸鉄道能登線に乗って能登半島のヤセの断崖へ。荒れた冬の海から押し寄せる白波も印象的ですが、ラストシーンにも登場する断崖から見た日本海には、どんよりと曇った空から一条の光が差し込んでいるという絶妙のタイミングを狙った効果がありました。

 事件の語り手のようでもある主演女優の久我美子よりも、高千穂ひづると有馬稲子がとても良かったです。特に、実はこれが真相だという回想シーンにおいて、有馬稲子の全てを許すかのような優しい目には泣けました。若き日の加藤嘉や西村晃も熱演しています。

 しかし、雪が降らない太平洋側の人がこの映画を見ると「北陸には住みたくない!」と思うこと間違いありません。それほど暗いのです。これは雪国の人間が自虐的に楽しむ映画。そして暗さから脱却し明るい性格になろうとする再生のための映画なのかもしれません。

【2006年2月映画館にて(リバイバル)】

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kossy

3.0禎子の推定、警察の推定、佐知子の話等があり、芥川龍之介の「藪の中」...

2020年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

禎子の推定、警察の推定、佐知子の話等があり、芥川龍之介の「藪の中」みたい
1.推定が何件も出てきて、少しややこしい
2.すぐに判るが、回想も何度も出て来る
3.禎子の行動力が、若い女にしてはあり過ぎる感じ → 不自然に活躍しすぎ
 ①金沢や能登へ何度も行く、 ②立川に調査に行く、 ③色んな人に会い、話を聞く
4.殺人犯と推定した佐知子+その夫と、誰もいない断崖で、禎子が1人で会うのは危険
 普通の女は、こういう行動はしない

映画としては面白いが、故意に複雑にしてる感じがしたので、
 真ん中の評価とした

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KEO
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