山河あり
劇場公開日:1962年4月29日
解説
久板栄二郎と「酔っぱらい天国」の松山善三が共同で脚本を執筆、松山善三が監督した夫婦の苦闘物語。撮影は「今年の恋」の楠田浩之。
1962年製作/127分/日本
原題または英題:Mother Country
配給:松竹
劇場公開日:1962年4月29日
ストーリー
大正七年。日本人移民の一団がハワイへやって来た。その中には、井上義雄ときしの夫婦やこれから嫁入りしようとする少女すみがいた。ハワイの土は冷たく固く、帰ることも出来ない人々はただ黙々と亜熱帯の畑ととりくむのだった。そして十年、人々の努力は報いられ、井上は日本語学校の教師に、妻は小さな食料店主になっていた。またすみは郷田と結婚しクリーニング店を経営。今では、井上家には春男と明、郷田家には一郎とさくらとそれぞれ子供があった。そしてまた七年--。さくらと明はハイスクールを卒業した。一方故国日本は、満州事変、日中戦争、国際連盟脱退と次第に戦争への道を歩いていた。この雲行きを心配する一世たちと反対に、二世の子供たちは一向に無関心だった。そんな時、井上は心臓麻痺であっけなく死んだ。きしのは、次男の明を伴なって夫の遺骨と共に日本へ向った。世界情勢はますます悪化し、昭和十六年、ついに日本海軍の真珠湾奇襲が行なわれた。日本で親せきの家に身をよせていたきしのたちは茫然とした。同じ頃ハワイでは、二世たちが、二世部隊として出陣した。母を日本軍に射殺された一郎、そしてさくらの恋人春男も志願し、四四二部隊として出動した。砲火のイタリア戦線で戦う春男と一郎。やがて戦争は末期症状をみせて来た。一方日本では、明がアメリカ人として収容所にとらわれていた。冷たい壁の中の生活に胸をやられた明は、物置の隅に住むきしののもとへ帰された。母子の寒さにふるえる生活は続き、やがて明はボロ切れのように死んでいった。そして戦争は終った。終戦を迎えた日本に進駐して来た一郎から、春男の死が知らされたのはそれから間もなくだった。二人の息子を失ったきしのの嘆きははかり知れなかった。明の墓の土を持って、きしのはハワイへ戻るのだった…。