永遠の0のレビュー・感想・評価
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10代にとって時代劇感覚かもしれないが、忘れてはならないことがある
百田尚樹の同名ベストセラー小説を、岡田准一主演、山崎貴監督のメガホンで映画化。
興行収入87.6億円の大ヒットを飾り、第38回日本アカデミー賞では最優秀作品賞をはじめ8部門を制した。
現代を生きる10代の若者たちにとっては、1986年公開の「トップガン」ですら“時代劇”にうつるようなので、今作は彼らにしてみればバリバリの時代劇に相当するのかもしれない。
もはや、どういうジャンルかは横に置いておいても構わない。日本はかつて戦争に負けて、多くの命を犠牲にしたという事実は語り継がれていかねばならないこと。
自分の祖父がなぜ特攻に志願したのか。当時の世相などを絡めながら、じわじわと追い込まれていくさまは、時代など関係なくどの世代の人にもざわついた気分をもたらすはず。
そして孫役の三浦春馬さん。彼の生前の勇姿は、この作品でもふんだんに確認することができる。
原作の魂が映像化に乗り移った!!
この映画のテーマは深い。
実際 戦争は上に立つ者が始め
未来のある多くの人を殺した。
そして戦争を推進した者は生き残った。
映画は狂った上の者達ではなく、
心の中で迷いながらも使命に歩む
下の者達を中心に描かれている。
残念なのは終戦後の人々の衣装が綺麗すぎた
どん底に突き落として、あの10倍汚くていい
…が、井上真央さんの怯える瞳に救われた。
とはいえ力作。
物語に95点
映像化に70点
余談になるが木下惠介監督の
「陸軍」という映画がある。
それは戦時中の製作に関わらず
ラストでは「死ぬな」という
強い母のメッセージを描いた。
立場こそ違え生への希望は
当時なら国賊と見られるもので
この映画の主人公と重なった。
強い問いかけは残る。
※
尊い気持ちに感謝
劇場で観て以来2回目。もう10年も経っていたとは意外であった。
三浦春馬扮する佐伯健太郎は亡くなった祖母が2回目の結婚だった事を知り実祖父になる岡田准一扮する宮部久蔵を調べ始めた。
三浦春馬も夏八木勲も平幹二朗も皆鬼籍となり感慨深いね。田中泯はやっぱり迫力が違うね。ドスが効いてるわ。
どんな苦しい事があっても生きのびる努力をせよと宮部は言った。戦時下ではタブーな言葉だったが強い人であった。戦争が終わった後の日本のために生き残るべき人たち。腕利きで生きのびよと言った宮部が何故特攻を志願したのか。 教え子が次々と特攻で死んでいくのに耐えられなかったのか。特攻が無駄な戦略だと分かっていながら特攻を志願した宮部。さぞや無念であったろう。生かそうとした教え子と特攻機を替えた宮部。尊い気持ちに感謝しかないね。真相を知った三浦春馬の演技も素晴らしかったね。残念。
このVFXが残念
零戦、赤城など素晴らしいVFXで、リアリティがあり感動しました。
・・ただ、赤城に格納される零戦の翼が中程で折りたたまれて格納される映像や格納された零戦が同じように翼の中程から折れて格納されていて、この部分のVFXが非常に残念です。実際にそのように翼が中程で折りたためる零戦はなく、リアリティにこだわった作品であるだけに残念でなりません😢
意外と・・なんちゃってだったんですね!
80年前の美しい日本人の生きざまに心打たれるが、辛すぎる。
戦争話に興味のない人にも読まれベストセラーとなった原作も読みました。
素晴らしい原作を、これまた素晴らしい再現度で映画化したもので感動しました。
私が感動したので、父母にも映画が公開される前に読んでもらいました。それぞれ深い感銘を受けたようでしたが、父母はこの映画を見ていないはずです。それは母が「映像でこの話を見せられるのは辛すぎるから」と映画館に行くことを拒んだためです。
宮部久蔵は架空のゼロ戦パイロットですが、多くの当時を知る旧日本軍人が「宮部とはあの人のことではないか?」と多くの人を思い浮かべて原作者の百田さんに問い合わせが入ったと言いますから、取材も半端ないものだったのでしょう。複数の実在の人物のエッセンスを混ぜて作ったキャラクターと言えるのでしょう。
私にとってこの作品で最も泣かせるシーンは「あの人は約束を守ったんだわ」と宮部の妻が言う時です。
多くの現代日本人にとって、ご先祖様に当たる曽祖父母や祖父母が何を大切に想い、命がけで守り抜いてきたのかを丁寧かつダイナミックに描いた本作は、傑作中の傑作です。
同じ山崎貴監督作品である「ALWAYS三丁目の夕日シリーズ」と一緒に鑑賞すれば、古き良き日本に思いを馳せることが出来るはずです。
この映画も、山崎さんらしく現代の日本人に古き良き日本を伝えるという使命感を持って作られたことをひしひしと感じます。
永遠にゼロ や!
「おじいさんはその飛行機に乗っていたら、命が助かったって事ですか?助からなかった理由がその飛行機に乗らなかったから死んだって事ですか」
そう話す三浦◯馬さんに『もっと別の映画に出て活躍して貰いたかった』と冥福を祈りたい。
また「あと、10年もすると私達は誰もいなくなる」と俳優さんが語るが、その10年が経過して、多くの俳優さんが他界して、その話を聞く若い人までも他界してしまっている。ある意味に於いて言葉どおりだが、起死回生を望む様に次々と送り込まれる日本文化(映画)が幾ばくのものであっても、その芸術性等は?現状は、
震災後の大和民族の10年の実体経済や文化がどれだけ低下しているかは『日を見るよりも明らか』だ。
勿論、この演出家さんはこの映画の言葉どおり、御自分の才能だけはやっと米国に認めさせたようだが。
さて、それはともかく。
原作は半日で読み終わった。その位映像になりやすい話だなぁって思ったが『トラ◯トラ◯トラ』を思い描けば予想がつく話だった。そして、戦記物としては普通にアナクロ話だと思ったが、見舞いに頂いた本だったので、気も心も緩んで、感動せざるを得なかったのかもしれない。時間つぶしにならない位あっという間に読めた。つまり、読みやすいが、反面、読み応えが無い。
手塚治虫先生の「クレ◯タ◯2」の「墜落◯」と言うお話を読んでいるので「お国の為」のアナクロな所は理解しているつもりだ。
もし「生きる事が家族と子の為」と仮定すると、グラマンや敵空母に搭乗や乗船していたアメリカ青年の家族は一体どうなるのか?この映画の敵は、ガミラス◯国やゴジ◯ではない。自由と民主主義のアメリカなのだ。その国の脅威から自分の家族を為に、死んで守ったのだ。
さて、現実的に曲解すれば、その国に負けて良かったとも考えられる。もし万が一に勝っていたら、もっと多くの犠牲者が出たかもしれない。
また敵国のアメリカの描いた『トラ◯トラ◯トラ』は、日本人側からもきちんと描いている。その点が日米の違いなのかもしれない。戦って亡くなって行った敵兵にも御霊がある事を忘れてはならない。
勿論、中国や朝鮮や米英、モンゴル、ソ連、ミクロネシア、インドネシア、カンボジア、フランス、ベトナム、インド、イギリス、オランダ等など。
なんとこんなに沢山の国が!?
大東亜共栄圏を掲げる大日本帝國はドイツのヒトラ◯しか味方じゃない。日本人は世界に対して全く空気は読めていないのだ。
さて、現在はどうなっているのだろう?
微妙
妻の井上真央の泣くシーンは辛そうで見応えあったが
菊の紋入りのタバコをポイ捨てするところで
当時、戦下の兵にそんな贅沢と不敬が許されるのか疑問だったし
そのシーンから一気にこだわりないんだなって冷めた
そもそもが作り物めいてはいたが映画の中で
世界観を維持する意識ないのは駄作って思う
終わるまでこちらを現実に戻してくれるな
私が不勉強でそんなことやるやついたとかならすみません
涙活の為に.....
涙活の為に泣けそうなもの選んで鑑賞
うーん なんか違ったなあ 泣けなかった
戦争のリアルなんて知らないけどでもこれは違うと思った
映画なんかにリアル求めるなって感じだけど戦争を扱うならもっとリアル感欲しかった
上手く言えないけどこれはなんかちょっと違った
主人公みたいな考え等こんな生ぬるくないと思うしもっと殺伐としてたと思う (あくまで予想だけど)
生きたい
生きることに執着していた久蔵が、持論を捨てざるを得なくなったのは、腕を見込まれて教官になったからか。
教えた若きパイロットたちが、次々と死での旅路に向かって行く。
妻と子の為に生きる道を選んでも良かった。
ワザと飛行機を交換する。
妻子を託して。
死ぬこと嫌がっていたら非難の目で見られる。
人は生まれて来たから生きなければならない。
その条理に反すること。
健太郎は、祖父と関わった人々と出会うことで
祖父を誇りに思い自身が前向きに生きる糧とする。
(再度観たらレビューを修正するかも、です。)
その時代を必死に生き抜こうとした1人の男性にまつわる話
漫画既読原作未読。泣きたくなかったから喋りながら見た。そのせいか逆に疑問ばかりの鑑賞になりました。戦争中宮部のような考えの人はもっといなかったの? みんな周りがそんな雰囲気出してたから自分もーってなったんじゃないの? って思いながら見てた。14.8.11
VFX映像は嬉しかったが、戦争の本質から目を背けて、泣かせよう泣かせようとするあざとさが印象に残った
山崎貴 監督による2013年製作(144分/G)の日本映画。配給:東宝、劇場公開日:2013年12月21日。
原作は未読である。
零式艦上戦闘機(零戦)が空母に着陸する等、空母や戦闘機のリアリティはかなり良くて、VFX映像にはとても感心させられた。
ただ、祖父の物語を探る三浦春馬絡みの物語が陳腐で、彼の演技も拙いと思ってしまった。尊敬する人間の孫というだけで、大物たちがあれだけの親しみを示すのは奇異であるし、祖父が臆病者でないということであれ程の喜びを感ずるのも血縁主義すぎて、かなり異常と思ってしまった。特攻隊員を自爆テロリストと同一にされて激しく怒っていたが、それ程大差はない様に自分にも思えてしまう。自爆テロと違って、特攻は殆ど強制の様には描かれていたが。
妻と娘を思って絶対生きて帰るという信念でずっと生きていた岡田准一が、特攻を選んだ理由が結局良く分からなかった。教え子が次々と無駄死にしていくことで精神が壊れてしまったという描き方であったが、だとすると故障を見抜き、それを若い有望そうな教え子に譲るという冷静に思える行動と矛盾する様に思えてしまった。命をかけた航空機チェンジということで、無理矢理に感動を呼ぼうとしている設定と思えてしまった。
岡田准一が妻の井上真央に、絶対に帰ってくる、死んでも帰ってくると告げて、身代わりに生き残った教え子染谷奨太が井上のところに来て、やがて相思相愛になる。コレ外形的には未亡人が終戦後早速に男を連れ込んだということで、夫が約束を守ったと純愛で綺麗事で語らせることに、随分と気持ちが悪いあざといストーリーと思ってしまった。
岡田の凄腕に血を激らせ戦闘機で戦闘を仕掛けてしまう新井浩文(後の事件で映画界から追放されてしまった?)、後のヤクザ親分となった田中泯の演技は,存在感が有ってかなり良かったし、岡田の教官としての立派さを語っていた橋爪功も上手い演技だったので、ストーリーのあざとさが残念に思えた。
結局、原作がそもそも悪いのかもしれないが、反戦風でありながら、零戦の性能、凄腕零戦パイロット、そして特攻隊員を讃えてしまっていて、戦争の悪質的な本質(例えば、前途ある日本の若者を死に追いやる特攻隊を自分たちの保身のために作った組織人)から眼をそらさせる、とてもマズイ構成の映画に自分は思えてしまった。
監督山崎貴、原作百田尚樹、脚本山崎貴 、林民夫、製作市川南 、畠中達郎、共同製作原田知明 、石川豊 、加太孝明 、島村達雄 、阿部秀司 、藤島ジュリーK. 、岡聡 、入江祥雄 、戸塚源久 、町田智子 、長谷部剛 、高橋誠 、冨木田道臣 、吉川英作 、宮本直人 、佐々木崇夫 、山下利一郎、エグゼクティブプロデューサー上田太地 、遠藤日登思 、阿部秀司 、安藤親広、プロデューサー遠藤学 、筒井竜平 、守屋圭一郎、撮影柴崎幸三、照明上田なりゆき、美術上條安里、録音藤本賢一、装飾龍田哲児、編集宮島竜治、VFX山崎貴、VFXディレクター
渋谷紀世子、音響効果岡瀬晶彦、音楽佐藤直紀、主題歌サザンオールスターズ、プレビズアドバイザー栃林秀、戦時考証神立尚紀、軍事指導東裕一、零戦製作監修大澤克俊、キャスティング緒方慶子、スクリプター甲斐哲子、助監督山本透、制作担当阿部豪、ラインプロデューサー山下秀治、プロダクション統括山内章弘 、佐藤毅。
出演
岡田准一宮部久蔵、三浦春馬佐伯健太郎、井上真央松乃、濱田岳井崎(戦時中)、新井浩文景浦(戦時中)、染谷将太大石、三浦貴大武田(戦時中)、上田竜也小山、吹石一恵佐伯慶子、田中泯景浦(現代)、山本學武田(現代)、風吹ジュン清子、平幹二朗長谷川、橋爪功井崎(現代)、夏八木勲賢一郎、佐々木一平山田、青木健伊藤、遠藤雄弥香川、栩原楽人寺西、古川雄輝。
心に残る、素晴らしい作品
原作を読んだ上で、映画も観ました。
心に残る、素晴らしい作品でした。
百田尚樹さんの小説をベースにした作品です。主演は岡田准一さん。
命の大切さについて考えさせられる映画で、日本を守るために自分を犠牲にして戦った神風特攻隊をテーマに扱っています。平和は当たり前に存在するものではないと感じますし、大切な人をもっと大切にしようと思いました。
今を生きる私たちはほとんど戦争を知らない世代だと思いますので、是非多くの方に見ていただきたいと思います。
まあ面白くはあるが設定が微妙
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青年が、戦争で特攻して死んだという自分の祖父について聞いて回る。
最初に会った人々は、口々に臆病者だと非難していた。
しかし調査を進めるうちに、人一倍家族愛の深い人だったと分かる。
他人思いで、命の大切さを部下らにも説いている稀有な存在だった。
そして青年の婆さんの再婚相手である爺さんが実はその元部下で、
残された家族を頼むと託され、身代わりになって生き残ったのだった。
そしてその遺志を継ぎ、再婚に至った。
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いつもながら、戦争映画は考えさせられる。
でも最後自分が身代わりになって死ぬのってあり得なくない?
戦争に洗脳されて死ぬのを美徳としない人間だったのなら、
最後まで生きることにこだわり抜いて欲しかったわ。
ただただ美談にしたいがための、あり得ない設定だと思った。
でも薄幸の真央はええ感じやったな。
欠点も多いが、国産戦争映画にしては見られる内容の映画。多分原作がいいためだな
日本は敗戦国のせいか、戦争映画は捻くれてるのが多くてだいたいつまらない。
本作もその悪影響下にあるが、割と見られる。おそらく原作が優れているため。
あと主役の演技がうまいのもある。
音楽はいかにもお涙頂戴の安っぽさで幻滅。ラストのサザン曲なんか陳腐すぎて話にならない。
映画としては中だるみもある。もう少し脚本なんとかならなかったんかこれ。
ただエンディングはいい。終わるならあそこだよねと思う時点で終わる。あそこで最後まで見せちゃダメだわな。それを見せなかったのがいい。あの孤独なコックピットでの岡田准一の演技がいいのもポイントを稼いだ。
あと普通にcgが凄い。ゼロ戦というと昔からt2テキサンの偽ゼロ戦しか登場しなかったが、本作のゼロ戦は見事に再現されてるし、ウェザリングだの動作だのも完璧。おそらく考証担当がとてつもなく優れている。
反英雄的英雄
著作はこの作家の代名詞だが論壇のほうが目立つ人でさいきん(2023/10)は新党を立ち上げたことでふたたび界隈を賑わせている。
宮部久蔵(岡田准一)について孫の姉弟(三浦春馬と吹石一恵)が存命者に取材し体験が語られることで話が進んでいく。
老俳優たちが若年時を回顧していくが、主たる証言者は4人。
夏八木勲と染谷将太、橋爪功と濱田岳、山本學と三浦貴大、田中泯と新井浩文──の組み合わせで現在と戦時が交互に描かれた。
映画は宮部vs愚かなその他大勢という構図で、言うなれば宮部のキャラクターを際立たせるためにまわりをあるていどばかに描いているという感じ。登場人物のなかで冷静なのは宮部だけであり上官も門生もみんな浅はかだ。
当時軍は精神論にかまけて敗戦を言い出すことができないまま、惰性で若者らを無益な特攻に送り込んでいたのであり、その渦中にいて日毎門生の特攻を見取る宮部の精神が崩壊していったのは無理からぬ話だった。
孫の姉弟は取材当初悪評にしか遭わず消沈していたが4人の証言者が名誉を挽回していくかたちで映画も発揚し、終始壮麗なストリングで山場も多かった。
あるていどの単純さ(たとえば健太郎(三浦春馬)が合コンに参加したときの“軽薄なイマドキな若者”の描写とか)はあり、たった一人のまっとうな人間性をもった男という(ような)強コントラストではあったが熱い頌歌になっていた。
岡田准一がかっこよかった。
日本はアメリカと違い戦争を雄々しいヒロイズムで描かない。それは民族性の違いでもあろうし敗戦国だからかもしれないし侵攻したアジア諸国に気をつかわなければいけないから──というのもあろう。が、個人的には日本軍が敵をやっつけるたとえば坂井三郎が敵機をばんばん撃ち落とすような姿をエンタメで描いたものがあっていいと思う。それが国を愛することにつながるからだ。たとえばわたしはアメリカ映画パールハーバーをひでえよ日本軍と思いながらアメリカ側に立脚して見たのである。エンタメとはそういうものだからだ。
しかしこの映画の岡田准一はある種ヒロイックだった。悲壮な状況を描いているからヒーローと言ってしまうのは不謹慎だが万感迫るものがあった。
取材を終えクライマックス、走馬灯風の回想がある。
主要人物を台詞とともにひとりづつパンしたあと、健太郎の眼前に宮部の零戦が飛来する。コクピットには敬礼する穏やかな表情の宮部。そのまま空母へつっこんでいく。海面すれすれに飛んでいく色あせたぼろぼろの零式艦上戦闘機21型。空母からの一斉掃射がぜんぜん当たらない。いいぞ行けぇ。
思わず叫びそうになった。
作家のPatriotismな意図にもかかわらず太平洋戦争や軍はわたしたち日本人を愚かしいと思わせてしまうところがある。とくに末期はぐだぐだだった。
ただし戦わざるをえなかったという前提がある。愚かしい戦争でも、統率を欠いていたとしても、結果的に悲惨なことになったとはいえ、戦わないという選択はできない話だった。
もし戦わなければ今のアジア人の地位はなかった。この惑星で白人と戦った有色人種はそうそういない。もし戦わなかったら白人の広域支配主義は今なお終わっていなかっただろう。
これは右傾論者が陶酔するための文脈でしばしば使われる仮定だが、本当にそう思う。
すなわちどうにもならない運命を背負ってもがき苦しみ、矛盾をかかえたまま穏やかに特攻せざるをえなかった宮部久蔵は日本そのものだった。
原爆を落とされたし戦後はカオスだったし今後ずっとアジア諸国から恨まれるし、あらゆる貧乏くじを引き受けたが、日本にとってやらざるを得ない戦争だった。
永遠の0はそういう煩雑な事情をすべて抱え込んだ日本=宮部久蔵を称えるドラマだった。
宮部は戦争映画のヒーロー像とはすべてが食い違う。作戦は成就せず上官にブン殴られ願いも叶わず家族に会えないまま死んでいく。
それでも英雄的なのは穏やかな表情と敬礼に運命を受け容れた者の達観があらわれていたから、ではなかろうか
日本人は彼の達観を知っている。その英霊を敬うという気持ちがあるからこそ永遠の0は空前のベストセラーになったわけだった。
個人的に「日本は素晴らしい国だ」というアジプロが好きじゃない。日本にも悪い人が大勢いる。日常でもニュースでも変なことばかりおこる。けっして素晴らしい国ではない。
だが日本の恩恵にあずかり愛着をもっている。愛国心というと負担が重いが“愛着心”なら「はいあります」といえる。
ところが日本には日本に住みその恩恵にあずかっているにもかかわらず日本に対して日本の不利益になるような罵詈雑言をわめき散らし続ける人や勢力がある。
根本的に反日を言うならこの国から出ていくのが筋だ。
永遠の0の未曾有のベストセラーは世のパヨク的な事象への反発でもあった──と個人的にはみている。ほとんど日常習慣的に日本人は日本を下げすぎなのだ。他国には自国を酷い国だと卑下したり面罵する個人や団体がいない。いや、いないかどうか知らないが、少なくとも多数派ではない。が、日本はそういう手合いだらけなのだ。
──
宮部役岡田准一のほかでは、ふてぶてしく凶猛な感じの新井浩文がよかった。老年期は田中泯。日本刀の伏線がうまく回収されていい脚本だった。
孫のふたりを演じたうち姉は結婚して見なくなったが弟は本当にしんでしまった。あの若さであの立派な体躯であの端正な顔立ちで。・・・。なぜしななきゃならなかったのだろう。まったくわからない。陰謀論は信じないが陰謀でなければなんなん──という不透明が芸能界にはある。
今、永遠の0を見ると彼の死と宮部久蔵の「そのとき日本はどんな国になっているんでしょうねえ」という台詞がいやがうえにも重なりずしんとくる得体のしれない感覚がある。意図せずして岡田准一が三浦春馬にむかって敬礼するシーンがなんともいえない哀慕をともなってしまっていた。
──
山崎貴監督をみると映画監督たるもの理系が合理だと思う。といって監督が理系なのか知らないが理系的こだわりが映画には必要だと感じる。その反意語は“文系的お気持ち”であり「がんばってつくった」みたいな精神論も文系的お気持ちに含まれる。
こないだ所用で長野県松本市へ行った折松本美術館で山崎貴の世界という企画展をやっていたので見た。展示の最後に監督の出発点となった伊丹十三の大病人の絵コンテがあった。VFXの第一人者でアニメもやるので理系的と言ったのだがアイデアと脚本も構築する多能タイプだとあらためて思った。ふつうはどっちかがおざなりになるものだが山崎貴監督のばあいVFXのクオリティが高いだけでなく脚本に実がある。
映画製作の動機が承認欲ではなく、日本映画界(昭和ポルノ)に属しておらず、独自な来歴がある。かんがみるに絵コンテや模型やセル画や仮装衣装やミニチュアなどさまざまな撮影用造形物の企画展が成り立つ映画監督なんて山崎貴とか庵野秀明とか押井守とかごく僅かしかいないのではなかろうか。デジタル処理とアナログな心意気が両立するめずらしい監督だと思う。
誤解から正解へ、軽蔑から尊敬へ、憎しみから愛へ
零戦パイロットであった祖父の悪い評判を鵜吞みにしていた三浦春馬演じる主人公。
祖父も、もう一人の主人公とも言える。
現代パートと戦時中パートが切り替わるのが頻繁で嫌だ。つい現代パートいらないと思ってしまう。
登場する戦闘機、戦艦のクオリティが高いので好き。
今は活躍していない素晴らしい役者多数出演。
ちなみに、タイトルの意味はわかりかねる。
原作の小説は未読。
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