■1616年の朝鮮。暴君として知られた王・光海君(イ・ビョンホン)は、暗殺の危機に怯え、影武者の捜索を命じる。
そこで白羽の矢が立ったのが、王と瓜二つの道化師ハソン(イ・ビョンホン:2役)。
病に倒れた王の影武者となったハソンは、最初は、臣下ホ・ギュンの指示通り行動するがやがて、王朝内の様々な民の存在を忘れた権謀術数に気付き、自らの意志で民のために為すべきことを考え始める。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・イ・ビョンホンが、疑心暗鬼の末に、冷酷になってしまった王と人情味あふれる影武者の二役を演じるのであるが、影武者になってからの前半はコミカル要素を随所に盛り込んだ演技と中盤からは、王妃の兄で故なき罪を着せられたユ・ジョンホを多くの臣下が反対する中、赦す辺りから影武者の男は真なる王の風合を身に纏って行く姿を演じるイ・ビョンホンが見事である。
・影武者の男が”平民の視点”で行う数々の善政や、女性を含む臣下を思い遣る姿が沁みる。
ー 女官たちの食事が、自らの食べきれないほどの食事の余りである事を知った時の、彼の行い。
ちょっと、排便の際を見られるのは嫌だけどね。けれども、便の吟味は江戸時代から近代の天皇陛下も行われていたよね。-
・王を毒殺しようとする輩から指示された女官が、サウォル(シム・ウンギョン)に王の好物である”小豆粥”に毒を入れる様に指示するシーン。
ー だが、サウォルは自身の境遇に耳を傾けてくれた王に、毒入りの”小豆粥”を供する前に自身が味見して、血を吐いて息絶えるシーンは、泣けるよ・・。
真の臣下に慕われる王とは自身の為に身を呈する部下が、いるかいないかだと思うよ。-
・王妃が、実王が兄、ユ・ジョンを罪人としていたために冷え切った関係になって居た中、影武者の男の行いにより、徐々に且つての愛を思い出すシーン。
ー 影武者の男が、王妃に対して言った言葉。”笑顔を・・。”可なり沁みる。
だが、影武者の振る舞いを見て怪しんだ実直な臣下、卜部将に対し、王妃及び影武者が行った慈悲ある行為。故に彼は影武者の男に深々と頭を下げるのである。そして、彼の存在は再後半に見事に輝きを放つのである。-
・王妃が影武者が胸に傷がない事で、実の夫ではない事に気付くシーンでも、最初は憤りつつも、影武者の男の善なる民や臣下を思う姿に、それを赦す姿。
<真なる王が病を乗り越え、復活する知らせを聞いても、影武者はギリギリまで民を思った勅命を出すのである。
そして、真なる王が正気を取り戻す中、予定では影武者ハソンは殺される筈なのであるが、実直な臣下である卜部将は、且つての恩義を忘れずに彼を逃がすのである。
更に、影武者ハソンが船で、地を離れる際に只一人、彼を見送りに来た臣下ホ・ギュンは彼に対し、笠子帽を取り、深々と頭を下げるのである。
今作は、韓国の名優の一人であるイ・ビョンホンの硬軟合わせた演技が見所でありながら、”真なる王(リーダー)の資質とは何であろうか”という深遠な命題を問うてくる作品でもあるのである。>