一命
劇場公開日:2011年10月15日
解説
滝口康彦が1958年に発表し、62年には仲代達矢主演の「切腹」として映画化もされた時代小説「異聞浪人記」を三池崇史監督が3Dで再映画化。江戸時代初頭、大名の御家取り潰しが相次ぎ、困窮した浪人たちの間では、裕福な大名屋敷に押しかけて切腹を申し出ると面倒を避けたい屋敷側から金銭を与えられることを利用した「狂言切腹」が流行していた。そんなある日、名門・井伊家の門前に切腹を願い出る1人の侍・津雲半四郎が現れ、井伊家の家老・斉藤勘解由を前に驚くべき真実を語り始める。主演は歌舞伎俳優・市川海老蔵と瑛太。共演に満島ひかり、役所広司ら。
2011年製作/126分/G/日本
配給:松竹
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2022年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
元作の『切腹』(1962年)と筋立ての点で大きな変更はないようです。
モノクロ作品の元作から、本作はカラー化されたことで、紅葉など、ドラマの中での時間の経過(季節の移り変わり)の描写が効果的に使われていました。
「リメイク作品は元作を超えない」という評もときおり耳にしますが、本作は、元作とはまた違った味わいができた一本でした。
前作や原作を知っていると、これが軽薄に見えるらしい。
市川海老蔵じゃダメで満島ひかりもダメ
なんだそうだ。
なるほど。
ただ 漠然と(瑛太の切腹風景は見てられなかったが)
娯楽(という言い方もこの場合不適切な言い方だが)
として視聴したので、その類のレビューを見て、そうだったのかと驚いた。
まあ栄養状態の酷い母親の乳でこんなにぷんぷくりんの赤ん坊はナイわ、とは思ったけれど。
というか、これってホンモノの赤ん坊を使ったのだろうか。
最後の海老蔵の殺陣は美しく、満島ひかりの演技ももちろん申し分無し に見えた。
満島ひかりの子ども時代は、もうちょっとなんとかならないものか、こういうところに子役の層の薄さもしくは起用の仕方をハリウッドと比較してしまう。
あの顔は将来満島ひかりには、なり得ない。とは思ったが。
瑛太の、竹光での切腹は全く惨たらしい。
人を痛めつける快楽が顔に現れている二名(青木崇高と浪岡一喜)の起用が全くこの場合の悪役にうってつけで、そこに追加される新井浩文の中途半端な存在も良い。〜この演技がもう見られないかと思うと甚だ残念でしかない。
まあ 言われてみれば、
押しかけて来る狂言切腹は、来られた方もこれはこれでただの迷惑にしか過ぎないではないかと見えてしまう、という意見はごもっともであり、海老蔵の殺陣を見つつ、そういう風に感じたのも正直なところではあった。
この作品では、容赦ない体面のみを重んじる武士という存在の空虚さ を描こうとしている訳で、
国民一律医療も公的扶助も一切なく 雇用を切り捨てられた者はもはや生きていく事自体が困難となる有り様を描き切った。
竹光で美しい演舞とも言える殺陣を見せる海老蔵浪人の頑張りは、竹光であるが故に相手の人数は全く減りはしないのでいつまで頑張ろうが終わりはない。
海老蔵の刀は実は三人の死の時は竹ではなく、瑛太は父から譲られた立派な一振りを既に金に変えていたのに自分は武士の矜持に縛られていた(あってる?)事すらも恥ている。たぶんその後に竹に変えて井伊家へ という事のように見えた。だからこそ
ホンモノの刀を持つものが怯む程の殺気を 人を一太刀で切り捨てられる武器を手にしているからこそひしひしと感じて腰が引けてしまう、その描き方は見事だった。
と思ってしまって ほお〜っと思いつつ視聴し終わった私は物知らずなのか、となったのだった。
配信でしか見てないしね、という弱みでもあります。
とは言え前作の「HARAKIRI」を この作品以上に残忍さを増す物を 見たいかというと まあ 見なくてもいいか と思う。
2020年9月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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2回目の鑑賞。
1回目は映画館、今日はFODで。
自分の力ではどうにもならないことを、
大切な人のために、人に頭を下げる。
プライドを捨てること。
それは、恥ずべきことなんだろうか。
武士として。
誉れのために生きる侍の考えは
今の時代を生きる私には想像も出来ない。
病に伏せた我が子に、何でもするといいながらも
刀は捨てれなかった。
刀を捨てるなんて考えもしなかったのかもしれない。
しかしモトメは、本を捨て、刀を捨て、
何もかもを投げ打って、
妻と子のために尽くしてくれていた。
最後は我が身も投げうる。
武士の誇りとは何なのだろう。
懐に入れ、持って帰っていたお茶菓子を
美穂が食べるシーンが泣ける。
妻を想い、夫を想い、子を想い、親を想い、
ただ、皆んなで過ごす春が来ると願っていた家族の
悲しい物語だった。
海老蔵の所作が一つ一つ美しい。
特に立ち回りのシーンの目力が凄くてカッコいい。
さいごの刀を抜いたとき、まさか木刀であったのがなんとなく分かってはいてもゾクっとした。
瑛太の切腹シーンの演技が素晴らしい。
満島ひかりの幸薄い雰囲気も良かったし
竹中直人の引いてる顔も良かった。
青木崇高のさいごの血を吹く顔も良かった。
坂本龍一の音楽も、素晴らしかった。
あとセットが汚い貧乏な雰囲気がリアルで良かった。
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浪人側と井伊家のどちらから見るかで、事件の風景が大きく変わる。前半と後半ではまるで別の映画のよう。「スリー・ビルボード」と通底するものは一緒。いい日本映画。
予告編はもう少し考えて作って欲しかったな。あれ見たら筋が読めてしまう