劇場公開日 2011年10月15日

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一命 : 映画評論・批評

2011年10月4日更新

2011年10月15日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

海老蔵の所作を押し出すことによって表した現代における時代劇の在り方

小林正樹監督作「切腹」(1962年)のリメイクではない。と、プレス資料にはあるのだが「十三人の刺客」「忍たま乱太郎」に続く監督三池崇史の時代劇、やはり小林版と比べてみたくなる。

関ヶ原から30年。形骸化する武士道に振り回される人の愚かさ、痛ましさを突く姿勢はどちらの映画でも太い背骨となっている。横行する狂言切腹。また今日も――とあしらうつもりで初老の浪人と向き合った井伊家江戸家老が竹光で腹を切るはめに陥った先例を語り、武士の情けは何処へと、浪人の反撃が展開される。これも新旧両作共通だ。

要所要所の台詞を効かせサスペンスを紡ぐ手際は、正直言って小林版に一日の長がある。回想と現在の入れ子構造による物語り。緊密に研がれるモノクロの画調。ズーム。屋敷の中庭を軸にした演劇的時空。そのじりじりじわじわの果てに黒澤明姿三四郎」へのリスペクト満載の風と草原の対決の場が炸裂――と、絶賛しかけて実はこの「切腹」が、既にシンプルに活劇を究められた幸福な映画の時代にはいない事実も、無視し難く迫ってくる。西部劇でいえば、この2年後にレオーネの「荒野の用心棒」が出現する。そんな時代の流れを踏まえると、時代劇がイベントとしてしか成立し得ない現在、その不幸をいっそ壮大に究めることで挑発する三池時代劇の位置も改めて浮上してくる。そこで身に染みた美しい所作をただただ放り出す海老蔵。形で魂を射抜くその在り方。それが小林版の分厚く塗りこめた感情のリアルの演技に対して差し出された、三池版の主題の調理法ともみえてくる。というわけで新旧作見比べてこそのスリルに注目したい。

川口敦子

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