抱きたいカンケイ : 特集
第83回アカデミー賞授賞式。「ブラック・スワン」で見事に主演女優賞を獲得したナタリー・ポートマンは、妊娠中の大きなお腹を抱えながら幸せでいっぱいの笑顔を見せた。“子役は大成しない”というジンクスを打ち破り真の栄光を手にした今年は、出演作が4本も公開されるという当たり年。そんなポートマンの魅力に迫る。
業界の常識を覆してついに栄冠を手にした真の演技派
ナタリー・ポートマンが魅せる“新境地”とは!?
■「ブラック・スワン」で念願のオスカー受賞!
女優・ナタリーの魅力と「抱きたいカンケイ」の“ツンデレ”っぷりは?
ポートマンの女優としてのキャリアのスタートは、2000人の候補者の中から選ばれたリュック・ベッソン監督作「レオン」のマチルダ役で13歳のころ。純粋な少女性が世界中の映画ファンを虜にしたが、彼女が長けていたのは、ファンが求めたそのイメージに自らを埋没させてしまわなかったことかもしれない。「世界中がアイ・ラヴ・ユー」「マーズ・アタック!」など、個性派監督の作品に出演し、99年には「地上より何処かで」で、早くもゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネート。同じ99年には「スター・ウォーズ」シリーズ新3部作のヒロイン、アミダラ女王を演じる一方で、名門ハーバード大学に入学(03年に卒業)。彼女の才能とバランス感覚に優れたセルフ・プロデュース術が、一女優に留まらないことを感じさせた。
大学卒業後、04年の「終わりで始まりの4日間」の高評価を皮切りに、「クローサー」でのゴールデングローブ賞受賞、アカデミー助演女優賞ノミネートと、演技派女優としての飛躍を果たす。だが、女優業一辺倒にならないのが彼女らしいところ。08年には自身の映画製作会社を起ち上げて監督業にも進出(短編)、脚本の執筆も手掛けている。
“美貌と知性を兼ね備えた演技派”“才色兼備”と評されることの多いポートマン。彼女の魅力は、その容姿はもちろんだが、マルチな才能に裏打ちされた多面性や懐の深さでもある。彼女が念願のオスカーを獲得した今年は、「ブラック・スワン」、「水曜日のエミリア」(製作総指揮も兼任)、「抱きたいカンケイ」、「マイティ・ソー」の4作がまとめて観られるという当たり年。なかでも「抱きたいカンケイ」は、彼女のキャリアでは珍しいラブ・コメディ。それも“ツンデレ”の役というのだから、彼女の新たな一面を楽しめるのは間違いない。
■映画ライターが見る“女優ナタリー・ポートマン”とは?
同性が見た“女優ナタリー・ポートマン”とは? キャリア全体を俯瞰して見たポートマンと、「抱きたいカンケイ」におけるポートマンの魅力を2人の映画ライターが述べる。
才色兼備を絵に描いたような凛々しさ(赤尾美香)
男性から見たら可愛げはないし、分かりやすい色気もない。でも私は、才色兼備を絵に描いたような凛々しさが好きだ。実際彼女は「レオン」での鮮烈なデビュー後も学業を疎かにせず、ハーバード大で心理学の学位を取得した等、この手の話には事欠かない。それゆえどんな役であっても、どこか優等生イメージが重なる。それが嫌味にならないのは、薄幸顔が“パーフェクト”を阻止するから。美人だけど薄幸。オスカー獲得作「ブラック・スワン」では、この薄幸顔が緊張感あるサスペンスに映えていた。一方彼女にしては珍しいラブコメ「抱きたいカンケイ」では、愛を信じられず身体の関係だけを望むMIT出身の医師という、彼女らしさとそうでない部分のブレンドと、薄幸顔が溌剌(はつらつ)とした笑顔になる瞬間が新鮮だった。個人的には「終わりで始まりの4日間」のサラ役が1番好きなのだが、29歳、今春母になるナタリーの、薄幸顔をものともしない大胆な冒険も期待している。
過激で脆い等身大のヒロイン像は、まさに新境地(平井万里子)
週80時間のハードワークをこなす女医―――これだけ聞けば、聡明なナタリーにピッタリの役と思うだろう。だが、その予想は開始早々裏切られる。今回、ナタリーが挑んだのは、勢いで男友達アダムと関係をもち、その後もメールで彼を呼び出してはセックスだけの関係を楽しむという奔放すぎる女性エマ。互いに恋愛感情を持つのはNGで、彼に“添い寝”されてブチギレたかと思えば、他の女と一緒にいるのをヤキモチ焼いてみたりと彼女の言動は常に予測不能だが、キュートなナタリーが演じるとどこかニクめない。そして相手とのドライな関係を望む背景には、恋をして傷つきたくない現代女性の本音もチラリ。ちょっぴり過激ながら、女性特有の“脆さ”も合わせ持つ等身大のヒロイン像は、ナタリーにとってまさに新境地となった。
■デートも恋愛感情も束縛もナシ。セックスだけの関係ってあり!?
ライトコメディの名匠ライトマンが描くキュートなラブ・ストーリー
ずっとトモダチのままだった男女が、その場の勢いながらも男女の一線を越えていい仲に。でも、彼女が口にしたのは、「デートも束縛も恋愛感情も一切ナシ。セックスだけの関係にならない?」という提案!? 恋はしたいけど、本音をぶつけて傷つけ合うのが怖い……そんなセンチで臆病な女性の本音を含みつつ、セックスから始まる幼なじみ同士の恋模様を、「抱きたいカンケイ」はコミカルかつキュートに描いていく。
メガホンをとったのは、「ゴーストバスターズ」「ツインズ」「Gガール 破壊的な彼女」ほか、笑わせて最後はホロリとさせるライトコメディを手掛け続けてきた名匠アイバン・ライトマン。多忙すぎて恋するヒマもないツンデレ女医にナタリー・ポートマン、そんな彼女に献身的に尽くすテレビADにアシュトン・カッチャーを配して、“コメディ慣れしていない”ポートマンと“コメディ慣れ”のカッチャーという掛け合いの妙味も必見の良質なラブ・ストーリーを完成させた。