冷たい熱帯魚のレビュー・感想・評価
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ここに描かれる狂気は決して絵空事ではない
醜悪、下品、馬鹿、どんな軽蔑の言葉を尽くしても表現できないような下卑の極致の登場人物たちに圧倒される。強者を気取ったものが自分より弱いものを容赦なく食い物にしていく様子には妙な説得力がある。それは狂気の沙汰の裏にある人間の弱さもきちんと描き込んでいるからだと思う。負のエネルギーが全身を貫く経験が少しでもあれば、ここに描かれる狂気は決して絵空事ではないと思えるだろう。
なぜこんな演技ができるのだろうと俳優達の凄さに感服した。詐欺師まがいの社長のまくし立てるような喋り、また血糊に塗れて絡みつくシーンが最高だった。
作品と人物とは別もの、作品には罪はありません しかし本作においては、監督にそのような異常な精神構造があったからこそ、このような異常な映画を生み出すことができたのだ そのように思えるのです
傑作です
それも突き抜けた世界的な傑作だと思います
恐ろしいことに、映画が終わったとき、私達はカタルシスを感じてしまうのです
「もし再編集することが可能なら、でんでん演じる男が吹越満演じる男に刺殺され、黒沢あすかが笑っているくだりでエンドロール、という形にしたい」と監督は語ったそうです
つまり、監督はそのカタルシスを観客に与えたのは間違いだったと考えているようです
観客をカタルシスに至る道だけを示して終わるべきだったという意味は何でしょうか?
それは観客を本作を観た後に強い欲求不満に置いて帰らせるべきだったと考えている
そう言うことだと思います
そうすることで、観客をその欲求不満に耐えかねて、やがて猟奇殺人を夢想するように仕向けたい
それが監督の本当の狙いだったように感じるのです
序盤から、観客に主人公に感情移入をさせ、怒りと反撃の感情の圧力をどんどん高めているのは、クライマックスのカタルシスを与えるための計算された伏線であったのです
妻や、娘がともに乳房の大きな女優が配役され、妙に胸もとの広くあいたセクシーさを強調した衣装、主人公を実は愛していない妻、レイプされて喜ぶ妻、再婚するまでは優しい娘だったのが、手のつけられない反抗的な娘に変わってしまう
あざといぐらいです
主人公が攻守入れ替わって徹底的に反撃するクライマックスを敢えてカットして、観客を欲求不満に陥れること
それが本当の監督の狙いであったのなら、その為の伏線もまたあざといとは思われなくなるだろう
そういうことだと思えます
恐ろしい映画です
こんな映画は世界を見渡してもないと断言します
唯一無二です
そら恐ろしい傑作だと思います
つい先日このようなニュースを読みました
「園子温の性加害を出演女優らが告発!「主演にはだいたい手を出した」と豪語する大物監督の“卑劣な要求”」
記事にはこんなことまで、書かれていました
少し引用します
「確かに、すべての監督がそうでないにせよ、少なからず現実に起こっている“異常”な実態があるんです」
そう話すのは、さる映画配給会社の幹部だ。話を続ける。
「今も平気で“俺とヤッたら仕事をやる”と言う映画監督がいます。彼の作る映画は評価が高く、作品に出たがる女優はたくさんいます。それを利用して、彼は当たり前のように女優たちに手を出している。それが、園子温です」
作品と人物とは別もの
監督や役者の不祥事で、作品をお蔵入りにするのは、自分はおかしいと思っています
作品には罪はありません
しかし本作においては、監督にそのような異常な精神構造があったからこそ、このような異常な映画を生み出すことができたのだ
そのように思えるのです
だからといって、優越的な立場を利用して性加害を行ってよいのでしょうか?
良い映画を撮るためには何でも許されるのでしょうか?
その為には監督の要求には理不尽なことでも、性被害をうけても従うべきなのでしょうか?
そんな事を許すくらいなら、そんな映画なんか無くていいと思います
せっかくの傑作がそのような行為によって、撮られていると思うだけで胸糞が悪いのです
本作の肉体を「透明」にする作業のシーンよりももっともっと胸糞が悪いとは思いませんか?
園子温監督のファンです
自殺サークル、紀子の食卓、愛のむきだし、そして本作
どれも傑作です
心の底から世界でも屈指の才能のある監督であると思っています
それでもそう思います
全員狂ってていい!
やっと観られた
狂気!
こんなにグロいとは思ってなかった。
いつか見ようと思って先延ばしにしていた。
どんな話なのかも調べもせずに鑑賞。
普通にカップラーメン食べながら見てたんだけど、序盤から嘔吐のシーンがあり、おや?と
勘繰る。(←いつも、このパターン)
あの、働いていた若い女の子たちは
どんな使い方をされていたのか?
きっとエロいことに違いない…なんて
思っていたら、グロいシーンたくさん出てきて、これは苦手な人には無理だ〜と思ってみていた。なんだか、見ているこちらもおかしくなるような出来事ばかりで、正直胸糞わるいが、
結局最後まで見れちゃった。
まず、思うのが、なぜ警察に行かない?ってこと。怖くて行けないということなのかな。洗脳なのか。
結局なんで、でんでんはあんなに殺人を繰り返していたのだろう。短気なだけ?金がほしいから?
30人も周りで行方不明になっていたら
警察もなにか掴めてそうだけど。
グロにわりと強いけど、解体シーンとかはちょっときつい。なんだかズシーンとくる。
終わったあと、我が子の寝顔見たら
スーッとそれが抜けた。
やっぱ我が子はかわいい。笑
某事件が題材と聞いて。
謎のハッピーエンド感。
おとぎ話
凄まじい作品だった。
どこか、おとぎ話ならいいなぁと考えるのだけど、現実とは切り離せない部分に、この作品の核があるようにも思う。
「人生ってな痛いんだよお」
主人公が最後に放つ言葉だ。
何事にも簡単な事はない。いや…簡単なプロセスには簡単な結果しか訪れない。そんな事を呆然と考える。
娘の前で、首を掻き切る主人公。
「やっと死にやがった、クソジジイ」
娘は父親を蹴りながら高らかに笑う。
見開かれた虚ろな眼からは、主人公の心情は読み取れない。今際の際に彼は何を想っていたのだろうか?
全部手遅れだった。
楽な方、簡単な方を選んだ報いなのだろうか?
その自死も、やはり簡単な方なのかもしれない。
見せ方というか、求心力というか…。
暴力と性と血と狂気と。
よくまぁこんな脚本を思いつくなと惚れ惚れする。
息も絶え絶えな時に呟くでんでんさんの台詞とか、ブチ切れた後の家族の食卓とか。
それだけではないのだけれど、その暴力と性の隙間に挟み込まれる本性のようなアレコレが、人として業を想起させる。
役者陣は皆さま熱演で…でんでんさんと吹越さんは絶品だった。
スピード感がとにかく凄い。
でんでんさんの口調もそうだけど、シーンもカットもガンガン飛ぶ。一旦乗ったら、下ろしてもらえないジェットコースターのようだった。
…僕らは何を誤解していたのだろうか?
世の中には楽しくて面白い事ばかりがある訳ない。
極端ではあるが、コレすらも人の営みの側面だ。
なんか、平和ボケした頭をハンマーでぶん殴られたような気がする。
上手にコラージュされた文明の中身なんてこんなもんだ。見ないように振る舞っていても、すぐ隣ではこんな日常もあるんだよ。
何を呑気に構えてるんだ、と。
それをちゃんと認識し、自分も同類だと立ち位置を確かめてから、まずは立てよ、と。
そう言えば、ラストに歩く吹越さん歩き方が異様だったな。あんなに直立に立てるもんなんだなぁと、そんな事思ったの思い出した。
疲れるだろうなぁと予想していた本作。
大変、疲れたのだけれど、コレを避けて通るようではたかだか知れてると、そんな事も思えた。
色んな意味で、見るべき作品だった。
■追記
レビューを見返す機会があり、ふと去来した感想を書き留めておく。
結構な残酷描写はあるものの、それらはコケ脅しや映画の文法に則ったものではなく、必然だったり必要性の方が強かったのではないかと思う。
やり過ぎでもなく、やらな過ぎでもない。
装飾でもなくスパイスでもない。
なんちゅうか、場所も行為も全てはキャラクターに由来するようだった。「こんな奴がこんな事をする為に必要なアレコレ」そんな所から起因した発想のように思う。伏線の集大成というか…つまる所、人物への造詣が異常な深度だったように思う。
たぶんなら、それこそが園監督の真骨頂なのだろうなとボンヤリ考える。
だから、商業ベースで撮った「新宿スワン」は面白く思えなかったのだなと、変な所で得心を得た。
冷静に見るとドタバタコメディ
人の言いなりになるって嫌だなぁ!!
後味は悪い。でも現実の描き方がおもしろい。
やりたくない家事をこれほどうまく表現できるのかと思う出だしがとても良かったです。
気持ち良い出だしから、いきなり豹変する人間、連続殺人犯が人の弱みにつけこみにこやかに近づく怖さ、簡単に飲みこまれる人間の愚かさ、弱さ…どんどん引き込まれていきました。
父親に暴力を振るわれ、母親に助けてもらえなかった過去を持つと思われる村田さん。
守ってほしい両親に守られなかった絶望が、いきなり豹変し残酷な行為を繰り返す村田を生んだのかなと思いました。
暴力や不幸は連鎖する絶望的なストーリーですが、最後主人公がこれまで溜めこんだものを吐き出しスッキリする様子は気持ちよかったです。
浮かれない現実の残酷さが描かれていると思います。
ホラーとしては完璧、感想としては「惨い」
Netflixにあらすじが載っていたせいで早々にネタバレを喰らって、「ああ、そんな展開ね」とあまり期待せずに見たが、見終わって納得。
確かにあらすじだ…あの少ない文面だけでこの映画の終わりまで予測するのは難しいように思える。
ハラハラし続けた。ついでに怖くて涙も少し出た。ホラー映画としては完璧。だが、オチについては最後まで救いがない。惨い。
ここまで軽めの感想
ここからがっつりネタバレ。
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この映画でも述べられていた通り、生きることは確かに痛いのかもしれない。人を殴ると殴られた相手も、殴った自分の手も痛くなるように、自分の感情を思うがままにぶつけると苦しくて痛いのだ。そんなことが起きないように、私たちは普段から表面上で優しい言葉を並べ、本能を隠し、家族や恋人や他人と、お互いを傷つけないように努力してるんじゃないだろうか。だからこそ、この映画のメッセージ性が際立つ。
痛みを避けることで良いように運ぶこともあれば、この映画の主人公のように問題を抱えたまま、不満足な日常を送る事だって充分あり得る。だから時にはお互いの思っていることを相手に伝えて、発散させることも必要じゃないか、痛みをぶつけ合うことも必要じゃないか、と問い掛けるのがこの映画。
そんでもって、最後に主人公は自分の欲望を発散できるだけ発散して、自殺し、娘に「死んで清々した」なんて蹴られる訳だから、なんとも言えない気持ちにさせられる。
痛みを押し付けあって死ぬことが幸せか、口を閉じ、自分を殺して生きることが幸せか、考えさせられますね。
魚ちゃんのエサ
園子温「家賃3部作」の一作目。
ようやく観ることができました。
実際に起きた事件を基に作られた物語。
熱帯魚店を営む社本は、ある日自分の連れ子の娘が万引きしたことをきっかけに、村田という男に出会う。
村田は自分よりも大きな熱帯魚店を経営しており、人柄も良く何かと世話になるようになるが、村田の本当の顔が明らかになっていき…
娘や嫁を弱みというか人質に取られ、殺人の手伝いをせざるを得ない状況に追い込む、村田の巧みな話術。
普段はニコニコしているけれど、殺しの時は人が変わったように感情をなくす。
「でんでんさんが恐ろしい」と聞いていましたが、噂通りの怪演でした。
そして村田に洗脳され、最後には自分も狂い壊れていく社本も、吹越さんにしか演じられなかったと思います。
黒沢あすかさんのドスの効いた声と芝居も迫力があって素晴らしかった。
グロ描写もしっかりあって、単にグロいというよりは、園子温映画らしい生活感のある汚さや血生臭さが際立っていたように思います。
耐性ついてきた私はいけましたが、やはり苦手な人は要注意かも。
基となった埼玉愛犬家連続殺人事件について、少し調べてみましたが、これはまた映画以上にとんでもない事件ですね。
概要を見る感じだいぶ実際の事件に寄せてきていて、『愛のむきだし』に比べるとかなり忠実。
直接、埼玉愛犬家連続殺人事件の映画化といっても支障がないほど、そのまんま。
ペットショップから熱帯魚店への改編も良かったと思う。
wikiによると主犯のSは、
「殺しのオリンピックがあれば、俺は金メダル間違いなしだ。殺しのオリンピックは本物のオリンピックよりずっと面白い」とか、
「死体がなければただの行方不明だ。証拠があるなら出してみろ。俺に勝てる奴はどこにもいない」とか、
「最初は俺も怖かったが、要は慣れ。何でもそうだが、一番大事なのは経験を積むこと」とか、
「臭いの元は肉だ。そこで透明にする前に骨と肉をバラバラに切り離すことを思いついた」などなどサイコパス発言の数々に震え上がる。
しかもSは獄中で病死。胸糞悪ぃぃぃ
(映画のラストは『地獄でなぜ悪い』的な投げやり感〔それが園子温映画の魅力の一つですが〕があるので、正直胸糞悪くはならなかったけれど)。
人生は痛いんだよ!
ある意味パラサイト。
このとんでもない世界観の中でも家族や人生のテーマはしっかり生きていて、普通の人ゆえの豹変や裏切り、家族の崩壊などエログロだけではない秀作でした。
身近にいるこんな人。
なかなか自分の中から“村田”というワードが抜けません。
視聴前から作品名は知っていて、
日本の有名なずっしりした映画。 という印象でした。
vodに2つも加入しているんだから
有名なやつはとりあえず見て、知ってる状態になっとこ!
という軽率な気持ちで見ました。
まず思ったこと。
「村田みたいな人っておる~。。。」
営業トークというか深く踏み込まなければ
心地よく話してくれる感じ。
ふいに感じる違和感。
土足で人の心に踏み込んでくる図々しさ。
周りに仲のよさそうな人がたくさんいて
慕われているように見える。
頼もしく感じる。
お茶らけていて、おもしろい。
垣間見える恐さが不気味で本能的に恐怖を感じる。
そんな役柄を
でんでんさんが見事に演じていらっしゃいます。
一緒に悪事を働いていた
THE悪役の渡辺哲を殺したときに
あー恩とか人情とかないんだ。
と感じました。
まあ、猟奇殺人犯にそんなもんはないでしょうけど。
男女の関係も狂っています。
殺め方も人を利用するやり方も後味が悪く
気持ち悪いですが、
何よりもこの男女の関係が一番気味悪かったです。
そして冷え切った家族関係。
村田というスパイス。
言うことを聞かない娘・愛のない妻にたまったフラストレーションは
こんな感じで爆発してしまうんでしょうか。
意外にも痛そうなシーンがあまりないのでグロテスクさは
あまり感じませんでした。
頭部だけになった渡辺哲を差し出されたときはギョ!!!としましたが
もう痛覚がない物体を鼻歌歌いながら解体しているので
うーー痛そう!やめてーーーー。
と思うところが無いのは疲れずに済みました。
ただ、これは実話を元にしていますので
そのあたりを想像すると、人間は恐ろしいですね。
基本的に映画は作り物 として見てしまうので
こんな解体シーンもへっちゃらでしたが
現実にそんな事をしでかしている人が
何人もいると思うと、背筋が凍る思いです。
だって、冷静に、医学の勉強をしたわけでもないのに
皮膚を切り裂いて肉を切って・・・
よくできますね。猟奇的殺人鬼の脳内は理解できません。
で、すっきりしないラストシーン。
「やっと死にやがったな、くそじじい!」
そこまで心が死んだ言葉が言えるような育ちや環境でしたでしょうか?
私も可愛くない娘でしたが、
きっとこの時
「やっと死にやがった」
と思いません。
そう言い放つほどのことをお父さん(社本)はしてたんでしょうか?
私にはわかりませんでした。
あと、この劇中のでんでんさんが笑えるというのも
到底理解できません。笑
有吉はこのでんでんさんが面白過ぎて爆笑しちゃうそうですが、
私はこの映画全体を通して、笑えるセンスは持ち合わせておらず、
ブラックユーモアを面白いと思わないのか・・と知れてよかったです。
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