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繰り返し見たが、わからない事が沢山ある。
マルティーナの一家は船に乗り列車に乗り換え、最後は徒歩でどこからかやって来て住み着いた。そして小作となった。
「世界中を転々としてきたあんたたち」と言われている。
マルティナは学校で笑われいじめられている。“くさい”と囃されるが、それがシラミ退治に使った石油の臭いなのか通常の意地悪なのかは示されない。
マルティナの父は「地主は収穫物を取り過ぎる」と考えているらしいが、他の小作よりも多く取られているのか他の小作達も同じように多く取られているのかは不明だ。
もしかしたら彼ら一家はロマなんだろうか?差別されている? でも会話の中に決定的な言葉は出てこない。
ナチスドイツは悪だ。それでもドイツ兵もまたさまざまであることがあちこちに差し挟まれている。
パルチザンを追ってマルティーナの家へやってきた兵隊の内の一人は自分のパンを子供らに分け与え女たちが差し出す林檎ジャムを受け取る。
一人の女性が気になったようで視線を止めるが、それは彼女の人権を踏みにじる眼差しではなく、美しい女性への憧れ故のように見える。うなじが細く青年兵というより少年兵に近い。若さが痛々しい。
パルチザンに捕まり己の墓穴を掘らされた後殺されたドイツ兵もいた。
パルチザンへの報復として女子供をまとめて殺すシーンでは「撃て」の命令に従えず引き金を引けない兵士もまた。
物語の進行が時系列通りであるならこれらの三人の兵は同一人物ではない? 一人目と二人目は同じ? わからない。でもわかる必要はないのかもしれない。そういう無名の彼らはいくたりもいたのだろうから。
マルティーナは表情を変えず殺す者殺される者をひたすら見つめる。
言葉を発することもほとんど無いので彼女が何を感じたのかはわからない。
おじさんが何かを埋めている。家の壁に大切に祀ってあった聖像を埋めている事はわかるのだけれど、それだけにしては穴が大き過ぎる。他の物も混じっているのかもしれない。でもそれが何なのかは見えない。その何かを見たらしい?マルティーナの父親はその後自滅する。
全編聖書が散りばめられている。
冒頭では清けき妊婦マリアの聖画にマルティーナの母親が捧げ物をする。
マルティーナ 一家はなぜかもうすぐ生まれて来る赤子を男の子だと信じていたらしい。父は大きな腹にキスをして「何が入ってる」と妻に問い、すぐに「世界のすべてだ」と自答する。やがて現れる者はこの世界の全てであると。
村の人々は“教会に逃げ込めば助かる”と信じている。聖なる場所で殺人など行われない筈だから。
聖体拝受のドレスで走るマルティーナ。
圧政者による殺戮から逃げる清らかな乙女とその腕に抱かれるみどりご。
祈祷する神父:「ピラトの管下(チラっとナチ将校に目線)にて苦しみを受け十字架につけられた主を信じる…」
その祈りは「生ける人と死せる人を裁かんため来たり給う主イエスを信じる」と続くが(ここは神父渾身のパンチだと思うのだけれど)、将校は「誰でも教えられた事に従っている。教育だよ」とドヤ顔で応酬する。その笑顔の前に立つ十字架。ナチに略奪された品の中にも金に輝く十字架。どっちの勝ち?いや勝ちとか負けとかある?わからない…
わかんないなあわかんないなあと繰り返し見たが、やっぱりわからない。
情報が大変に多い。無駄シーン一切無し。だけど観客に説明してくれる親切が乏しいのでモガモガ(まあ観手の知識が足りない)、映像が美しく壁に見応えもある(煉瓦と薄い石とゴロンゴロンの大石混合で垂直壁面作っちゃうとか凄い!リユースなんだろうなあ、そういう技術が村人に伝承されてたんだろうなあ、上塗り禿げてんなあでも塗り直す余裕無い暮らしだったんだろうなあ(んでも殺されちゃったのね))
大変に良い映画だった。