劇場公開日 2010年7月23日

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インセプション : インタビュー

2010年7月22日更新
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渡辺謙のさらなる躍進が始まる「インセプション」

渡辺謙には、またひとつ大きなステップを駆け上がった充足感がみなぎっていた。「呼ばれれば、スーツケースひとつでどこにでも行きますよ」と公言し、「ラスト・サムライ」以降、その言葉を体現するように世界へと活躍の場を広げてきた。そして、巡り合ったのがクリストファー・ノーラン監督の最新作「インセプション」。渡辺にとっては、「バットマン・ビギンズ」以来5年ぶりのノーラン監督からのオファー。意気に感じないわけがなく、しかも自身を想定して脚本を執筆したと言われればなおさらだ。そんな強い思いをもって撮影に臨み、主演のレオナルド・ディカプリオらと作り上げた新機軸の多重構造ミステリーには、相当な手応えを感じている。(取材・文:鈴木元、写真:堀弥生)

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インセプション」に関して事前に明かされた情報は、ディカプリオが人間の夢の中に侵入してアイデアを盗む犯罪者、渡辺は彼に仕事を依頼する企業の幹部という設定くらい。スタッフ、キャストには厳重なかん口令が敷かれ、詳細は一切伏せられたまま製作が進められた。

渡辺へのオファーも、ノーラン監督がエージェントを通じ「とにかく会いたい」と連絡してきただけ。ケニアやタイなどでロケを行った主演映画「沈まぬ太陽」の撮影が佳境だったころだが、それでも終了後に即ロサンゼルスへ飛んだ。

「人間の深層心理に関する話というのは聞いていたけれど、脚本を読んでこれを大きなバジェットでやるんだ、相当なチャレンジだな、と。クランクインまで1カ月もなかったけれど、意気に感じたし、“おまえをイメージして(脚本を)書いた”と言われたらねえ」

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渡辺のプロフィルを振り返ると、映画に限れば過去に2本以上組んだ監督は、意外にも堤幸彦監督(「溺れる魚」「明日の記憶」)しかいない。それだけに、ノーラン監督からのラブコールは感慨深かったようで、短い準備期間などの不安要素を凌駕(りょうが)するほど魅力的なプロジェクトだったのだろう。

演じたサイトーというキャラクターは、役名こそ日本人のようだが、無国籍感が漂うミステリアスな存在。ディカプリオとは仕事上のパートナーにも映るが、敵なのか味方なのかも判然としないまま、ストーリーは幾層にも折り重なっていく。

「コンテンポラリー(同時代的)な役だからベースは持っておいて、役が動いていくのを現場で派生させていった。いいのか悪いのかコンフューズさせることを心がけた」

インタビュー2 ~渡辺謙のさらなる躍進が始まる「インセプション」(2/2)
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