劇場公開日 2010年7月23日

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インセプション : インタビュー

2010年7月22日更新
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クリストファー・ノーラン「インセプション」で奏でた愛の姿

「夢の中の世界を描く映画を撮りたいです!」。クリストファー・ノーラン監督は子どものころ、本当にこんな将来の夢を語っていたのではないか、と本気で思ってしまうほど、長い間抱き続けてきた構想を「インセプション」で結実させた。人の頭に侵入して、形になる前のアイデアを盗むという、虚実の入り混じった壮大な世界観を、丹念に練り上げた脚本とレオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、マリオン・コティヤールら“世界選抜”のアンサンブル・キャストで構築。アクションやミステリーの要素が強調して語られがちだが、ノーラン監督が最も意図したのは、さまざまな形で奏でられる愛の姿だった。(取材・文:鈴木元、写真:堀弥生)

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「インセプション」は、ノーラン監督が10年ほど前から夢に興味を持ち企画を進めてきた念願の作品。その間、「バットマン・ビギンズ」「ダークナイト」のシリーズ2作などで名をはせ、満を持して本格的に取り組んだといえるが、その源泉は父親の8ミリカメラで映画を撮り始めていた子どものころからあったという。

「特にすごいと思ったのは、夢の世界は心の中でつくっていながら、自分でつくっていることを考えずに体験している点。人間が心でつくり出せるものには、制限がない。本当に無限の可能性を秘めている。映画をつくるサイドにいる自分としては、観客に映画の中で現実から逃避するような体験をしてもらおうとしたんだよ」

こんなことを考える子どもって、どれだけ天才なんだよ、と突っ込みたくもなったが、ノーラン監督の表情は真剣そのもの。自らの夢に対するイメージを、観客と共有させることを念頭に置き、脚本に取り掛かった。執筆に長い時間をかけるうちに、テーマの軸足は徐々に変化していく。

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「最初は、夢の中の世界にはどういうルールがあって、どういう構造で成り立っているかに気を遣った。それが後半になるにしたがって、夢は潜在意識、内面の部分だから、やはり感情の部分が非常に重要だと気づいた。実際に見ている人が映画で最も共鳴するのは、ラブストーリー。そこが、脚本で一番重要としたところだ」

夢に侵入しアイデアを盗む主人公コブ(ディカプリオ)は、世界中から追われる身となり、祖国に残した子どもたちに会いたいと切望している。その愛の強さを逆手にとり、盗んだアイデアを別人に植え付けるインセプションという仕事が舞い込む。依頼するのは、渡辺扮する大企業の幹部サイトー。脚本の段階から、渡辺をイメージして書いたというノーラン監督にとって、思い入れの強いキャラクターだ。

インタビュー4 ~クリストファー・ノーラン「インセプション」で奏でた愛の姿(2/2)
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