セントアンナの奇跡 : 特集
「マルコムX」「インサイド・マン」のスパイク・リー監督の最新作「セントアンナの奇跡」が、7月25日より公開。スパイク・リーといえば映画ファンにはもちろん知られた存在だが、今回はその軌跡を振り返りつつ、新たな一面を見せた本作について紹介。また、本作の試写会で寄せられた、観客の感動の声もあわせてお届けする。(文・構成:平田裕介)
スパイク・リーの軌跡&実話から生まれた物語に寄せられた感動の声
■世界を「Change!」する。スパイク・リー監督の軌跡
混迷のさなかにあるアメリカを変えようと、「Change」を掛け声に黒人初の合衆国大統領に就任したバラック・オバマ。そんな彼が登場する約20年前から、映画の世界で社会に横たわる矛盾を訴え、それを「Change」させようとしてきた黒人映画監督がスパイク・リーだ。
ニューヨークの黒人街に暮らす人々の姿を通して根深い人種間の無理解を喝破する「ドゥ・ザ・ライト・シング」、黒人男性とイタリア人女性の恋から様々なタブーを浮き上がらせる「ジャングル・フィーバー」、過激な言動で人種差別撤廃に尽力した黒人指導者の波乱万丈な生涯を活写した「マルコムX」など、ユーモラスでありながら、時に過激で辛辣な独特の視点とスタイリッシュなビジュアルで衝撃作、問題作を生み出し続けている。
そんな、アカデミーやカンヌなどの権威ある映画賞でのノミネートも数多い映画人にして、その発言などで社会的関心を集める文化人でもある彼が、新境地を開拓しようと初めて放った戦争映画が「セントアンナの奇跡」だ。
第2次大戦末期の欧州戦線で、ナチス・ドイツを相手に激戦を繰り広げた米軍黒人兵部隊バッファロー・ソルジャーズ。その部隊からはぐれ、イタリア・トスカーナ地方の小さな村へと辿り着いた4人の黒人兵士が、そこで出会った謎めいた少年や村人たちと、人種、国籍、世代、思想を超えた交流の果てに、“ある奇跡”を起こす。
■戦場の実話から生まれた奇跡の物語に、感動の声が続々
本作は実話をベースにした戦地を舞台にした作品であるが、あくまで強く訴えるのは戦争という極限状況下でも揺るぐことのない人間同士の絆と愛。実際にナチスと連合軍が激しい攻防を繰り広げたイタリア・アペニン山脈で撮影されたリアルな戦闘シーンもさることながら、やはり見どころは監督が込めた深遠なメッセージとそれを具現化した描写の数々。
米軍兵士たちのドラマを描いた点は同じ欧州戦線を舞台にしたスティーブン・スピルバーグの「プライベート・ライアン」や“隠れた巨匠”サミュエル・フラーの「最前線物語」を、兵士と市民の温かな触れ合いを見つめた点はニコラス・ケイジ主演の「コレリ大尉のマンドリン」を、そして戦争に放り込まれた無垢な子供の姿を幻想的なタッチで捉えた点は「パンズ・ラビリンス」「蝶の舌」などの名作群を彷彿とさせる。
eiga.comでは、そんな本作の独占試写会を7月13日に実施。その会場アンケートでは、多くの観客から感動の声が寄せられた。ここで、その一部を紹介しよう。
★国を越えて、時を越えて、人の絆の大切さを教えられました。(20代/女性)
★ただの戦争映画ではない深い作品でした。(20代/女性)
★戦争、ヒューマン、社会派、すべてがミックスした映画だった。戦争の悲しさ、むごさ、人々の汚さ、その中の奇跡が見事にきれいに描かれていた。考えさせられ、と同時に心が洗われるような作品。(20代/女性)
★もう1度観たい。戦争は嫌だ、2度と起きないような世界にしたいとこの映画を観て思った。(40代/男性)
★感動できる、泣ける、ストーリーがいい。絶対に友人に勧めます。(30代/女性)
★非常に考えさせられる映画。戦争、虐殺、裏切り、差別など……でも最後に残った希望に涙しました。(20代/女性)
「社会派監督の戦争ドラマ」ということで、固い映画ととらえがちかもしれないが、本作はスパイク・リー自身が従来の“作家性の強い社会派”というイメージを打ち破り、奇跡的につながった人間同士の絆を描いた感動のヒューマンドラマとして、あらゆる層の観客の胸に響く1本となっているのだ。