ピラニア3D : 映画評論・批評
2011年8月16日更新
2011年8月27日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー
映画の楽しさに彩られた阿鼻叫喚の3Dパニックホラー
3D映画はどこへ向かうのか。それを考察するためにもこの映画を見ないわけにはいかない。夏休み、まぶしい太陽、輝くビーチ、セクシーな水着美女の群。そこにピラニアが来襲して阿鼻叫喚。飛び散る肉片も、噴出する血飛沫も、跳躍するピラニアも、み~んな“飛び出す3D”。やっぱ、3Dはコレが本領なのか? だって、こんなに楽しいじゃん! そう思わずにはいられなくなる。
この“飛び出す3D”を肯定したくなるのは、本作が、これを筆頭に映画の楽しさを思い出させる仕掛けを次々に繰り出してくるからでもある。冒頭に登場するリチャード・ドレイファスは、本作のオリジナル作「ピラニア」を含む海洋パニック映画ブームの原点「ジョーズ」へのオマージュ。マッド・サイエンティストを演じるのは、アレクサンドル・アジャ監督の少年時代のお気に入り「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドクことクリストファー・ロイド。さらに同シリーズのヒロイン、エリザベス・シューが主人公の母親役。極めつけは、裸体美女2人の水中遊泳。海洋SFの古典名作「大アマゾンの半魚人」の名場面、あの美女と半魚人の舞踏のような遊泳の21世紀型3Dバージョンをこんな形で見ることになろうとは。「ホステル」のイーライ・ロス監督がキャラぴったりの死に様を披露するというオマケも付いている。
こうした仕掛けが魅力的なのは、アジャ監督が、これらの昔も今も変わらない映画の楽しさを愛しているからだろう。「ヒルズ・ハブ・アイズ」「ミラーズ」、そして本作と次々にリメイク作を手掛けるのも、今も「ペット・セメタリー」リメイクの監督候補になっているのも、この愛ゆえに違いない。
(平沢薫)