脳内ニューヨーク
劇場公開日:2009年11月14日
解説
「マルコヴィッチの穴」「エターナル・サンシャイン」の人気脚本家、チャーリー・カウフマンの初監督作。妻と娘に家を出て行かれ、行き詰っていたニューヨークの劇作家ケイデン・コタードは、自身が思い描くニューヨークを実際のニューヨークの中に作り出すという、壮大な芸術プロジェクトを構想するが……。ケイデン役にフィリップ・シーモア・ホフマン、彼を取り巻く女性たちにミシェル・ウィリアムズ、キャサリン・キーナーら豪華女優陣が集う。
2008年製作/124分/PG12/アメリカ
原題:Synecdoche, New York
配給:アスミック・エース
スタッフ・キャスト
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2019年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
天才脚本家チャーリー・カウフマンが、スパイク・ジョーンズのために執筆した脚本でありながら、彼が他の企画に時間を取られなかなか身が空かず、「そんなら俺がやろう!」とチャーリー自らが監督業に乗り出した記念すべき作品がこれだ。
地味で真面目ながらも「00年代で最も重要な作品のひとつ」と評されるほどどこまでも中身が濃い、そして深い。ポストモダンという一言では決して片付けられず、むしろ「誰かが誰かの役を演じる」ことを通じて、没入したり、俯瞰したり、はたまた視点をガラリと変えながら、どこまでも不可思議な演劇実験を繰り広げていくという内容である。
一度に理解できなくても構わない。観るごとに気になるポイントや、受け止め方も変わる。これほど本作のことが好きなのに、奇妙なことに未だに全く掴みきれてないどころか、掴める気配すら微塵も感じない。それが人生。それでいいのだと、力んだ体をふっと緩めてくれる作品だ。
2023年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
私が◯鹿なんでしょうか?
非常に理解に苦しみました。
2021年12月28日
iPhoneアプリから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
虚構と虚構の間に一瞬だけ浮かび上がったリアリティさえも次の瞬間には虚構の一部となって色褪せていくやるせなさ。少しでもものを創ろうとしたことのある者であれば身に覚えがあるはずだ。
何をしても行為そのものばかりが、そこに込めた思いばかりが拒食症患者の骨格のように浮かび上がるあの無力感。自分がやっていることはあくまで人形遊びの範疇を出ず、そこに他者との生き生きとした交感などというものは存在しないのではないか。そう考えると途端にすべてが虚しく思えてきて、何もかも手につかなくなる。
メタ描写なんてのは一番の悪手だ。メタを重ねれば重ねるほどリアリティは遠のいていく。でも仕方がない。できることはそれしかないのだから。ケイデンはメタを重ねるごとに芸術者としての価値を減じていく。いや、これは彼なりの、ある種の自己破壊だったのかもしれない。リアリティを史上の価値とする芸術なるものからの脱却、そのための自己破壊。
しかしそれもうまくはいかない。どれだけ自我崩壊の断崖をふらついても、ケイデンはそれすらも結局のところ新たなる脚本のアイデアとしてメタ化してしまう。まさに無間地獄。永遠に逃れられない円環。もちろんそこには他者の温かみなどない。
この不毛なる堂々巡りから脱却できる手段は一つ。ケイデン役の老人がそうしたようにすればいい。つまりビルから一思いに飛び降りる。つまり死ぬ。
まあ、誰もが簡単にそう決意できるのであれば、わざわざこんな映画撮らないんだけどね…という死ねなかった臆病者の視点から綴られる痛切な創作苦悩論。
彼女のヌードが1番の見せ場でした、僕にとっては(笑)