ターミネーター4 : インタビュー
巨匠ジェームズ・キャメロンが創造した大ヒットSFアクションシリーズ「ターミネーター」。その新たな幕開けとなる最新作「ターミネーター4」が、この6月、ついにベールを脱ぐ。これまでのシリーズで語られることのなかった<審判の日>以降の未来世界を舞台に、機械軍<スカイネット>に抵抗する人類最後の希望ジョン・コナーの戦いが描かれる新3部作の第1章となる本作。eiga.comでは、本作完成前に来日したマックG監督に独占インタビューを敢行。新3部作の展望やテーマなどを聞いた。(取材・文:編集部)
マックG監督インタビュー
「“魂は人間のどこに宿っているのか”という哲学的な疑問が本作のテーマだ」
――どの段階から、この企画に参加しているのですか?
「ほとんど最初の段階から入っている。『ターミネーター』の続編の製作が進行中というのを聞いて、最初は興味がなかったんだけど、未来の戦争そのものを描くという話を聞いてから興味が湧いてきた。その時点での脚本はあまり好きじゃなかったが、ポテンシャルがあると思ったんだ。それで、キャラクター、ストーリーをより掘り下げてみたわけだ。僕にとって、映画のキャラクターで重要なことは、ある地点・立場にいる主人公が、映画本編を通して変わっていき、最後には、違う場所・立場にいることなんだ。そこで必要になってくるのが、演技力のある俳優。だから僕はクリスチャン・ベール、脚本家のジョナサン・ノーラン(クリストファー・ノーランの弟)、特殊効果のチャールズ・ギブソン、そしてスタン・ウィンストンを呼んで、ハイレベルな映像表現を実現するためのスペシャルチームを形成したわけだ」
――あなたが「ターミネーター」の続編の監督をするということで、「何故『チャーリーズ・エンジェル』の監督が?」と思った人は結構多いと思うのですが、この「ターミネーター」という映画は、あなたにどれくらいのインパクトを与えたのですか?
「僕のすべてに影響を与えたよ(笑)。最初に『ターミネーター』を見たのは僕がまだ子供の頃だった。凄く怖かったけど、映画そのものに魅了されたんだ。例えるならアミューズメントパークにある絶叫マシーンの面白さをすべてつぎ込んだような映画かな。僕にとっては、パーフェクトなゾンビ・ムービーだった。ターミネーターはどんな攻撃を受けても常に前に前進してくるからね(笑)。そのあと、しばらくして『ターミネーター2』を劇場で見た。技術的に素晴らしい映画になっていたし、アーノルド(・シュワルツェネッガー)が味方に変わるという、観客の意表を突いたストーリーも良かった。もちろんロバート・パトリックが演じたT-1000も素晴らしかった。実は『ターミネーター2』は僕に映画監督になりたいと思わせてくれた作品なんだ。だからこの『ターミネーター』シリーズは僕に深く影響を与えてくれた映画なんだよ」
――本作を作るにあたって、当然「ターミネーター」の生みの親であるジェームズ・キャメロンと会ったと思いますが、どんな話をしたんですか?
「彼は続編の企画をとても楽しそうに聞いてくれたんだけど、“なんで続編をつくるんだ?”って聞いてきたんだ。それで僕は“あなたが最初の2作でヒントをくれた未来の戦争映画を観客も見たいと思うはず。そしてジョン・コナーがどのようにして、人類抵抗軍のリーダーになっていくかというストーリーは多くの観客も興味を持つと思う”という話をしたんだ。すると、ジムは“それは良いアイデアだ”といって、肯いてくれた。続けて僕が、『ターミネーター』の最初の2作が僕にいかに影響を与えたかを話すと、ジムは『エイリアン2』を作ったときの話をして、“『エイリアン』は、リドリー・スコットを有名にした名作で、当時の人々は、あのリドリー・スコットのあとに続編を作るのはどんな奴だなんて言ってたけど、僕はリドリー・スコットのあとに続編をつくるなんて名誉なことだと思ったから引き受けたし、映画の出来に関しても、観客からの支持、完成度ともに満足しているから、やって良かった”とある意味僕を励ましてくれたんだ。ただ、これは彼から僕に対しての励ましであると同時に、“自分のターミネーターより面白いものを作ってみろ”っていう挑発でもあるわけで、僕はそれを受けたんだ。だから、僕は今はジムにこの映画を見せるのが楽しみなんだ。もちろん、彼が面白いと受け取るか、嫌いと受け取るかは彼の自由だけど、僕には正しい選択をしたっていう自信があるよ」
――今回も3部作になるとのことですが、やはりジョン・コナーが、父親であるカイル・リースを過去に送り出して一つのサークルになるんですか?
「エンディングについてはもちろん明かせない。だけど、どうやって僕らがストーリーを作っていたかを明かすと、僕らはまず最初にストーリーを3つに分けて、その分割したストーリーのすべてを一緒に設計していったんだ。いうなればこの新シリーズは三位一体というわけ。だけど、この4作目が観客に受け入れられないことには、パート5は作れないんだよ(笑)。観客に受け入れられて大ヒットになったら、次の2作の準備をすぐに始めるつもりさ。続編では、タイムトラベルの他にサラ・コナーも出てくる。そして大人になったカイル・リースがサラに会うために2029年から1984年に戻るかどうかの選択に悩む姿が描かれるんだ。それ以外の予想外の展開もたくさんある。これは面白くなるよ。だけど、4作目がヒットしなかったら次は無いんだよ! だから、とにかく見てほしい(笑)」
――1作目でカイルを演じたマイケル・ビーンは続編に出るんですか?
「それは答えられないね。でも若いカイルは出る。僕らはカイルがどのように戦士になっていくのかを見届けることになる。アントン・イェルチン扮するカイルが、1作目の『ターミネーター』でマイケルが演じたような精悍な戦士になっていくわけだよ。まあ、この新3部作は、未来には2度と戻れないにもかかわらず、過去へと旅立つ決意をするに至ったカイルの心の変化、軌跡を描く映画でもあるんだ」
――本シリーズ、特に「ターミネーター2」「ターミネーター3」では、機械と人間の違い、つまりは人間性について描いてきましたが、新3部作でもやはりそういったことを追究するのですか?
「新3部作では、まさにそれがテーマになる。例えば、あなたの身体のすべてがもし機械で出来ていたら、その身体はあなた自身の身体といえるかい? もし仮に、機械の身体を持っているあなた自身がそのことを認識するとして、その認識をする自己、心、人間性というものは身体の中のどこに宿っているのか? つまりは人間性を保ったまま、どこまで人間の身体を改造することが出来るのか、ということをこの映画では追究しているんだ。大げさに言うと、“魂というものは人間のどこに宿っているのか”という哲学的な疑問が本作のテーマだ。本作ではサム・ワーシントン扮するマーカス・ライトが、その疑問を象徴するキャラクターになっている。あとは、映画を見て色々と考えて欲しいね」
――本シリーズと同じように機械と人間の戦争を描いた「マトリックス」は、人類と機械の共存する姿を描いてシリーズを終えましたが、本シリーズの新3部作では、「マトリックス」と同様に機械と人類は共存へと向かっていくのですか?
「答えはノーだ。善と悪は常に対立するものとして存在するわけで、これはその戦いを描いている。どのように決着するかはもちろん明かさないが、悪が勝つことだってありうるということだけは言っておくよ。ちなみにこの新3部作のストーリーのすべて、そしてエンディングを知っているのは世界でただ一人、僕だけなんだ(笑)。プロデューサー、ソニー・ピクチャーズのみんなも当然知らない。エンディングは衝撃的かつ刺激的で、観客に挑戦するようなものになっているよ」