シャッター アイランド : インタビュー
「ミスティック・リバー」で知られるデニス・ルへインの同名小説を「ディパーテッド」のレオナルド・ディカプリオ&マーティン・スコセッシ監督のコンビで映画化したミステリー超大作「シャッターアイランド」が今週末より公開される。1954年、米ボストン沖の孤島に建つ精神病院で起こった女性失踪事件を調べる連邦捜査官テディ・ダニエルズ(ディカプリオ)は、自らの身に起こる不可解な出来事に翻弄されながらも真相に迫るが、やがて驚愕の事実に突き当たる……。巨匠スコセッシがありとあらゆる映画技法を駆使して本格的ミステリーに挑み、全米で大ヒットを記録した本作について、ディカプリオとスコセッシ監督に話を聞いた。(取材・文:森山京子)
レオナルド・ディカプリオ インタビュー
「僕はキャラクターの複雑な心理を描く映画に魅力を感じるんだ」
――スコセッシ監督とはこれで4作目ですが、2人で一緒に企画したのですか。
「実は2人で検討していた別の作品が流れたところに、この映画の脚本が送られてきたんだ。マーティはもう読んでいて、サイコロジカルなフィルム・ノワールにしたいと言う。そして一緒にやらないかと誘ってくれたんだ。僕は彼と仕事するチャンスは絶対逃したくないと思っているからね、勇んで引き受けたというわけさ」
――テディは今までになく複雑なキャラクターですね。
「彼は、自分の過去の真実から逃げまくっている。真実に直面できないから他人の過去を探ろうとする。だから現実から離反していくんだと思う。それにこの映画は、現実と幻想の境界を曖昧にして、意識的に観客を惑わすように作ってあるから、一層複雑に見えるんだ。でも演じる方としては、テディが抱えているトラウマやエモーションは全て真実に見えるように演じたよ。観客が信じるかどうかは別として、スクリーンに現れるものは全てリアルに見えるように描いた」
――演じる上でチャレンジだと思ったのはどんなところですか。
「テディのキャラクターそのものがチャレンジングだった。彼の心理、感情にはいくつもの層があるから、シーンによって異なる演技をしたんだ。ひとつのシーンを3通りに演じて、編集の時に選んでもらったこともある。そうやって、観客に物語の秘密を気づかれないように工夫を凝らしたんだ」
――この映画はラストが衝撃的で、それを知って見ると全然違った受け止め方になってしまいます。それを心配しませんでしたか。
「心配しても始まらないことだと思う。先に見た人がラストをふれ回ったとしても、僕たちには防ぎようがないもの。マーティと話しあったことは、結果を見せる映画じゃなくて、テディのエモーショナル・ジャーニーを見せる映画にするということ。強いパワーで彼の心の旅路に観客を引きずり込んでしまう。そうすれば、エンディングや途中のトリックを超えたものになる。それを目指した」
――最近のあなたはシリアスで重い役が多いけれど、意識して選んでいるのですか。意図しているんですか。
「やりたいと思った役を選んでいるだけで、どんなジャンルにも、どんなタイプのキャラクターにもオープンでいるつもりだよ」
――スコセッシ監督と続けて仕事していることが、作品選びに影響していますか。
「それはないと思う。もしマーティと出会っていなくても、同じ状況になっていたと思う。15、6歳の頃からずっと、僕が心を動かされ、やってみたいと思っていたキャラクターを今演じているからだよ。あの時はもちろん興味を惹かれて出たんだけど、僕のキャリアを見れば『タイタニック』のような作品の方が例外なんだと分かる筈だ。僕は、人間とはいったいどういうものなのかを探求し、キャラクターの複雑な心理を描く映画に魅力を感じる。人間のダークサイドを追求した映画を見たいと思う。『レイジング・ブル』や『市民ケーン』を見て、いつか自分もこんなレベルに到達したいと思った。その気持ちを今も大切にしているんだ」