シャッター アイランド : 映画評論・批評

シャッター アイランド

劇場公開日 2010年4月9日
2010年4月6日更新 2010年4月9日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー

スリラー映画の巨匠たちへのスコセッシ流ラブレター

マーティン・スコセッシ監督作品としては映画史的にさして重要な作品ではないが、何度でも見たくなる「媚薬のような映画」だ。ヒッチコックキューブリックといったこの手のジャンル映画を手がけた偉大な映画作家たちへのラブレターともいえようか。

スリラー映画の王道ともいうべき映画技法がてんこ盛りで、とくに黄金期のヒッチコック映画へのオマージュがプンプンと匂う。導入部のフェリーのシークエンスなんてスクリーンプロセスだし、フェリーが島に到着するとけたたましく高鳴る音楽がバーナード・ハーマン風だったりする。劇中、稲妻の閃光が主人公の顔を断続的に照らす場面なんてまるで「裏窓」のストロボライトのように感じる。

物語設定が1954年であり、「赤狩り」や「洗脳」が重要なキーワードになっていて、ヒッチコック映画でいう「マクガフィン」(実体が登場しない「ほのめかし」)として実に効いている。

嵐により外界から閉ざされた孤島。そこに立つ精神病院は、キューブリック映画「シャイニング」の山頂のホテルのように、幻想や悪夢が次から次へと登場する戦慄の主舞台となる。レオナルド・ディカプリオは「アビエイター」の神経症的演技をさらに増幅させて、狂気におちていく主人公を「怪演」している。

全編がフェイク・ストーリーであるかのようにほのめかすラストが苦く、深い余韻を残す。冒頭から巧妙に仕掛けられたギミックの数々が謎解きの世界への道案内となる、そんな悪夢的作品なのだ。

サトウムツオ

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