指輪物語

劇場公開日:

解説

万能不滅の黄金の指輪をめぐる善と悪の戦いを描くアニメーション。製作はソウル・ゼインツ、監督は「フリッツ・ザ・キャット」のラルフ・バクシ。J・R・R・トールキンの原作をクリス・コンクリングとピーター・S・ビーグルが脚色。音楽はレナード・ローゼンマンが各々担当。

1978年製作/アメリカ
原題または英題:The Lord of the Rings
配給:ユナイト映画
劇場公開日:1979年7月14日

ストーリー

遥か遠い大昔、地球がまだ中の国と呼ばれていた頃、いくつかの偉大な力の指輪が妖精エルフの鍛冶屋たちによって作り出された。そのうち、3つがエルフの王たちに、7つが小人ドワーフの王に、9つが人間の王たちに与えられた。しかし、闇の王国モードルに君臨する魔王ソロンが、運命の山の火口で、それらをすべて支配できる極めつけの指輪を作ってしまった。それは、意思によって姿を消すことができ、身につけた者を悪へ導く力を秘めていたが、人間と妖精エルフの連合軍とソロンが闘った時、指輪は西国の王子によってソロンの指から切り落とされ大河アンデュインの底に沈んでしまった。それから数千年。指輪は2人のホビット族に発見され、さらにホビットの長老ビルボの手に渡った。ビルボは、指輪を甥のフロドに譲り渡し、自らはその魔力でかき消えるようにした。これには地上の正義を目ざす放浪の魔法使いガンドルフの意向がふくまれていた。世界征覇を目指すソロンの悪のパワーが勢力を増し指輪を捜していたのだ。それに対抗する道は1つ。悪の帝国モードルの運命の山の火口に、指輪を投げ込むことだった。それから17年後、フロドは従者サム、従兄メリー、ピピンらを伴い、災いの指輪を破壊すべく、モードルへと出発した。最初の宿泊地ブリーでは、ソロンのために霊界へ送られた9個の指輪の持ち主たちの襲撃を受け、護衛のため参上したガンドルフの友人、アラゴンという剣客と出逢った。次の露営地ウェザートップでは、妖精エルフの王子レゴラスと合流するが、そこで、巨大な激流にのみこまれ、フロドも力尽きてしまう。フロドが気がつくと、そこはリブンデルの王エルロンの城館で、エルロン要請の指輪破壊の決死隊が構成された。しかし、旅のルートと指輪をめぐり仲間の間には亀裂が生じ、アラゴンの指揮に反発したボロミールが指輪をフロドから奪おうとした。争いをさけてサムのみを連れてモードルの境界へ向かったフロドをピピンとメリーが追うが、彼らはオーク鬼に連れ去られ、ボロミールは自分の行動を悔いながら戦死した。アラゴンはピピンとメリーを追い、死んだと思われていたガンドルフと再会した。要塞舵の底でオーク軍と戦い遂に敵を倒し、指輪をめぐる第一の戦争は終るのだった。

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映画レビュー

4.5設定は完璧。もっと評価されていい作品

2023年11月10日
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鑑賞方法:その他、映画館

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感想

ラルフ・バクシ監督、ソウル・ゼインツ制作1979年日本公開当時の日比谷みゆき座鑑賞だったと思う。学生の頃全てを理解した訳では無かったが、原作は翻訳本を読んでおり、ある程度の世界観は把握していた。

ディズニープロダクション、「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリック、「未来惑星ザルドス」のジョン・ブアマンなど1950年代から60年代にかけて多くの著名な映画制作者たちが、映像化を検討するも費用面等で途中挫折。映画化は無理とされていた話は有名である。

アニメディレクターとして1970年代のアメリカンニューシネマムーブメントの思想・文化的潮流を真に受け自身の制作作品を含めてカウンター・カルチャーの代表的表現者と見なされたバクシと、映画化の権利を所有していた、「カッコーの巣の上で」制作のゼインツがタッグを組みアニメーションで映画化を試みた。

原作の知名度が高いため、映画の日本公開の約2年程前から、メディアに度々情報が出ていて、プロダクションデザイン画は出てきたものの、芸術性が極めて高く、本当に動画になるのか?という疑問や期待が方々(評論家等)から出ていた。当時学生であった自分も素人ながら、素晴らしい絵に感動したが、完全映像化は不可能なのではないかと感じた。

期待して完成した本編を鑑賞したが、話の端折りすぎでまとまらず。残念ながら、脚本がままならす原作の展開をと比較すると部分的にエピソードを組み込んだ展開になる。映像も後半、ロトスコーピングの元となる実写映像が透けて色彩と素描の線がダブり粗が所々目立ったものに(意図的な演出なのか?初鑑賞時には線が太く粗い映像だと)感じる。それでも所々、後の実写版にも生かされていた場面があった。作品の質については完成された一般的な美意識的視点から観ると杜撰な未完成の状態とも言えたのだか、不可能と言われた映画制作に挑戦し、城塞に大群で押し寄せる多数の人物を手描きでダイナミックに描写して大戦争のシチュエーションを創造し映像として完成させた事などは評価点であり⭐️3.5の評価はできる。

25年後、実写版三部作を制作し、アカデミーの栄誉にあずかったピーター・ジャクソンが高校生の頃にこの映画を見て感動。後に最初著作権で対立していたラルフ・バクシと交渉、ソール・ゼインツを通じてある程度の了承を得てロード・オブ・ザ・リングに本作のオマージュを入れたという話があったが、実写版「ロード・オブ・ザ・リング旅の仲間」初見時のの印象は、ガンダルフやフロド達はほぼ完全に同様のキャラクターデザインであり、場面構成、特に躍る子馬亭のブラックライダーの襲撃シーン、モリアの坑道(舵の底)をバルログの追跡を振り切り崩れ落ちそうな階段を降りながらフロド達が逃げるシーンなどバクシの絵コンテを基にしたのだろうと思われる画面構成がほぼ同じ場面が多数あり完全に近い形で部分的にはバクシ版の実写化がなされていると深く感じ入り感動した。

以上の事を思うとバクシの制作した指輪物語の優れた芸術性と諸設定が評価されるとして星が追加され⭐️4.5の評価となる。

音楽はレナード・ローゼンマン
代表作「エデンの東」メインテーマはフルオーケストラ編成の重厚な素晴らしい佳曲。曲を聴くとわくわくした冒険心が溢れてくる。

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公開当時、手塚治虫先生はこの映画を絶賛。『火の鳥2772」のスペースシャーク発進のシーンにロトスコーピング撮影を導入している。宮崎駿先生はこの映画は認めていないとのこと。アニメーションに対する考え方の違いがある事を感じた。いずれにせよ、作品の表現方法の評価は観る者の視点、解釈の違いにより大きく変わる。

バクシの指輪物語で生み出されたアニメーションの素となる原画やデザイン画、さらに音楽は物語に素晴らしく合っていて、後の実写作品群の一連のイメージを決定付ける優れたものであったのは間違いない。脚本の構成と諸事情(製作資金不足)、また原作者のトールキン自身が生前、ディズニーのファンタジーアニメーション作品のキャラクター設定や美術設定を好ましく感じておらず、バクシのディズニーに対するカウンターカルチャー的思考からの斬新とも受け取れる美意識を目指した結果が本作の映像であったという専門家の意見もあり、ある視点としての考え方として賛同出来る。が、しかしロトスコーピング方式で作られたこの作品の質は残念ながら低評価された。

真意は今となっては不明だが、バクシとゼインツの実現不可能と言われた作品実現へのチャレンジは偉大な挑戦であったと思うし、その出来上がっていた土台に実写版の骨格を積み上げて肉付けをして実写版三部作を完成させたピーター・ジャックソンが現在、高い評価と栄誉を受けているのである。ゼインツはまだしもバクシはもっと社会的に評価されるべき制作者だと思っている。

2024.12.18追記

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