裁かるゝジャンヌ

劇場公開日:

裁かるゝジャンヌ

解説

ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォーら多くの巨匠に影響を与えたデンマークの映画作家カール・テオドア・ドライヤーが、“人間”としてのジャンヌ・ダルクを実際の裁判記録を基に描いた無声映画の金字塔的作品。

百年戦争で祖国オルレアンを解放へと導いたジャンヌ・ダルク。しかし敵国イングランドで異端審問にかけられ、過酷な尋問を受ける。心身ともに衰弱し一度は屈しそうになるジャンヌだったが、神への信仰を貫き自ら火刑に処される道を選ぶ。ゴダール監督が「女と男のいる舗道」で本作を引用したことでも知られる。

2021年、特集上映「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」にてデジタルリマスター版で上映。2023年にも「カール・テオドア・ドライヤー セレクション vol.2」(23年12月23日~、シアター・イメージフォーラムほか)で上映。

1928年製作/97分/フランス
原題または英題:La passion de Jeanne d'Arc
配給:ザジフィルムズ
劇場公開日:2023年12月23日

その他の公開日:1929年10月25日(日本初公開)、2021年12月25日

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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(C)1928 Gaumont

映画レビュー

ピアノ伴奏と共にスクリーンで観る至福

2024年9月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 オルレアンの少女として知られるジャンヌ・ダルクの審問裁判にのみ焦点を絞り、その過程での審問官のグロテスクさと彼女の迷いを描いたカール・テオドア・ドライヤーの名作を生のピアノ演奏と共に上映です。前回本作を劇場鑑賞した時、「百年近く前に、映画表現はもうここまで到達していたのか」と度肝を抜かれたのをよく覚えています。

 以前鑑賞した時は、外国のオルガン奏者の伴奏がついており、宗教性を感じさせるその響きは重厚で良かったのですが、一緒に観た我が家の妻と「これを柳下美恵さんのピアノで観たいけど無理かなぁ」と話していたら、何と、横浜シネマリンでそれが実現しました。これは見逃せないと早速駆け付けました。

 素晴らしい演奏でした。今回の柳下さんの演奏は、間(ま)と静寂を十分に生かして、ジャンヌ個人の孤独と恐怖に静かに分け入ろうとしている様に聞こえました。それだけにジャンヌが業火に焼かれる終盤の渾身の演奏は圧巻。圧倒されました。

 そして、スクリーン一杯のジャンヌのクローズアップ映像の中で微妙に揺れ動く表情を浴びるには、本作はやはり映画館で観るべき作品だと確信しました。

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La Strada

3.5ジャンヌ・ダルクの裁判

2024年3月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

1928年に作られた古い無声映画で、ジャンヌ・ダルクの裁判から火刑までの様子を、裁判記録を基に映画にしているそうです。

演技→セリフ表示→演技→セリフ表示、を繰り返す無声映画で、雰囲気あります。

声は入ってないけど音楽は流れていて、音がないわけじゃないです。

途中で少し眠くなったけど、裁判が進んでいくと興味深くなってきて、けっこう面白かった。

ジャンヌ・ダルクは詳しくないので、ミラ・ヨヴォヴィッチ主演の『ジャンヌ・ダルク』を観て勉強したくなった(笑)

あと、観た人みんな思っただろうけど、審問官の中にロバート・デ・ニーロそっくりの役者がいる(笑)

緊迫する問答シーンなのに、ちょっとウケた(笑)

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RAIN DOG

4.5強烈な凄みを帯びている

2024年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

カール・テオドア・ドライヤーという映画監督をご存じだろうか?古い作品が好きな方なら一度は聞いたことがあるだろうか?一つのスタイルに囚われず常にその映画に合った手法を模索し、その映像センスは後世の多くの映画作家たちに影響を与えたとされる名監督。しかし日本での知名度が低い為か、なかなかお目にかかれないドライヤー作品だが、ありがたいことに現在までに3作品観る機会にありつけた。そしてその中で本作はまさに衝撃的な、今までに見たどの映画にもなかったものを見せつけられた。

ストーリーはジャンヌ・ダルクの裁判から火刑にいたるまでを描いている。これだけなら至って普通。しかし、本作は過去に遺されたジャンヌの裁判記録から脚本を起こしている。ここが違う。言い伝え、伝承といったものに頼らず、記録と言う“現実”からジャンヌという「人間」を描いている。つまり本作は人間ドラマである。しかもこのドラマ、

とてつもない“凄み”を帯びている。

 三白眼を晒しながら絶望と恐怖を感じるも自己の信念を貫かんとするジャンヌという“一人の少女”、ジャンヌを悪魔の手先とせんとしたい教会から派遣された尋問官たちの多種多様な形相、ジャンヌを助けたいと思う凛とした修道士、裁判を外から見守る民衆・・・

なにひとつ作り物と感じる部分がない!!

 仰角クローズアップが映す者の感情を観る者に対し直で伝え、そのアップの連続が緊張感を盛り上げ、異様な雰囲気を感じずにはいられない。それだけではない。間違いなく本作に出ている役者が巧い。全ての役者が巧すぎる。それが異様な雰囲気に説得力を付属させリアルに思わせてゆく。この映像、まさに本物のジャンヌの裁判を見ているかのよう・・・そしてそこから感じるジャンヌという人間。

国を想う一人の少女であったこと。

 “聖女”としてドラマティックに描くのではなく、“一人の少女”としてリアルに描く。そして老骨な教会という「体制」の餌食になる様を瞬きせず映している。しかし教会の人間とて途中で「思い違いをしているのでは・・・?」と思うようなシーンが度々ある。しかし結果は変えない。その言葉すら漏れない。変えたら教会の威信にかかわるからか?自分の保身のためか?

それを伝えたかったのか。

 ストーリーはジャンヌの裁判だが、それは過去に教会が行ってしまった過ち、「魔女裁判」を告発するかのようなものなのか。威信と保身のために弱きものを飲み込んだ過去の告発。だとしたら本作はある意味異端な映画なのかもしれない。しかし、それを描いたドライヤー監督の胆力はすごいものではないだろうか・・・。

徹底したリアリズム、それが本作の特徴であり、そこにドライヤー監督の演出が強烈な凄みとなってついてくる。

こんな映像、観たことがない!

本作はサイレント映画だが、観る機会があるならば強くお勧めしたい。これは個人的評価として「傑作」である。

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asukari-y

4.0不可思議な存在が晒される、映画によって

2024年2月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

実際の裁判記録をもとに脚本が書かれ、ジャンヌを英雄視せず、あくまで尋問調書から読み取ることができる1人の人間として描いているのが本作。ジャンヌvs.他全員の構図はとても息が詰まります。「迫真の演技」と言えばそれまででしょうが、宗教裁判を扱うという異質な異常さにさらに拍車をかけているのか空間の断片化です。

ジャンヌをはじめ俳優たちの圧倒的な演技とその表情のアップが多いことと、室内の強烈な白さが空間を意図的に捻じ曲げている印象を受けます。屋外も状況は似ていて、人を見上げたままの移動撮影やアップのショットが多く、街並みがコラージュに感じるような違和感が全編を覆っています。

言うまでもなく人は自己中心的に、知覚するほとんどの情報を切り捨てて生きています。キュビズム絵画のように断片化された現実を切り貼りして恣意的に現実を再構築しています。もちろん映画鑑賞もそれに当たり、その恣意性が自分から出たものでないからこそ、この映画が描く登場人物達の存在が不穏で不気味なまでの迫力で迫ってくるんだと思います。

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ジャパニーズ先住民