生きものの記録
劇場公開日:1955年11月22日
解説
一貫して反戦を訴え続けた黒澤明監督が、原水爆の恐怖を真正面から取り上げた異色のヒューマン・ドラマ。町工場を経営する中島喜一は原水爆の実験に脅威を感じ、地球上で安全な場所は南米しかないと考え、家族にも相談しないで南米への移住を計画。しかし息子たちは父の計画に猛反対し、中島を裁判にかける。次第に孤独に追い込まれていく中島がとった行動は・・・。当時35才の三船敏郎が、メイクによりみごとに70過ぎの老人を熱演。
1955年製作/113分/日本
配給:東宝
スタッフ・キャスト
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2023年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
老人の元気が無くなっていく様を扇子の振り方で表現したり、芸が細かいです。
ラストカットの構図は哀しくも美しい、見事です。
「無茶苦茶だな全く」という台詞のとおり、後半に行けば行くほど収集がつかなくなる凄まじいシナリオですが、作品として力強過ぎて「また観たい」と思えてしまいます。
2022年11月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
水爆実験による第五福竜丸の船員の被爆によって、広島・長崎に続く、またも日本人の
被爆者が出てしまった…
先に、旧ソビエト連邦が核開発を成功した事により、かつて「1国だけが核を持つ」から
「複数国が核を持つ核戦争」への脅威に変わった。
人類を何十回も滅ぼせる核を世界が持つ恐怖に、主人公はおののき、その核の脅威を
周りに伝えるが、伝わらない… 現代で、未曽有の原発事故を起こしたのに、日本人は
続けて原発依存の生活を再開しようとするのも、そうだろう。
10年以上経っても、日本の科学者は「再生可能エネルギー」という物を開発できず
「脱・原発」を実行できない…
この「生きものの記録」は、あまり知られていない作品だが、目に見えない「核に対する
恐怖」よりも、目に見える「核が産んだ原子力怪獣」のいうモンスター「ゴジラ」は
大ヒットし、その後、長きにわたるシリーズとなった。
民衆は「目に見えない脅威」より「目に見える怪獣」という、分かり易い物を
選んだようだ…
2022年10月29日
iPhoneアプリから投稿
核軍備の恐怖、民衆の愚、狂気の淵、何れも印象が半端なのは、
この結末の原因は三船老人の怒鳴り一択のプレゼン下手ゆえじゃね?と見えるから。
核廃絶、でなく「年寄りも説明は上手く冷静に」映画。
黒澤がカッコーの巣〜の成功を終生羨んだのはこれが失敗作だったから、だな。
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見事なショットやセリフに溢れた作品ではあるのだが、全体を俯瞰してみると物語が反核という強いテーマ性を抱えきれていない、というのが正直な感想。
反核というテーマを、『ゴジラ』のような明らかに非現実的な暗喩世界ではなく、我々の実生活の延長線上に存在する現実世界に定立させることで、確かに反核のリアリティや切迫性は増すだろう。しかしまさにそのことによって、喜一の「ブラジル移住」という途方もない計画の滑稽さばかりがいやに強調されてしまっていたように感じた。
作品のアイレベルが現実世界に準拠している以上、受け手としては、水爆を恐れる喜一の気持ちもある程度理解できる一方で、喜一の奇行に煩わされる家族たちの気持ちも同じくらい理解できてしまう。
結果、喜一の主張と家族の主張は同等の説得力を有したものとして対消滅してしまい、その焼け跡には反核というテーマだけが実体のない漠とした概念のまま漂っていた…そんな感じ。
そう考えると、徹底的な虚構世界を作り上げ、そこに恐怖の絶対的対象としてのーーまた同時に核戦争の暗喩としてのーー「ゴジラ」を配置することで受け手の感情の方向をある程度一定化させ、そこを土台に反核論を打ち出していた『ゴジラ』はやっぱりすごかったんだな、と。