生きものの記録

劇場公開日:

解説

一貫して反戦を訴え続けた黒澤明監督が、原水爆の恐怖を真正面から取り上げた異色のヒューマン・ドラマ。町工場を経営する中島喜一は原水爆の実験に脅威を感じ、地球上で安全な場所は南米しかないと考え、家族にも相談しないで南米への移住を計画。しかし息子たちは父の計画に猛反対し、中島を裁判にかける。次第に孤独に追い込まれていく中島がとった行動は・・・。当時35才の三船敏郎が、メイクによりみごとに70過ぎの老人を熱演。

1955年製作/113分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1955年11月22日

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映画レビュー

4.0【”狂っているのは、彼か原爆の恐ろしさを知りつつ、何もしない我々か。”今作は、原爆の恐ろしさをテーマに描いた故、黒澤明監督による、社会派ドラマの逸品である。】

2023年6月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

■家庭裁判所の調停委員を務める原田(志村喬)が担当することとなった、家族から出された工場を経営する資産家、中島喜一(三船敏郎)への準禁治産者申し立て裁判。
 原水爆に恐怖するあまり、全財産を投じてブラジルに移住しようという喜一と、反対する家族。
 原水爆の脅威にますます喜一の心は病んでしまい、彼は家族が当てにしていた自分の工場を燃やしてしまう。

◆感想

・ご存じの通り、今や世界の原爆が仮に全てが爆発したとすると、理論上では、地球は一瞬で崩壊する。この映画作品が制作公開されたのは、1955年という事だが、作品のテーマを考えると黒澤明監督の先見性及び発信したメッセージの重要性が、良く分かる。

・三船敏郎演じる中島喜一が、原爆の恐ろしさを知りブラジル移住を計画するという突拍子もないストーリー展開であるが、その中にはシリアス要素が幾つも散りばめられている。
 例えば、本来であれば中島の考えに賛同しつつも現実的な路線を提案するべき家族が、彼の思考、行動をほぼ全否定しようとする姿や、工場の従業員から”自分達だけ助かろうとするのか”と問いただされるシーンである。

<今作のラストも、異様にシニカルで恐ろしい。狂人と化した中島を見舞った原田に対し、中島は”ここに来れば大丈夫・・。ところで、地球にはまだどれくらいの人が居るのか”と問い、答えに窮する原田の前で、中島は太陽を見て”地球が燃えている。”と口にするのである。
 正に”狂っているのは、彼か原爆の恐ろしさを知りつつ、何もしない我々か。”・・なのである。>

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NOBU

4.0力強過ぎ

2023年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

老人の元気が無くなっていく様を扇子の振り方で表現したり、芸が細かいです。
ラストカットの構図は哀しくも美しい、見事です。

「無茶苦茶だな全く」という台詞のとおり、後半に行けば行くほど収集がつかなくなる凄まじいシナリオですが、作品として力強過ぎて「また観たい」と思えてしまいます。

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ジンクス

5.0目に見えない脅威は…

2022年11月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

水爆実験による第五福竜丸の船員の被爆によって、広島・長崎に続く、またも日本人の
被爆者が出てしまった…
先に、旧ソビエト連邦が核開発を成功した事により、かつて「1国だけが核を持つ」から
「複数国が核を持つ核戦争」への脅威に変わった。
人類を何十回も滅ぼせる核を世界が持つ恐怖に、主人公はおののき、その核の脅威を
周りに伝えるが、伝わらない… 現代で、未曽有の原発事故を起こしたのに、日本人は
続けて原発依存の生活を再開しようとするのも、そうだろう。
10年以上経っても、日本の科学者は「再生可能エネルギー」という物を開発できず
「脱・原発」を実行できない…
この「生きものの記録」は、あまり知られていない作品だが、目に見えない「核に対する
恐怖」よりも、目に見える「核が産んだ原子力怪獣」のいうモンスター「ゴジラ」は
大ヒットし、その後、長きにわたるシリーズとなった。
民衆は「目に見えない脅威」より「目に見える怪獣」という、分かり易い物を
選んだようだ…

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777

2.0怒鳴り一択は駄目だよ映画

2022年10月29日
iPhoneアプリから投稿

核軍備の恐怖、民衆の愚、狂気の淵、何れも印象が半端なのは、
この結末の原因は三船老人の怒鳴り一択のプレゼン下手ゆえじゃね?と見えるから。
核廃絶、でなく「年寄りも説明は上手く冷静に」映画。
黒澤がカッコーの巣〜の成功を終生羨んだのはこれが失敗作だったから、だな。

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きねまっきい
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