キャリントン

劇場公開日:

解説

女流画家ドーラ・キャリントンと同性愛者の作家リットン・ストレッチーを結びつけた深い愛情の絆を描く伝記ドラマ。監督・脚本は英国演劇界の重鎮で、映画はこれが初演出となる劇作家クリストファー・ハンプトン。原作はマイケル・ホルロイド著の評伝『リットン・ストレッチー』(68)。製作は「イナゴの日」のロナルド・シェルド、ジョン・マクグラス、撮影は「仕立屋の恋」のドゥニ・ルノワール、音楽はピーター・グリーナウェイ作品で知られる「ピアノ・レッスン」の鬼才マイケル・ナイマン、美術は「父に祈りを」のキャロライン・エイミーズ、編集は「カラヴァッジオ」のジョージ・エイカーズ、衣裳デザインは「アナザー・カントリー」のペニー・ローズがそれぞれ担当。主演は「日の名残り」「ジュニア」のエマ・トンプソン。共演は「未来世紀ブラジル」「エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事」のジョナサン・プライスほか。95年カンヌ国際映画祭審査員賞・主演男優賞賞(ジョナサン・プライス)受賞。

1990年製作/122分/イギリス・フランス合作
原題または英題:Carrington
配給:日本ビクター
劇場公開日:1996年1月13日

ストーリー

1915年、第一次大戦下のイギリス。リットン・ストレッチー(ジョナサン・プライス)はヴァージニア・ウルフの姉ヴァネッサ(ジャネット・マクティア)の海岸の別荘で画家のドーラ・キャリントンに紹介される。彼は同性愛を公言していたが、彼女に心魅かれるものを感じ、翌日海岸を散歩しているときに唇を奪ってしまう。キャリントンは画家でリットンの友人でもあるマーク・ガトラー(ルーファス・スーウェル)と交際中だったが、兵役忌避で審問を受けたリットンの堂々たる態度に既存の男性像を越えたものを感じ、彼を愛するようになる。キャリントンとリットンは田舎に家を構える。彼女の描いた壁画で飾られた美しい家、だが心の結びつきは強くとも、性の欲望は満たされない。キャリントンは戦争帰りのレイフ・パートリッジ(スティーブン・ウォディントン)を家に招き、リットンはその美しく逞しい肉体に魅了され、彼を家に引き止めてくれるよう彼女に頼む。彼女はレイフと結婚するが、本当に愛しているのはリットンだった。レイフの友人ジェラルド・ブレナン(サミュエル・ウェスト)が二人を訪ね、彼女と恋に落ち、夫婦の関係は危機を迎える。やがてリットンの著書『ヴィクトリア朝名士伝』が大成功を収め、一同は大きな城館に引っ越す。やがてリットンは若くて美しい青年を家に住まわせ、レイフには愛人ができ、そして一抹の虚しさを感じたキャリントンは粗野なヨット乗りのビーカス(ジェレミー・ノーザム)との肉欲に恥るが、心は満たされない。彼女は身ごもるが、リットンに激しい愛を告白し、あなたの子以外は産みたくないと告げて堕胎する。32年、リットン・ストレッチーは癌に倒れ、最愛のキャリントンに求婚できなかった自分の愚かさが恨めしいと言い残して死ぬ。彼の死の晩、彼女は排ガス自殺を試み、レイフに助けられる。彼は彼女を気づかうが、彼女は彼と愛人を説き伏せて追い出す。そした一人屋敷に残ったキャリントンは猟銃で自らの肉体を撃ち抜くのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第48回 カンヌ国際映画祭(1995年)

受賞

コンペティション部門
男優賞 ジョナサン・プライス
審査員特別賞 クリストファー・ハンプトン

出品

コンペティション部門
出品作品 クリストファー・ハンプトン
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映画レビュー

3.5愛と性の相克に苛まれた女流画家を描いた、イギリス演劇映画の厳しさ

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

20世紀初頭に実在した女流画家ドーラ・キャリントンの赤裸々な男性遍歴を扱った異色の伝記映画。作家リットン・ストレイチーを男性として尊敬し純愛を捧げるが、同性愛者のストレイチーでは満たされない肉欲に苛まれる女性の、愛と性の相克を大胆にして切実に描く。常識や倫理に縛られた人間関係から外れた芸術家同士の惹かれ合いながらも苦しむ姿が痛ましい。その厳しい視点にイギリス映画ならではの人間追及がある。劇作家出身のクリストファー・ハンプトンの脚本の良さと比較すると、演出は至ってオーソドックスなタッチでモンタージュの創意工夫は少ない。屋敷を捉えた移動のカットで場面繋ぎをしているくらいで、俳優の演技に重きを置いた演劇映画が特徴である。主演のエマ・トンプソンと共演のジョナサン・プライスの演技が素晴らしい。今や実力女優として名を馳せているトンプソンが、柵から解き放たれた女性のありのままの美醜を見事に演じている。それに対して貫禄の演技力でストレイチーを演じたプライスとの互角の存在感が、この映画最大の見所と言える。
  1997年 1月30日

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Gustav