劇場公開日 1996年1月13日

キャリントンのレビュー・感想・評価

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3.5愛と性の相克に苛まれた女流画家を描いた、イギリス演劇映画の厳しさ

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

20世紀初頭に実在した女流画家ドーラ・キャリントンの赤裸々な男性遍歴を扱った異色の伝記映画。作家リットン・ストレイチーを男性として尊敬し純愛を捧げるが、同性愛者のストレイチーでは満たされない肉欲に苛まれる女性の、愛と性の相克を大胆にして切実に描く。常識や倫理に縛られた人間関係から外れた芸術家同士の惹かれ合いながらも苦しむ姿が痛ましい。その厳しい視点にイギリス映画ならではの人間追及がある。劇作家出身のクリストファー・ハンプトンの脚本の良さと比較すると、演出は至ってオーソドックスなタッチでモンタージュの創意工夫は少ない。屋敷を捉えた移動のカットで場面繋ぎをしているくらいで、俳優の演技に重きを置いた演劇映画が特徴である。主演のエマ・トンプソンと共演のジョナサン・プライスの演技が素晴らしい。今や実力女優として名を馳せているトンプソンが、柵から解き放たれた女性のありのままの美醜を見事に演じている。それに対して貫禄の演技力でストレイチーを演じたプライスとの互角の存在感が、この映画最大の見所と言える。
  1997年 1月30日

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Gustav