悪人と美女

劇場公開日:

解説

「ジェーン・エア」の脚本を書いたジョン・ハウスマンが製作にあたり、「三つの恋の物語」(第2話)のヴィンセント・ミネリが監督した1952年作品。ハリウッドの内幕を描くジョージ・ブラッドショウのストーリーを「女群西部へ」のチャールズ・スクニーが脚色した。撮影は「北の狼」のロバート・サーティース、音楽は「猛獣と令嬢」のデイヴィッド・ラクシンの担当。主演は「三銃士(1948)」のラナ・ターナー、「三つの恋の物語」(第3話)のカーク・ダグラス、「拳銃往来」のディック・パウエル、「百万$の人魚」のウォルター・ピジョン、「群盗の宿」のバリー・サリヴァンで、「突然の恐怖」のグロリア・グレアム、ギルバート・ローランド、レオ・G・キャロルらが助演。なお、この作品は52年アカデミー賞で、脚色賞、女優助演賞(グロリア・グレアム)、撮影賞、美術賞、衣裳デザイン賞の5つの部門に入賞した。

1952年製作/アメリカ
原題:The Bad and the Beautiful
配給:MGM日本支社
劇場公開日:1953年6月16日

ストーリー

ハリウッドの一流監督フレッド。アミエル(バリー・サリヴァン)にパリのジョナサン・シールズ(カーク・ダグラス)から長距離電話がかかってきたが、彼は出ようともしなかった。同じ電話がいまを時めく大スター、ジョージア・ロリスン(ラナ・ターナー)にも、第1級の脚本家のジェームズ・リー・バートロー(ディック・パウエル)にもかかって来たが、2人もやはり至極冷淡だった。その日の真夜中、3人は製作責任者のハリイ・ペベル(ウォルター・ピジョン)に呼ばれ、ジョナサンの電話の要件は彼が2年ぶりで映画製作を目論み、3人の協力を求めて来たのだと聞かされた。しかし3人には、ジョナサンにまつわる苦い思い出があったのだ。監督のフレッドが彼を知ったのは18年前、映画事業の開拓者だった彼の父ヒューゴー・シールズの葬式の日だった。その頃、フレッドは監督志望の貧乏な映画青年であり、一文なしだが製作意欲に燃えているジョナサンと仕事仲間になった。ジョナサンは、当時B級映画の製作者だったハリイの撮影所で働き、数年間に11本の映画を作ったが、終わりの8本はフレッドが監督にあたった。ジョナサンとフレッドはもはやB級作品にはもの足りず、ほかの撮影所が幾度か試みて失敗した小説「遥かなる山」の映画化を企て、2人でその脚本に没頭、快心のものをつくった。だが撮影開始の直前、ジョナサンは監督をフォン・エルスティーンに変えたので、フレッドは激怒してジョナサンと袂を分かった。その後彼は2つのアカデミイ賞を得、一流監督にのし上がったのだ。ジョージアがジョナサンを知ったのはまだ彼女が端役もありつけない頃だった。彼女の亡父はアリウッドの最も偉大な俳優の1人だった。そのことが彼女に大きな重荷となり、劣等感の苦しみを酒にまぎらせ、自殺を企てたこともあった。ジョナサンは彼女に役を与えその劣等感を容赦なく叩きこわした。彼女はしばらく俳優修業に真剣になり、酒を断ち、やがてはジョナサンの作品に主演するようになった。それとともに彼女はジョナサンに愛情を抱きはじめ、ジョナサンも彼女を愛しているように見えたが、実は彼の求めるもの、ただ立派なスターとしての彼女だけだった。やがてジョージアは、彼に別の女があることを知って絶望し、彼との契約を破棄した。だがこの7年間、彼女はいつも人気投票のベストテンに選ばれていた。脚本家ジェームズがジョナサンを知ったのは49年の夏だった。大学教授のかたわら、2回目の小説を書いていた彼は、ジョナサンからシナリオ・ライターとして招かれ、妻ローズマリ(グロリア・グレアム)にせがまれて2週間の予定でハリウッドへ向かった。口説き上手のジョナサンはジェームズに「誇らしき土地」のシナリオを引き受けさせた。そして、ローズマリを仕事の邪魔になるとて人気男優ゴーチョに預け、ジェームズを静かな湖畔につれ出して仕事に没頭させた。シナリオが完成したとき、ローズマリとゴーチョは飛行機事故で死んだ。ジェームズはジョナサンのために自らの生活を破壊されたが、今や彼は最近作でピューリツァ賞を獲得し、ハリウッドきっての脚本家としておさまっていた。ジョナサンは「誇らしき土地」を自ら監督して失敗し欧州に渡ったのだ。――3人がそれぞれ回想にふけっていたとき、ジョナサンからハリイに電話がかかって来た。3人とも彼との仕事はもう真っ平だとは思ったが、何か気にかかる彼の声に耳を傾けずにはいられなかった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第25回 アカデミー賞(1953年)

受賞

助演女優賞 グロリア・グレアム
脚色賞 チャールズ・シュニー
撮影賞(白黒) ロバート・サーティース
衣装デザイン賞(白黒) ヘレン・ローズ
美術賞(白黒)  

ノミネート

男優賞 カーク・ダグラス
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映画レビュー

4.0ハリウッド・バビロン

2024年2月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ハリウッド内幕物。関わると不幸になる厄介者だが世話になったところもあって…という。全体にコミカルでテンポもよい。『エド・ウッド』みもある。

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ouosou

2.5作品としては散漫な印象だが、グロリア・グレアムが輝く映画

2022年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ハリウッド映画界の内幕を描いた映画で「死ぬまでに観たい映画1001本」にも選ばれているヴィンセント・ミネリ監督作。
映画界の内幕ものは数あるが、ロバート・アルトマン監督の『ザ・プレイヤー』には遠く及ばない作品だった。

デヴィッド・O・セルズニックをモデルにしているが、本作では製作者ジョナサン・シールズ(カーク・ダグラス)の復帰作に力を貸すよう頼まれた脚本家兼映画監督、女優、小説家(原作者)の3人が集まられて、3人がそれぞれシールズを嫌うようになった経緯を語るオムニバスっぽい映画。

脚本家兼映画監督は自分が長年温めていた脚本をシールズに奪われ、女優ジョージア・ロリソン(ラナ・ターナー)はシールズに拾われてスターになったものの愛情面で裏切られ、小説家(ディック・パウエル)は彼の執筆を邪魔するが可愛い妻(グロリア・グレアム)をシールズに遠ざけられて執筆業に専念させられている間に妻を失うことになる……など、三者三様のかたちで傲慢で自己チューな製作者シールズを嫌っている様子が描かれる。

ただ、本作は作品全体として見た時に「なんか散漫な印象」を受けてしまって、物語にのめり込む魅力に乏しい感あり。
…とは言うものの、グロリア・グレアムの登場シーンは眼を惹かれてハツラツとした印象を受けて素晴らしい。本作でグロリア・グレアムはアカデミー助演女優賞を獲得しただけある存在感。好きな女優が輝く姿を見るのは嬉しい。

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たいちぃ

5.0初めて会った時は女でも女優でもなかった

2022年1月26日
Androidアプリから投稿

ハリウッド内幕物でプロデューサーという
人物と仕事と映画ビジネスに光を当てている
(摩訶不思議)
資金調達方法も荒技

グロリア・グレアムが舞い上がってしまう南部美人妻役で
アカデミー助演女優賞を取っていたが
ラナ・ターナーもよかった

変なパジャマなんか着たりして、内も外もどんくさい娘が
色々あって自立し、立派な女優に
それでも二代目剛腕プロデューサーの力量を確認するのは
止められないのか
懐かしさを感じたりもするのか

作家以外は出発点はB級映画からで共に汗水かくが
皆、盟友と思っていたプロデューサーに煮え湯を飲まされる
観客より映画関係者の方が胸が震える普遍的な物語かも

タフなガウチョも巻き込まれたとも言える
また、著名な外国人監督の起用も描かれている

配役、脚本、美術、カメラ、衣装もよかった
古典的名作の風情

映画の始まり方と終わり方もよかったです

ゴージャスな女優となったジョージアの
電話の盗み聞きシーンに
ラナ・ターナーの名前がクレジットされ
それにディヴィッド・ラクシンの名曲がかぶさり
余韻を感じさせなから終わることに私はうっとり

ラナが女優が特別であった時代とその重圧のようなものも感じさせてくれました

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jarinkochie
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