青髭8人目の妻

解説

「パリで逢った彼」「二国旗の下」のクローデット・コルベールと「マルコ・ポーロの冒険」「平原児」のゲイリー・クーパーなどが主演する映画で、「生活の設計」「メリイ・ウイドウ(1934)」のエルンスト・ルビッチが監督・製作したもの。アルフレッド・サヴォア作の喜劇をチャールトン・アンドルウスが英訳した翻案戯曲により、「ジャングルの女王」「女罠」のチャールズ・ブラケットと「シャムパン・ワルツ」「空飛ぶ音楽」のビリー・ワイルダーが協力して脚本を書いている。助演者は「メリイ・ウイドウ(1934)」「生活の設計」のエドワード・エヴァレット・ホートン、「孔雀夫人(1936)」のデイヴィッド・ニーヴン、「たくましき男」のエリザベス・パターソン、「シャムパン・ワルツ」のハーマン・ビングその他で、撮影 は「巴里で逢った彼」のレオ・トーヴァーの担任である。

1938年製作/85分/アメリカ
原題または英題:Bluebeard's Eighth Wife

ストーリー

リヴィエラのデパートで米国人マイケル・ブランドンがパジャマの上だけを売れと押問答をしているところへ、フランスの若い娘ニコルが来てその下を買って去った。ホテルではニコルの父親、貧乏貴族のロアゼルは、米国の富豪ブランドンに商売の企画を売りつけようと待っていた。何も知らぬブランドンが不圓見るとロアゼルは自分と同じパジャマの下を着ているので、ニコルがその娘であるのを知って、商売は断ったがその代わりにルイ14世の浴槽という怪しげな物を高価に買った。ロアゼルは娘を金持ちと結婚させようという計画だが、ニコルはブランドンが富豪であることを知っても更に興味を感じないで、旧友のアルベールと遊び廻っている。ところが彼の勧めている銀行の米国本店社長がブランドンなのだから、彼は社長に見つかって秘書を命ぜられニコルのそばへは寄りつけない。ブランドンが彼女に対する執心は大変なもので、到頭ニコルも父親の言葉に従って結婚の決心をした。ところが式の記念撮影の直前になって、ブランドンは今までに7人の妻と離婚したことが判ったので、体面を重んずる伯母さんの反対はあったけれど、ニコルは金のための結婚だと明言し、離婚した場合には年10万ドルの手当てを支払う約束をさせて結婚した。かくてニコルの彼に対する戦端が開始され、欧州全土にわたる新婚旅行の間にも、あらゆる手段を用いてブランドンを寄せつけなかった。つまり彼を苦しめて離婚させ、10万ドルの年金を取るのが彼女の目的である。夫が商用で他の地へ行くと称して去った晩に、ニコルはボクシング選手を雇って家に入れて置いた。彼女の想像通りブランドンは引帰して来たが、その前に酔っぱらったアルベールが入ってきたので、ボクシング選手は彼を主人と間違えて、ニコルに命ぜられたようにアルベールをノックアウトしてさっさと引上げた。ブラントンが帰って見ると、そこにはアルベールが寝ていたから、さすがの彼も憤然としてついに離婚した。ニコルの目的は見事に達っせられたのである。しかし別れたみると彼女は初めてブランドンを心から愛していることに気がついた。ブランドンはひどい神経衰弱にかかって療養所に入っていた。ニコルに会うまいとして暴れる彼を、看護人たちが身動きのできぬように縛りつけ、そこへニコルは入って行った。そして彼を捉えると、もがいて逃げようとするブランドンの耳に、ニコルは思いのたけを打ちあけた。ブランドンの妻もついに8人目で終ることになったのである。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0良く練られた脚本に裏打ちされたものの…

2023年6月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

数年前までは、名前すら知ることのなかった
エルンスト・ルビッチは、彼の
「私の殺した男」や「生きるべきか死ぬべきか」を観て、シリアス・コメディ両分野で
類い希なる才能を発揮出来る監督と
認識した一人だ。

ところで、この作品で、
ゲーリー・クーパーと共に主演した
クローデット・コルベールは、
この4年前、「或る夜の出来事」「クレオパトラ」
「模倣の人生」の話題作に立て続けに主演し、「或る夜…」ではアカデミー主演女優賞を
受賞していた。
この作品も彼女が最も輝いていた頃の
作品の一つなのだろう。

さて、この映画、
ビリー・ワイルダーの脚本力によるものか、
序盤のパジャマを巡る展開には、
大人のウィットに富んだ見事なコメディ性に
浸ったが、
その後の展開も細やかで良く練られた脚本に
裏打ちされてはいたものの、
たたみ込むようにノンストップで進み過ぎる
構成のためか、ヒロインの、
一目惚れ→財産目当ての片棒→愛情への昇華
という彼女の心象の推移が
今一つ不明確に感じ、
逆説的な言い方になるが、
そのスピード感が平板さを招いてしまった
ような印象を受けたことは
ルビッチ作品として残念だった。

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