夜叉

劇場公開日:

解説

今は漁師として生活している中年男の隠された過去と揺れ動く愛を描く。脚本は「ひとごろし」の中村努、監督は「魔の刻」の降旗康男、撮影も同作の木村大作が担当。

1985年製作/128分/日本
原題または英題:Yasha
配給:東宝
劇場公開日:1985年8月31日

ストーリー

日本海に面した小さな漁港。漁師として働く修治は十五年前に大阪ミナミでのヤクザ暮らしから足を洗い、妻の冬子、三人の子供、そして冬子の母うめと一緒に静かな生活を送っていた。修治の過去の名残りは背中一面の夜叉の刺青で、冬子とうめ以外は誰も知らない。冬、ミナミから螢子という子連れの女が流れてきて螢という呑み屋を開いた。螢子の妖しい美しさに惹かれて漁師たちが集まってきた。数カ月後、螢子のもとに矢島という男がやってきた。ヤクザで螢子のヒモだ。矢島は漁師たちを賭け麻雀で誘い込み、覚醒剤を売りつけた。修治と仲のよい啓太もこれに引っかかった。修治の脳裡には覚醒剤がもとで死んだ妹、夏子の辛い思い出がよぎった。それは、シャブの運び屋がかつて修治の弟分だったトシオだったことと無関係ではない。修治は螢子にシャブを隠した方がいいと忠告、いわれた通りにした螢子を、矢島は包丁を持って追いかけた。止めに入った修治のシャツを矢島の包丁が斬り裂いた。隠し続けた背中一面の刺青がむき出しにされ、修治の過去はたちまち街中に知れ渡った。一方、螢子は矢島の子を流産してしまう。ミナミに帰りたい、そんな螢子の気持は修治に通じるものでもあった。二人はミナミという共通の過去に想いをよせて、抱き合った。その頃、矢島がシャブの代金を払えなくなりミナミに連れ去られた。螢子は、矢島を助けてほしいと修治に頼んだ。修治は若かりし頃のミナミでの修羅の数々を思い出し、うちから燃えあがるものを押さえることができなかった。ミナミにのり込んだ修治は組織から矢島を取り戻したものの、矢島はトシオに殺されてしまう。ひっそりと漁村に帰ってくる修治、そしてミナミに帰っていく螢子。列車の中で、螢子は夜叉・修治の子を身篭もっていることに気がついた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第9回 日本アカデミー賞(1986年)

ノミネート

助演男優賞
助演女優賞 田中裕子
話題賞 作品部門/俳優部門 ビートたけし
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映画レビュー

4.5ナンシー・ウィルソンの歌声に酔いしれる、そして健さんに思いを馳せる

2020年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

亡き高倉健さんと降旗康男監督、そして今なお現役の木村大作キャメラマンの極上の1作。 健さんの格好良さはもちろんだが、いしああゆみの強さ、田中裕子の儚さが対極に位置していて、どちらも美しい。 ナンシー・ウィルソンが歌う「ウィンターグリーン&サマーブル」が絶妙で、トゥーツ・シールマンスのハーモニカもまた染み入る素晴らしさ。日本海の荒波とジャズが合うなんて、今作を見るまで思いもしなかった。 それにしても、幻に終わってしまった、「あなたへ」の後に撮影するはずだった健さんと田中邦衛さんの共演作、見たかったなあ…。

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大塚史貴

4.0昭和50年代の、田舎と都会の落差。ギャップ。

2024年10月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

興奮

レビューはたいてい飲みながら書いて途中で投げ出すことが多いので、要点を先ずは。 2024年テレビで鑑賞。 とても面白かった。 田中裕子が凄い女優だというのも合点がいった(当時わたしは子供でした)。 前半部は目が離せない密度の濃さだった。 画面が無言で訴えかける情報量に圧倒された。背景にも、俳優陣の演技にも。 が、映画の構成としては「お定まり」な場面がちょこちょこあったのが気になった。わかりやすい演出ともいえるから全否定はしないが、雑な感じがしてもったいないなあというのが正直なところ。 主人公のヤクザ時代を振り返るシーンは過剰だし。 子供は子供がいるという記号みたいなもんだし。 濡れ場もいきなりアーバンな。いくら都会と田舎のギャップがこの作品のキモとはいえ。 それでも全体を貫き続ける緊張感が削げないことが凄い。 そして多くのシーンが「絵」になっている。アートになっている。 そして健さんはみんなが見たい健さんだったと思う。嫌味ナシです。 物語は昭和らしく、男性目線。 不倫行為が悪いとは言わないけど、ああ、こういう流れを求める心情は多くの男性にあるのだろうなと… お酒が回ってきたがもうちょっと書くと、「ふたり」「ペア」な人間関係が引き立つ映画だと思った。 修治と冬子。 修治と蛍子。 修治と矢島。 冬子と母。 冬子と蛍子。 蛍子と矢島。 これは個人的な好みだとは思うが、最後に流れる主題歌についてわたしは唐突感が否めなかった。

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Sister-Tamer

4.0大人の娯楽映画

2024年4月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

福井の海と厳しい寒さの中で展開されるドラマが癖になる。 閉鎖的な村で生きる漁師とその妻たち、元極道の男、突然現れる水商売の女とそのヒモのチンピラ。 それぞれ住む世界が違うもの同士がひとつの港町を舞台にトラブルを起こす様子が、不謹慎でありながらも楽しい映画。 特に厳しい自然の風景との相性が良く、とても絵になるのだ。 都会的なジャズのBGMも洒落ている。 男と女、ミナミ、ヤクザ、ジャズを題材にした、大人が楽しむための作品。

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タブロー

3.5

2023年8月3日
iPhoneアプリから投稿

健さんもので、ストイックな男に集約してしまうストーリーには、受け入れ難いところもあれば、最後に一発で宿す展開には苦笑いしたところ。それでも当時の錚々たる役者陣がこれだけ揃って魅せてくれるのは贅沢である。特に女優陣は自我の強い艶のある田中裕子、日陰にありながらも一本筋が入るいしだあゆみ、大阪にあって迫力の増す奈良岡朋子にバイプレーヤーに徹した乙羽信子と見応えがある。刀で斬りつける高倉健に対して、包丁を振り回す危険なたけし。飛び道具はあまり用いない。

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Kj