226

劇場公開日:

解説

昭和11年2月26日に皇道派の青年将校が決起し、元老、重臣らを襲った二・二六事件を描く。原作・脚本は「肉体の門(1988)」の笠原和夫、監督は同作の五社英雄、撮影は同作の森田富士郎がそれぞれ担当。

1989年製作/114分/日本
配給:松竹富士
劇場公開日:1989年6月17日

あらすじ

昭和8年、満州への武力進出が問題となり日本は国際連盟を脱退し、国際的に孤立していった。国内でも経済不況と農村恐慌が重なって国民の不満と怒りは頂点に達していた。その頃、陸軍の若手将校たちが集まって昭和維新の計画を立てていた。それはこのような窮状を打開するために天皇を取り巻く元老や重臣を排除し、陛下の大御心を直接国政に反映させるしかないというものだった。野中大尉、安藤大尉、河野大尉、香田大尉、栗原中尉、中橋中尉、磯部元陸軍一等主計、村中元陸軍大尉の8人は、昭和11年2月26日未明、雪の降る中昭和維新を決行。22名の青年将校に率いられた1500名にも及ぶ決起部隊はそれぞれ連隊の営門を出発した。栗原隊は首相官邸を襲撃し、岡田総理を殺害したが実は身代わりの松尾秘書だった。坂井隊は斉藤内大臣、渡辺教育監督を射殺。中橋隊は高橋蔵相を射殺。安藤隊は鈴木侍従長を襲撃したが、結果的に命はとりとめることとなった。丹生隊は陸相官邸を占拠し、野中隊は警視庁を占拠。河野隊は湯河原で牧野伯爵を襲撃するが、河野は被弾し牧野に逃げられてしまう。河野はそのまま陸軍病院に収容された。陸相官邸では香田と磯部が川島陸相と真崎大将ら高級将校に決起趣旨を述べ今回の行動について陛下の御聖断を要求した。皇居では緊急の軍事参議会議が開かれ、決起を認めるかのような陸軍大臣告示が発表された。しかし、宮中では湯浅宮内大臣、木戸秘書館長、広幡侍従次長らの会合の結果、戒厳令の御裁可が杉山参謀本部次長に下され、決起部隊も戒厳部隊に編入された。翌27日には香椎戒厳令司令官から奉勅命令が発表され、決起部隊に原隊への復帰が勧告された。当初決起部隊へ同調していた真崎らの力も及ばず事態は次第に皇道派青年将校達の不利な方向へ傾いていった。原隊からは食料の供給を絶たれ兵達は疲れを見せ始めていた。安藤隊は赤坂の山王ホテルに立て篭もるが、ラジオやビラを使っての原隊復帰の勧告も始まった。青年将校たちの脳裏にも残してきた妻子の顔が浮かぶようになった。一方、入院中の河野の元へは兄が見舞いに来ていたが、腹を切りたいので果物ナイフを用意してくれ、という弟の言葉に愕然としたのだった。陸相官邸では一早く坂井が隊員たちに原隊復帰を促していた。山王ホテルでは村中らが兵を帰して軍法会義で戦おうと提案するが、安藤はあくまで抵抗した。野中は安藤に兵たちの命と名誉を守ってやろうと説得。初め決起に乗り気でなかった自分を促したのは野中だっただけに、安藤には無念だった。そしてホテルから青年将校一人一人が野中と安藤に敬礼しながら出ていった。安藤も野中に別れを告げ、兵達には自分達のやったことは正しいのだから胸を張って行けと、言葉を残した。安藤は拳銃で自決を図るが未遂に終わった。陸相官邸で野中は安藤から返された決起を謳ったハンカチを燃やし、拳銃で自決。また、河野も熱海の岸壁で自決していた。29日宮中では事変の鎮圧が上奏された。捕らえられた決起部隊の青年将校ら19人は軍法会議にかけられ、7月12日、全員が銃殺刑に処せられた。

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スタッフ・キャスト

監督
監修
河野司
脚本
笠原和夫
原作
笠原和夫
製作
奥山和由
松竹富士
プロデューサー
西岡善信
プロデューサー補
市山尚三
撮影
森田富士郎
美術
西岡善信
音楽
千住明
音楽プロデューサー
相川知治
録音
大谷巖
照明
中岡源権
編集
市田勇
助監督
鈴木秀雄
スチール
小山田幸生
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受賞歴

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映画レビュー

4.0彼らは何故死んだか

2025年6月20日
PCから投稿

この映画は日本で実際に起きたクーデーターニ・ニ六事件を元に作られた映画です。
ニ・ニ六事件を題材にした映画は見られるものは全て見ましたが、その中でも格段にできがいいです。
トップ・オブ・226ムービー。
音楽も役者陣も非常に素晴らしい。当時の緊張感がひしひしと伝わってきます。

ただし、他のニ・ニ六事件の映画にも言えることですが、ニ・ニ六事件についての事前知識がないと彼らが何をしていて、何のために死んだのか分からないので注意です。

この作品以外の二・二六事件の映画としては「二・二六事件 脱出」という映画があります。これは『ニ・ニ六事件で総理大臣の家に深夜集団で押し入り、総理大臣を殺した青年将校たち。しかし、実際には殺したのはその義弟であった。青年将校たちは殺したのは総理大臣とまだ思い込んでいる。そこで官邸側は気付かれないようにこっそり総理を家から脱出させようとする』という話しです。「226」で起きた事件の裏側を描いており、「226」が面白かった人は是非こちらも見て下さい。

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みる

3.5ファシズムの教材として良い出来

2025年6月18日
PCから投稿

知的

難しい

2.26事件という、歴史的な事件を真面目に、真面目に描いた作品。

本当に真面目に作っているのが感じられる作品で、国全体がクソ真面目に傾き過ぎていた時代の堅苦しさ、重苦しさが全体に流れているのが気に入った部分。

1989年の古い映画なので、道具やセットの拙さは覚悟していたが、そこはバブル崩壊前の余裕か、とても拘りが感じられる。素人目線だが、少なくとも、戦後の米軍の兵器や車の代用で誤魔化すような安い映画ではない。九二式重装甲車が登場する作品を初めて見た。

キャストも(今となってはだが)豪華な面々で、死に際が多少オーバーなのが気になるものの、若い頃のベテラン俳優の演技が楽しめるのは良いところ。冗談の一つも言えない当時の軍人の再現度が見どころだ。音楽も作品を邪魔しない程度に抒情的である。

一方、実話ベースでエンタメ性は低く、映画らしいカタルシスや感動は期待できないため、星3.5とした。

元々見ようと思ったきっかけは、ウクライナ戦争の、ロシア側の大義名分について知ったからだった。プーチン氏は「ウクライナのナチス勢力を排除するため」という名分を掲げているらしい。

はて「ナチスって、ファシズムって何だっけ」と思い、日本のファシズムについておさらいすることにし、2.26について正面から扱った作品がないかと思い、古いながら本作品に行き当たった。

「話せばわかる」「問答無用!」という、5.15事件のやり取りが日本のファシズムを象徴するのだが、子供にはどうにも説明しきれない感じになってしまう。なにせ国民も青年将校らに同情的で、主張は子供っぽくピュアな勧善懲悪論。権力欲と金にまみれた独裁者のクーデターとは、あまりに違うのである。

そこで、近現代史に興味を持つ子供にはこの映画を見せて、時代の雰囲気ごと感じてもらうのはどうだろうか。世界のファシズムとはちょっと違うが、日本の独特なファシズムについて考える良い切っ掛けになると思う。

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せきれい

3.5226事件は描くのが難しい

2025年2月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

近代日本の最大のクーデター事件。226事件を反乱首謀者達の目線で描く物語。

226事件を描いた映画はあまり多くありませんね。高倉健と吉永小百合が共演した「動乱」がありますが、あれは恋愛ドラマでしたし・・・
昭和恐慌で疲弊する日本。有効な対処を見いだせないだけでなく、腐敗する政治家と財閥。
「動乱」もそうでしたが、226事件をしっかりと描くと、どうしてもクーデター側に共感する描き方になるのが難しいところですね。

この映画は、ドキュメンタリータッチ。
クーデター直前から、事実を冷静に積み上げていく手法。要所で感情描写もありますが、動機を正当化しない範囲に抑えている印象。
好みが分かれるところだとは思いますが、個人的には比較的好みの描き方かもしれません。

下士官の幼稚さや暴力性。陸軍の派閥争い、犠牲者たちの悲嘆、そして激怒した昭和天皇・・・。そんな描写をしっかりと映し、クーデターの無謀さも描写して欲しいとも思いました。

私的評価は3.5にしました。

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よし

2.5詳しくは自分で調べろと?

2024年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

昭和11年2月26日に起きたクーデター事件を描いた作品。
発生から収束までを描いただけで前後の歴史についてはほぼ説明無しなのでモヤモヤした。
序盤の要人襲撃以降は会話シーンのみで外連味が無く、登場人物が多いため人間ドラマも薄く盛り上がりに欠ける。
冒頭のナレーションで当時の日本の状況説明があるが、クーデターの首謀者たちが決起に至る理由や心情がほとんど描かれていないのでイマイチ感情移入ができなかった。
昭和の著名な俳優が大勢出演していて眼福ではあるが出演時間が短く無駄使い感が強い。

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ジョン・ドゥ