太陽を盗んだ男

ALLTIME BEST

劇場公開日:1979年10月6日

解説・あらすじ

自ら製造した原子爆弾で政府を脅迫する男の孤独な闘いを鋭い風刺とパワフルな演出で描き、現在もカルト的人気を誇る異色のアクション映画。中学校の冴えない理科教師・城戸は、原子力発電所に侵入してプルトニウムを盗み出し、自宅アパートで苦労の末に原子爆弾の製造に成功。警察に脅迫電話を掛けると、以前バスジャック事件に遭遇した際に知り合った山下警部を交渉相手に指名する。明確な目的も思想も持たない城戸は、テレビの野球中継を試合終了まで放送させるよう要求したり、ラジオ番組を通して次の要求を募集したりと、行き当たりばったりの犯行を続けるが……。沢田研二が主演を務め、菅原文太が山下警部を圧倒的存在感で熱演。「青春の殺人者」の長谷川和彦監督の長編第2作で、「ザ・ヤクザ」のレナード・シュレイダーが原案と共同脚本を手がけた。

1979年製作/147分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1979年10月6日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第3回 日本アカデミー賞(1980年)

受賞

助演男優賞 菅原文太

ノミネート

作品賞  
監督賞 長谷川和彦
主演男優賞 沢田研二
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映画レビュー

4.0菅原文太熱演!

2025年7月17日
iPhoneアプリから投稿

ジュリーが主役なのね〜と思ってたら後半は文太熱演。ヘリからぶら下がる文太、何度撃たれても立ち上がる文太、ビルからもろとも飛び降りる文太。文太だけ東映。

思想によるテロが日常の中にあった70年代から、思想のないテロへと向かうのが80年代の幕開け感。
野球中継みせろとか、ローリングストーンズ呼べとか。軽いノリの池上季実子がいいアクセント。

カーアクションやヘリから飛び降りたり、ビルから乗り出したりスタンドもすごい。カーアクションは危ない刑事っぽい。

これはどのくらいの予算と規模で公開されたんだろう。どうしたら企画が通るのか…。

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hyvaayota26

5.0魅力的なプロット、エネルギッシュで完全にエンタテインメント振り切った作風、切ないラストと反核へメッセージ…未だ本作以上の日本映画には出会えていません。

2025年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

早稲田松竹さんの特集上映「クラシックスvol.240/青春は売りものじゃない」(25年7月12日~18日)のレイトショーにて〈マイオールタイムベスト〉長谷川和彦監督『太陽を盗んだ男』が35mmで上映中。悲願の初劇場鑑賞。

『太陽を盗んだ男』(1979年/147分)
半世紀近く生きてきて、これほど魅力的なプロット、ゲリラ撮影も辞さないエネルギッシュで完全にエンタテインメント振り切った作風、さらに切ないラストと反核への強いメッセージなどすべての要素が奇跡的に調和・融合され、未だ本作以上の日本映画には出会えていません。
とにかく「面白い‼」の一言。

平凡で無気力な中学校の理科教師・城戸誠(演:沢田研二氏)が、原子力発電所の社会科見学の帰路の途中、重火器や手榴弾を持った老人(演:伊藤雄之助氏)にバスジャックされ、「天皇陛下に拝謁させろ」と要求され、バスは皇居に向かう。
事件を解決するため陣頭指揮を執る捜査1課の山下警部(演:菅原文太氏)と協力し犯人を狙撃され死亡。
この事件をきっかけに城戸のなかで何かが変化、自宅アパートでの原爆作りにのめり込む…。

原子力発電所からの液体プルトニウムの強奪シーンは警報の代りに床がピカピカ点滅するシーンはハリウッドのSF映画のワンシーンのようで美麗。
静止画やコマ送りを活用したガンアクションも限られた予算のなかで奮闘しています。

狭いアパートの自室で時に真剣に、時に無邪気にまるでDIYや夏休みの宿題の化学実験のように原爆を製造、その詳細な製造過程や化学式を丁寧に描くことで誰でも原爆が製造できる説得力を高めましたね。液体プルトニウムの色(紫)も実にそれっぽくて良いですね。

ガイガーカウンターをマイク代わりにボブ・マーリ―の曲を歌い踊ったり、完成した球体の原爆でサッカーをしたりと沢田研二氏のお茶目なコメディアンぶりが発揮されるのも本作の魅力。
「8時だョ!全員集合」で志村けん氏とコントを披露していたのも伊達じゃないですね。

原爆完成後に、日本政府を相手に要求したのは「TVの野球中継の延長」と、ラジオリスナーの声を聴いて「日本武道館でのローリング・ストーンズコンサート」。
明らかに営利目的での原爆製造ではなく、城戸の犯行動機は一切語られない。
おまけに中学校の理科教師以外の具体的な生い立ちや家族や恋人、友人などの情報もなく、すべて観客の想像に委ねられています。

時代的には学生の反体制運動が失敗したあとのしらけ世代、満たされない空虚な日常への破壊衝動「理由なき反抗」なのでしょうか。
逆に明確な理由がない方が、観客ひとり一人主人公の心情を察しながら、共感ができますね。
製造過程で被爆、死を覚悟しながら原爆を持ちつつ繁華街を彷徨うラストは切なく、これ以上ないエンディングです。

また城戸と山下警部の関係も、ルパンと銭形警部以上、実にセクシャルに描かれています。
自分の命を顧みず犯人逮捕に猪突猛進に燃える山下の生き様が、虚無な城戸の心に火を灯したのでしょうか。
長谷川監督が脚本を手がけた「悪魔のようなあいつ」(1975)でも藤竜也氏と、次作『魔界転生』(1981)でも真田広之氏とのセクシャルなシーンがありますが、当時の沢田研二氏にはそれだけ突出した妖艶で中性的な魅力がありましたね。

音楽は『太陽にほえろ!』、『傷だらけの天使』の井上堯之氏。
繰り返されるピアノの旋律が印象的。
井上堯之氏の楽曲を子守唄代わりに育った世代にはたまりません。

限られた予算やハードなスケジュールなかでも、国会議事堂や高速道路のカーチェイス、東急百貨店の屋上から札束をばら撒くなど必要なシーンは妥協を許さずゲリラで撮影。
そんな撮影現場の熱気が確実にフィルムに収められた本当に奇跡的な映画。

もしも『新幹線大爆破』のように莫大な予算でリメイクされても、なかなか本作のスクリーンからほとばしる熱量は越えることはできないでしょう。
また『理由なき反社会的なアウトロー』という主人公の設定自体も今の時代、企画自体難しいかもしれませんね。

長谷川和彦監督にはまだまだ新作を撮り続けて欲しいものです。

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矢萩久登

3.570年代の狂気と虚無を映し出す、ただならぬエネルギーの映画

2025年6月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

斬新

ドキドキ

家庭で原爆を作ってしまう高校教師。そんな荒唐無稽な設定にもかかわらず、リアルな空気感が漂う。劇中の描写には妙な現実味があり、「もしかしてこれは、本当に起きてもおかしくないのでは」と思わせる説得力がある。
しかし最大の謎は、彼の目的のなさだ。必死に原爆を作っておきながら、その使い道が「ナイター中継の延長」や「ローリング・ストーンズを日本に呼ぶこと」。あまりに馬鹿馬鹿しく、しかしそれがこの時代の“空虚な反抗”を象徴しているようで痛烈だった。

この映画は、70年代の社会のカオスと、それに抗う若者のエネルギーを強烈にパッケージしている。学生運動が終焉を迎え、全共闘が残した余熱が鬱屈とした虚無感へと変質した時代背景。そのなかで若者は怒りや違和感を抱えながらも、明確な敵を見失い、暴走と逃避を繰り返す。

主演・沢田研二の演技はどこか素人っぽいが、むしろその素人性こそが彼の持つ“市井のカリスマ性”を引き立てている。雑に扱われる原爆、カバンの中で揺れる放射性物質、そして逃げる警察とのカーチェイス。すべてが緊張感と滑稽さを共存させ、ただの娯楽作には終わらない。

自分自身はこの時代より少し後の“しらけ世代”に育ったが、この映画が描く混沌や怒りには、不思議と共感してしまう。
今、社会の理不尽さに対して怒りを燃やすことは少なくなったかもしれない。しかし、だからこそこのような作品が、自分のなかの熱を呼び覚ましてくれる。

映画を観終えた後、「このまま、何もしないで生きていていいのか?」と自分に問いかけたくなるような、静かだが強い衝撃を受けた一本。

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jasper

3.0熱狂的な支持の理由もわかる

2025年6月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

2025年に生きている私たちは、とにかくこのときの沢田研二が在りし日の志村けんに似ていることに驚き、たまらない気持ちになる。
アヴァンギャルドで意味などなくて全てがクソ喰らえで何も得られなかったこの映画がとてつもなく支持された過去の日本にとても共感する。
ダサさも含めて愛されていたのだろうな、俺はそちら側だ、と思いました。
菅原文太が殺されて本当に良かった。
ちょい役で出てた西田敏行も最高にどうしょうもなくて良かった。
とにかく沢田研二が格好悪くて良かった。

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あした