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この映画、どうやら実在の人物がモデルらしい。
エンドクレジットで、彼がどれだけの成功を収めたかが短く語られるが、それが見たくて映画を見ているのに、最後までそこにたどり着かないまま映画はエンディングを迎える。
有能とは言えないセールスマンが主人公で、株式のトレーダーを志す。6か月間は無給になるが、医療マシーンを売って何とかしのぐ。
金欠に苦しみ、とうとう子供を抱えたままホームレスになるが、成功を信じて勉強を続ける。
これだけの内容を、2時間以上使って、延々と見せられても、ただつらいとしか言いようがない。
映画的演出も随所にみられる。
例えば、ルービックキューブを使って、主人公の男がとても頭のいい男だと表現する。それも、タクシーで移動する間のわずかな時間に。それがきっかけで、成功への扉が薄く開きかけるが、男はどんどん追い詰められていく。
家賃の滞納で退去を迫られ、1週間で出ていけ、ペンキも塗っとけと言われ、塗装をしているときに、駐車違反を無視して罰金を払わなかったことで、禁固刑になり、面接に遅刻。作業服姿で面接を受け、結果採用になるものの、いろいろなことが回ってないので、見ていてとてもイライラする。ただし、これは、映画的演出だろう。話を盛り上げるために組み上げられたストーリーで、これだけ悪いことがメカニックに重なることは考えられないし、その原因がどうもお金で解決できそうなことばかりなのだ。
お金がないことがそんなに大変か?
無いなら無いなりの生活をすればいいのでは?
彼は常に骨密度を測定する医療マシーンを持ち歩く。これを売って歩くのが仕事だからだ。見た目には、人生におけるただの重荷にしか映らない。切り離すべきお荷物なのだ。それを、ヒッピーに盗まれ、大切な金づるを失うが、ある日、それを持って歩いているヒッピーを見つける。それも、仕事中に。
映画的演出だが、取り戻すのに必死で追いかける。
医療関係者以外に価値のないマシーンを、盗んだからと言って、それをご丁寧に持ち歩く泥棒がいるだろうか?金に換えられなければ、捨ててしまうのが普通だろう。追いかける途中、男は車にはねられ、軽傷で済むが靴を失う。どこにもない。仕方なく、裸足でオフィスに戻り、同僚から白い目で見られる。リアルだが、見ていられなかった。
簡潔にまとまっていれば、メリハリの効いた、人生の教訓として面白くなったとは思うが、とにかく長い。辛い。暗い。
子役は、実の息子のジェイデン・スミス。本当の親子なのだから、親子役で違和感などあろうはずもない。本当に親子のように見える。当たり前だ。
この子が、幸せに眠れる日を迎えることが映画のゴールなのかと思ったが、時間の無駄だった。
難関の試験に合格して、エグゼクティブたちに認められるシーンがゴール。そのあと、やっつけのようにナレーションが入る。「彼はこののち、仕事で大成功。」みたいな。
で、結局、男の子がどうなったかは、何も語られない。ちゃんと学校に行けたのか。なくなったキャプテン・アメリカの人形は買ってもらったのか。母親に再会したのか。まっすぐに育ったか。
この映画が、そこそこ高い評価を受けているのが不思議でしょうがない。