最初に言っておくべきは、世間の評価ほど酷い作品ではない
映画というもののハードルを勝手に設定して勝手に高尚なものにして勝手に期待して視聴したならばそうなるのも仕方ないけども、これはそういった既存の映画とは全くの別物と言って良いのかもしれない。
むしろ、そういう映画に対する先入観そのものをフリに使った二時間尺のコント映像と言った方が適切ではなかろうか。
私は最後の展開で大いに爆笑させて貰ったし、なるほど既存の映画というものを逆手にとってコレがやりたかったのかと納得もした。
長い長い前フリを普通(相当に変わってはいるが)の映画だと思い込んで観ていると勝手にその先のストーリーをある程度、これまでの類型から推測してしまうもの。劣勢ではあるけれど、この後きっと主人公が愛だの絆だの使命感だので奮起して敵を倒してハッピーエンドになるんだろう、と。予想、予感に過ぎないのに映画が進むにつれ次第に観客はその結末を求めてしまう。求めてしまうが故にラストの超弩級の裏切りが受け入れられなくなってしまう。酷評してる人はきっとそんなところでは無いだろうか。
劇場公開の2時間作品イコール起承転結のしっかりした映画であるハズである、という思い込み。また、松本人志作品ではあるけれどこれといって笑いもない長い長い前フリによって「ああ、かなり変わってはいるけれどちゃんと映画を撮ろうとしてるんだな」と思わせるように丁寧に積み上げられたストーリー。これらが史上最も落差の激しい所謂「フリオチ」を生み出している。私はこの挑戦とイタズラ心とに素直に拍手を送りたいと思う。
時代的なものかCGの違和感は確かにある。特に大日本人の表情はもう少し何とかならんかったんかと感じる。またストーリーに納得出来ない部分もある。怪獣に向かうべきヘイトが全て大佐藤に向けられる事であったり、大規模な被害の割に視聴率が低い事であったり、その割には認知度も高くバッシングも苛烈である事であったり。この辺りはもっと洗練させられたはず。
しかしコントで培ったであろう松本人志の演技力は流石の一言。マネージャー役のUAの好演も評価したい。
映画好きには堪らなく嫌な作品ではある。映画に対する冒涜だと感じる人が居てもそれは仕方がないとも思う。ただしお笑い芸人松本人志の作品としてビジュアルバムの延長線にあると思えば、これほど馬鹿馬鹿しく壮大なコント作品を作り上げたその意図に思わずニヤリとせずには居られないのである。